MAIL MAGAZINE

下記からメールアドレスを登録すると、FUZEが配信する最新情報が載ったメールマガジンを受け取ることができます。


VRに拡張されたARはどんな未来を連れてくる? Snapchatを使った実験

DIGITAL CULTURE
/uploads/yuandoshikaku.jpg
ライターabcxyz
  • はてなブックマーク

現実を拡張することで見えてくる世界に、さらに没入感を付加したら、どんな世界が開けるだろうか? VRジャーナリストでコンテンツクリエイターのマシュー・テアンドロプは、SnapchatのARフィルターを360°動画に適用して、ARとVRが融合した未来の世界を垣間見せてくれた。

テアンドロプは、Android版Snapchatを使用して360°動画を撮影。その後Autopanoというアプリケーションでスティッチング(複数の画像をつなぐ作業)を行い、SnapchatのARオーバーレイを適用することでこの動画を作成した。その技術的な詳細はVR Scoutに譲るとして、まずは実物を見てみよう。

動画はカメラを挟んだ二人の人物がいる光景だ。彼ら二人の顔が認識され、犬顔のSnapchatフィルターが適応されている様子を360°で眺めることができる。

テアンドロプによれば、Snapchatを用いた360°のAVR(Augmented Virtual Reality)動画にはまだまだ課題も多い。ただ何も考えずにSnapchat動画を撮影するのとはわけが違うのだ。彼の実験では、撮影した動画をコンピューターに入れてスティッチング作業やコントロールポイントをリンクする作業を行っているし、カメラとARフィルターの対象となる被写体の距離が近くなくてはARフィルターが適用されない。

テアンドロプは、VRコンテンツクリエイターの視点でこのような動画を作る際の注意点を記している。彼によれば、ボタンを押しっぱなしにしないと録画できないSnapchatよりも、一度録画ボタンを押せば指を離してもよい「LINE Camera」の方が、リアルタイムでARオーバーレイを使用するのに向いているとのこと。録画ボタンを押し続けると360°の画面がグラグラ揺れてしまうため、視聴者目線で考えると好ましくないからだ。

現在のSnapchatで360°AVRを作るのは初心者には難しい。一般ユーザーが通常のSnapchat投稿のような手軽さでこれに挑戦するには、もっと時間がかかるだろう。最近でこそ360°動画が撮影できる機器が一般販売されているが、スマートフォン単体で360°動画の撮影が可能なものや、それを可能にする魚眼レンズは、まだまだ一般に普及していないからだ。

160913snapchatavr2.jpg

主に視聴時間制限がついている動画や、人の顔を認識して装飾をつけるARフィルターで知られるSnapchatだが、現実世界を拡張することで何でもない光景に広告を入れ込むことへの関心も高い。今年はジオフィルター機能の採用や、画像認識をしてAR広告を表示する機能の特許申請などが報じられた。

今回はテアンドロプがSnapchatを使ったAVR実験を行っていたというだけの話で、SnapchatによるAVR機能追加の可能性を直接示唆するわけではない。しかし、VR Scoutが報じるように、最近Snapchatは360°パノラマ広告を導入している。

(Sony Pictures Entertainmentによる映画『Don't Breathe』のSnapchat向けパノラマ動画広告。スマホを傾けることで自由に景色を眺められるだけでなく、動画内で前進できる)

以前と比較すると、最近はスマートフォンを使用した360°動画の鑑賞が普及している。前述のAR広告フィルターのアイデアとともに考えれば、没入感のある360°VR動画にARを組み合わせた広告が登場する可能性もあるだろう。YouTube動画の下部に広告バナーが表示されるのと同じように、ユーザーの作ったVR動画の中にある要素がARフィルターにより製品ロゴに置き換えられる...といった映画『ゼイリブ』の悪いパロディーのような世界を、没入感あふれるVRコンテンツで見るような未来が訪れるかもしれない。

しかしこのSnapchatでのAVR実験から見えてくる可能性は、広告への活用だけではない。複雑なCGの合成技術や高価なソフトウェアを持たずとも、撮影する動画に生で簡単に特殊効果を適用させることができるARフィルターや、自撮りするユーザーの顔だけを写した四角いフレームを打ち破り、ぐるりと周囲の光景を自在に見ることのできる360°VRが融合する時代だ。

そのような時代が来れば、ユーザーが発信するコンテンツのすそ野と同様に、AVRコンテンツのすそ野も広がるだろう。コンテンツ制作作業がスマホの小さな画面内で完結し、誰もが既存のVRデバイスで目の前に広がる別世界を楽しめる日が来るのは、そう遠くないのかもしれない。