去る2016年6月、音楽やアート、テクノロジーの交差する大規模なフェスティバル「Sonar 2016」と「Sonar D」がバルセロナで開催された。そこでは、小さなチップが、多くの人でにぎわうフェスを快適にするために活躍していた。
Glownetのキャッシュレス決済技術
Glownetはイギリスはロンドンに拠点を置くテック企業。主にライブイベントやフェス向けのテクノロジーやプロダクトの開発を行なっている。
Sonar 2016の場で活躍したのはGlownetが開発した決済機能つきリストバンド。チップのついた入場パスのリストバンドに、あらかじめお金をチャージすることで、会場内でのお金のやりとりはすべてキャッシュレスにできる。食事も飲み物も、グッズもクロークも、すべて!


GlownetはRFIDの技術を使ってこのプロダクトを開発した。RFIDとは、いわゆる「電波によるID認証技術」を意味しており、Suicaなどの乗車カードや電子マネーにも活用されている。RFIDには小さなIDタグのチップが組み込まれていて、非接触で情報をやりとりすることで、フェスでのキャッシュレス決済を実現している。
キャッシュレスなら、フェスが2倍は楽しくなる

フェスに行列はつきものだが、Sonarでは専用の端末でタグを読み込むだけで入場できるため、入り口での行列はほとんど発生しなかった。
日本でもシーズンごとに、さまざまなフェスが開催されている。特に夏はフジロックやサマーソニックといった二大フェスに加えて、タイコクラブやメタモルフォーゼ(...あ、メタモは最近開催されていませんが...)など多数のイベントが目白押しだ。しかし、大抵のフェスのフードコートは常に大行列で、飲み物1杯買うのにもひと苦労だ。

日本でもGlownetのキャッシュレス決済が一般化したら、フェスが劇的に快適になるはずだ。それこそ、倍は楽しめるくらいに。まず、入場や買い物の待ち時間が大幅に減る。さらに、Glownetはリストバンド自体にチケットパスと電子マネーが共在しているため、フェスの会場を手ぶらで過ごすことも可能だ。盗難防止のためにも有効だろう。
イベンター側にも大きな利益が!

来場者がGlownetのキャッシュレス決済によって、より便利にフェスを楽しめるようになると同時に、実はイベントの主催者にとっても多くのメリットがある。まず入場で時間がかからずフードコートの行列も減ることで、運営が楽になる。人件費も削減できるだろう。

さらに重要なポイントは、来場者の消費行動のデータを取得できることだ。Glownet、すなわちRFIDのタグによって取得されたデータを解析することで、消費者の動向や店舗の売り上げなどを分析できる。フェス全体を俯瞰して、どのお店の商品が一番売れたかも一目瞭然。さらに時間帯によって何が消費されているか、どの場所が、どんなものが...と、あらゆることがデータベースとして可視化されるため、フェス運営の改善にも役立つだろう。
Glownetはすでに全世界100カ所以上のイベントで実用化されている。これはぜひとも日本のフェスでも導入してほしいところだ。将来のフェスカルチャーでは、行列のない光景が当たり前になっているかもしれない。
目的と価値消失
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