MAIL MAGAZINE

下記からメールアドレスを登録すると、FUZEが配信する最新情報が載ったメールマガジンを受け取ることができます。


2020年東京でクローンの競技馬が五輪デビューか?

ARTS & SCIENCE
ライター塚本 紺
  • はてなブックマーク

ペットや競技馬といった動物のクローンを提供している企業ViaGenは年間に60から100頭のクローン馬を生み出している。ViaGenがクローン馬を提供するようになってから10年ほどが経ち、一部の個体は競技馬としてのピークを迎えつつある。

クローンの馬が乗馬競技に参加するなんて

この話を聞いて驚いた人も多いかもしれない、しかし国際馬術連盟がクローン馬の競技参加を認めてから、もう4年が経った。ロンドン、リオでのオリンピック参加はならなかったが、2020年の東京オリンピックがクローン馬の五輪デビューとなる可能性が出てきた。

種馬のためのクローンから、競技馬のためのクローンへ

もともと競技馬のクローンは競技に参加させるためではなく、種馬として利用することが目的であった。気性難の馬を人間がコントロールしやすくするために去勢することがあるが、去勢馬はどれほど優秀な成績を残しても子孫を残すことができず、競技馬として優れた遺伝子を次の世代に残すことができないからだ。

クローン馬の競技参加を認めた国際馬術連盟の判断も、それによって「優秀な去勢馬の遺伝子を残すことが狙い」になっている。

Inverseの記事で紹介されているのはアテネ五輪で銀メダル(チーム競技)も獲得したイギリスの名馬タマリーロのクローン、トマティーロだ。体格、毛の色、白い左後ろ脚と写真だと区別がつかないほど、姿形が同じである。それだけではない、馬主によると性格、細かい動き、ジャンプのスタイルまでタマリーロと同じだという。

世界中でメダルを獲得した名馬のクローンが、優秀な成績を残すのは想像に難くない。事実、トマティーロといったクローン馬が活躍の場を広げるにつれて、多くの馬主たちは種馬としてではなく、競技のための馬を求めてクローン・サービスに注目するようになっているようだ。

競技馬のクローンは本末転倒?

しかしながら、クローン技術の専門家であるテキサスA&M大学のKatrin Hinrichs教授はCNNの取材に対して次のように答えている。

私は科学者だし、私自身も馬主だが、人々が競技のためにクローンの馬を作りたがるとは思わなかった。それはまったくもってずれた使い方だ。

馬が競技をするのは彼らが優秀であることを示すため。(そうやって見つけた)優秀な馬を繁殖させることで種をより良くしていくことができる。どの馬が繁殖させるべき優秀な馬か分かれば、次の世代がさらに良くなる。

クローンを使って競技させることの、どこに意義があるっていうのか? オリジナルの動物がすごく優秀だったら、クローンが優秀なのは当然でしょう。でもそれは、種をより良くすることにはつながらない

Hnrichs教授によると馬のクローン技術は現在、成功確率が3分の1程度だそうだ。優秀な競技馬はすべて過去のチャンピオンたちのクローン...という未来はまだ先のようだが、確実にクローン馬は活躍の場を増やしているようだ。