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女性がイルカを産む映像を見て、我々は何を感じるのか?

ARTS & SCIENCE
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ライターmayumine
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まずは、何も考えずに、この動画を見てみてください。きっと、ほとんどの方が強烈な違和感を覚えるのではないでしょうか?

I Wanna Deliver a Dolphin...(私はイルカを産みたい...)』は、MITメディアラボのデザインフィクショングループの研究員を務める長谷川愛さんの作品です(ちなみにデザインフィクショングループは、メディアラボ助教のスプツニ子さんが主宰を務めています)。

白いドレスを着た女性がイルカを水中出産して、生まれたイルカに餌を与えて、一緒に泳ぐ。2分半の動画のストーリーは極めてシンプル、だけど覚える強烈な違和感と抵抗感。しかし、「なぜ我々は違和感を覚えるのか?」その問い自体がこの作品のテーマなのです。長谷川さんのサイトでは、この作品の制作意図について次のように説明しています。

人間は遺伝子を次世代に渡す方法として子どもたちを育てるように遺伝的に仕向けられていますが、人口過剰と緊張した地球環境のために最適な状況で子どもを育てることが、より難しくなっています。

このプロジェクトは、潜在的な食物の不足とほぼ70億人の人口の中、これ以上人間を増やすのではなく、絶滅の危機にある種(たとえばサメ、マグロ、イルカ等)を代理出産することを提案しています。

子どもを産みたいという欲求と美味しいものが食べたいという欲求を満たすために、食べ物として動物を出産してみてはどうか? という議論を提示し、そしていかに可能にするかという方法も示します。

私たちは人間の母親が胎内で育てた動物を普通に食べ物として消費することができるでしょうか? 母親の愛情がしみ込んだからという理由で食物の価値観は変わるのでしょうか?

そして、この作品のストーリーチャートがこちら(もちろん、世の中こんなに単純じゃないですけれどね!)。

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例:
赤ちゃんが欲しいと思いますか?(YES)

我々にはもっと人間が必要ですか?(YES)

あなたは他の人間の人生に責任を持てますか? あなたと、あなたのDNAと、あなたの富は、あなたの赤ちゃんの人生と未来の困難と深く結びついている。(NO)

もしあなたが見知らぬ人の子どもを育てるとしたら、その子に無償の愛を注げますか?(NO)

動物の子どもならどうでしょうか?(YES)

食べるのが好きですか? サステナビリティに興味がありますか?(YES)

じゃあ、人が食する絶滅危惧種を産みましょう!

いきなりこんなことを問われても、普通の人は戸惑いしか感じないでしょう。でもこれこそ、彼女らの研究テーマである、スペキュラティブデザイン(「問題解決のためのデザイン」ではなく「今の世界に違った視点を提示する問題を提起するデザイン」)です。

そしてこの作品は妄想だけでできているわけではなく、人間がイルカを産むことに対する実現可能性まで検証されています。「希少種かつ最小のマウイイルカを、理想的な赤ちゃんとして」選び、「サイズ的に人間の胎内で飼育するのは可能」であるとし、「人間の卵子ではなく、イルカの遺伝子を組み替えることは法的、倫理的な問題に抵触しにくい」らしく、免疫問題的にも「代理出産という完璧な他者さえも体内に保育することが可能」なのだそうです。

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人間でない絶滅危惧種の保全を人口過多という問題への取り組みに統合し、自分が産んだ同じ種の子孫を食べるという提案をしています。そして作品を鑑賞した我々は、違和感を覚えながらも、こんなことが現実に起こって良いのか良くないのかを考えるきっかけを得ることになりますよね。

身体の拡張と、より人らしくなる人工知能が存在する未来を語るとき、従来のタブーや倫理観(とされるもの)が心理的な障壁になります。テクノロジーの進化は非常に速く、今までの倫理観や価値観では当てはめられない事象が次々に起こります。長谷川さんのこの作品は「作品に設定された問題提起」を考え議論することで、新しい時代に備える思考のトレーニングにもなるのだと思います。

source: Ai Hasegawa