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ライアン・ゴズリング『ファースト・マン』インタビュー、『ラ・ラ・ランド』『ブレードランナー 2049』に続く新境地とは?

コントリビューターThumper Jones
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アカデミー賞で6部門に輝いたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(2016)のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが、新たな作品を引っさげて帰ってきた。ふたりが再びタッグを組んで完成したのは、2月8日(金)に全国公開される映画『ファースト・マン』。1969年に成し遂げられた、人類初の月面着陸を描いた壮大な作品だ。

映画は、最初に月面を歩いた男として歴史に残るアポロ11号の船長、ニール・アームストロングの視点から描かれた。監督は35ミリと16ミリカメラで60年代の空気感を再現しつつ、宇宙のシーンはIMAXの65ミリカメラで撮影し、観客も一緒に月に降り立ったかのような臨場感を見事に生み出している。

ここでは、日本公開を前に来日した主演のライアン・ゴズリングにインタビューを行い、作品の舞台裏について聞いた。また、ニールの妻、ジャネット役を演じた女優クレア・フォイのコメントも併せて紹介する。

兄弟メディア「ギズモード・ジャパン」のデイミアン・チャゼル監督インタビュー記事はこちら

多くの人は、月面着陸のミッションの大変さを知らなかったはずだ

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©Universal Pictures

——1969年に成し遂げられた人類初の月面着陸をリアルタイムで目撃した世代ではないので、MTVのステーションIDで見る“ムーンマン”というイメージしかなくて、ニール・アームストロングがどのような人間なのかを考えたことはありませんでした。当時から今年で50年になりますが、このタイミングでこの題材を映画化する意味は何だと思われますか?

ライアン・ゴズリング(以下、ライアン):僕も君と同じように当時は生まれていなかったし、ムーンマンといえばMTVというイメージだった。僕が思うに、これはいつのタイミングでも作ることができた映画だと思う。私利私欲を忘れて、大義のために人生を捧げた人々の物語は、いつの時代でも通用するはずだ。

でも、本作が興味深いのは、何かを達成したいという集団的利益があれば、人間は不可能に思えることも達成できるという事実の一例なんだ。それに彼らはある意味、いとも簡単そうに(月面着陸を)成し遂げてしまったから、僕を含む多くの人は、あのミッションがどれほど大変だったのか気づいていなかったと思う。実際にはどれだけ大変で、達成するためにどれほどの個人的な犠牲が払われ、どれだけの命が失われたのかは知らなかったはずだ。そういったすべての側面が、現代の観客の目に興味深く映ることを願っているよ。

——歴史的人物でありながら、素顔はあまり知られていないニール・アームストロングを演じるうえで、どのような役作りをしましたか?

ライアン:本作のための役作りはユニークだったんだ。こんなにも協力が得られたのは初めてだった。ありがたいことに、ニールの息子さんたちが参加してくれたほか、生前のジャネット・アームストロング(ニールが月に行った当時の妻、2018年6月に死去)にもお会いすることができた。ニールが生まれた農場にも行くことができて、妹のジューンや幼なじみ、同僚などにもお会いできた。もちろん、役作りには他の側面もあったけど、彼のことを知っていた人や愛していた人からの視点を得られたことが、根本的な部分では最も役に立った。

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©Universal Pictures

——劇中では、幼い娘を亡くしたニールと妻のジャネットの苦悩や、難しいミッションを任命されたニールを献身的に支えるジャネットの心情が丁寧に描かれています。ご自身もふたりの娘さんをお持ちですが、家庭でのニールについてはどう思いますか?

ライアン:この物語において、ジャネットが素晴らしい母親で、類いまれな人物だったことは間違いないと思う。僕が、本作から得られて最も良かったことのひとつは、幸運にも生前のジャネットに会うことができたこと。そして、息子さんたちの反応を見られたことだ。

彼らは確かトロント(国際映画祭)で、「本作は母に対するこれ以上にないほどの賛辞だ」と話してくれた。このような物語では、女性や女性による貢献には焦点が当てられないことが多いわけで、だからこそ、彼らがそう言ってくれてうれしかった。ジャネットにも観てほしかったけど、息子さんたちが「いろいろな意味で母が称えられた」と言ってくれて幸せだった。

——そうだったんですね。

ライアン:僕にとって、これは悲しみの物語であり、すべての悲しみを通してお互いを見出そうとする夫婦の物語だ。それが誰であろうが、あのような喪失を経験した後で、どうやって立ち直ることができるのか想像もつかないよ。それに加えて、月に上陸するという不可能なゴールを課せられた家族がいたわけで。彼らは途方もないプレッシャーの下にあったんだ。僕らはそれを誠実に映し出そうとしたつもりだが、偽りのない描写ができていることを願っている。

映画では描かれなかった、大好きなエピソードがある

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©Universal Pictures

——本作には、これまでに知らなかったニールの人となりが描かれています。とても落ち着いていて、決して多くは語らないけれど、月面着陸した時の名言(「これはひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」)を含め、意義深い言葉を残された人ですよね。

ライアン:あのコメントにはニールの特別な資質が表れていて、非常に興味深いと思う。マイクロとマクロの両方を見ることができる人で、だからこそ、小さな一歩の中に偉大な飛躍を見出せたんだ。彼は自分自身のことを、国の代表と人類の代表というふたつの側面から考えることができた。

「月には何を持参したいですか?」と聞かれて、「より多くの燃料」と答えたそうだよ。実用的なようでいて、独特な深みのある答えを返す人だったんだ。何事も自分自身の話にはせず、個人的な経験よりも、ミッションなど、より重要だと思うことに重点を置いて話す傾向があったようだけど、僕は彼の話し方が大好きなんだ。そう言った意味では、非常に無私無欲の人だった。

また、愛国心が強くて、朝鮮戦争で戦い、多くの友人を亡くした。さらには、数々のミッションでも多くの友人を亡くしている。死をとても身近に感じて人生を送ったんだ。

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©Universal Pictures

——歴史に残るあの名言が、ニールが誠実に心から発した言葉だったこともうかがえました。

ライアン:どうやら彼は、(月面着陸の瞬間に)何を言うか考えていなかったらしいんだ。着陸までに考えるべきことがたくさんあったので、実際に着陸してから決めようと思っていたそうで。あのコメントは多くを物語っているよ。ある意味、ニールについてまったく触れていないようでいて、彼についてとてもよくわかるコメントなんだ。

——ジャネットや息子さんたちから聞いた話で、特に印象に残っていることはありますか?

ライアン:映画では描かれなかったのだけれど、大好きなエピソードがあるんだ。ニールは子どものころ、紙飛行機の滞空時間が短すぎると不満を感じていた。そこで地下室に風洞を作り、紙飛行機が永遠に飛び続けるようにしたそうだ(笑)。多くの子どもたちは、紙飛行機がいつかは地面に落ちるということを受け入れるだろうけど、彼は受け入れなかったんだ。彼の母親いわく、風洞のせいで家が崩れそうになったのだとか。ニールには確固たる決意があったんだよ。

もうひとつのエピソードは月面着陸の成功後、彼らが世界ツアーをまわっていた時の話だ。ツアー中にイタリアの博物館を訪れた際、ツアーガイドが来なかったので、ニールが代わりにツアーを行ったらしい(笑)。彼はありとあらゆることに詳しくて、息子さんたちは彼のことを“人間グーグル”と表現していた。彼らは父親がとても面白かったことや、一緒に遊んでもらった思い出を何度も振り返り、そういった側面を必ず描いてほしいと言っていた。仕事に没頭していたからといって、それが(ニールの)すべてではなかったんだ。

もし月に3つの物を持っていくとしたら? 答えは……

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©Universal Pictures

——劇中に登場する、ぐるぐると回るトレーニング用のマシンには実際に乗ったのですか?

ライアン:乗ったよ。多軸訓練装置というんだ。

——あれはヤバそうでしたね。

ライアン:そうだね(笑)。でも楽しかったよ。ああいう装置を使ったシーンは本当にすごかった。

——本当に気持ち悪くなりそうですが。

ライアン:ていうか、撮影中に不満を言おうかなと考え出すと、モニターの横には必ず実際に月に行った人がいて、「いいかライアン、私が月に行ったときは……」と語られてしまうんだ(笑)。そうすると文句など言えなくなってしまう。でも、すべてを大局的に見られるようになるんだ。

——もし機会が与えられたら、月に行きたいと思いますか?

ライアン:ノー! 本作の制作を通して、自分はひどい宇宙飛行士になるだろうと気づいた。それに、僕はここ地球が大好きなんだ。月に行くふりをするのは楽しかったけど、デイミアン(・チャゼル監督)から「カット」の声がかかった時はとてもうれしかった。

——もし将来的に、もっと簡単に月に行けるようになったら?

ライアン:行かないと思う。僕はミッションの邪魔になると思うよ。押してはいけないボタンを押してしまったり、何かを壊してしまったりしそうだ。僕が行かない方が安全だよ。

——月に3つの物を持って行くとしたら、何を持って行きますか?

ライアン:行かないといけないとしたら? 行きたくないよ。何で行かないといけないの? 君が代わりに行ってきてよ(笑)。


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©Universal Pictures

<クレア・フォイのコメント>

——ニール役のライアン・ゴズリングについて。

クレア:ニールは他人に愛想をふりまく人ではなかった。気まずい沈黙が流れても気にしないの。でも、彼を演じるライアンは優しくて思いやりがある人よ。ニールは任務だけに集中していたから、不可能と言われる偉業を達成できたんだろうけど……。ニールに対して怒るシーンは難しかったわ。ライアンがいい人すぎるからよ。

——本作の魅力について。

クレア:これは驚くべき偉業を達成した人物の物語よ。その真の理解者はバズ・オルドリン(アポロ11号のパイロットで、2番目に月に降り立った男)という人だった。これは月面着陸の偉大さを伝えるためだけの物語じゃない、宇宙開発についてよりも、ニールという人間を描いた作品なの。“人類の偉大な一歩”を踏み出すために、自分の命を懸けて努力した人たちの物語なのよ。

映画『ファースト・マン』

2019年2月8日(金)から東宝東和配給で全国ロードショー。

https://firstman.jp/

Source: YouTube、Photo: Kazuhiko Okuno