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オープンイノベーション時代が生み出したパズルゲーム『Kyub』はキュートで厄介だ

NEW INDUSTRY
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エディター高橋ミレイ
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今、世界でオープンイノベーションを起点とした新しいビジネスモデルに注目が集まっている。中でも、個人やベンチャー企業と大企業がパートナーシップを結び、お互いのリソースを有効活用する取り組みが加速している。シリコンバレーを中心としたテクノロジー産業や、ハリウッドを取り巻く米国のエンターテインメント産業の事例は伝えられているが、近年はゲーム産業でも普及し始めている。その着火点となったのがインディーズゲームだ。

大企業のインディーズ開発者支援活動

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ここ数年のインディーズゲームの盛り上がりに伴い、大手ゲーム企業やハードウェアメーカーはゲーム開発者支援に参入している。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「PlayStation×Indies」は、直接開発の支援をしていないものの、PlayStationに対応したインディーズゲームの紹介や実況動画を配信している(※)。任天堂は「Nintendo Developer Portal」を開設し、今年の7月7日のリニューアル以降は、個人開発者にも門戸を開いている。
※SIE(当時はソニー・インタラクティブエンタテインメント)は2012年11月20日にPlayStation MobileのSDK配布もふくめた開発サポートプログラムをローンチ。だが2015年7月にはPlayStation Mobile自体がサービス終了している。

2013年にマイクロソフトが開始したゲームクリエイター支援プログラム「ID@Xbox」は、ゲーム開発実績のある法人を対象にしている。ディベロッパー登録をした後に企画の審査を通過すると開発キットが無償で提供され、完成したゲームのパブリッシングまでの支援も無料で受けることができる(プラットフォームは、XboxとWindows)。これまでリリースされたゲームは全世界で250タイトル、収益は日本円にして数百億円とのことだ。

このような大手メーカーによる開発者の争奪戦ともいえる状況は、インディーズゲームが盛り上がり始めた2013年頃から予想されていた。要因は複数あるが、UnityやUnreal Engineといった個人でも使えるゲーム開発エンジンが普及したことや、クラウドを介して遠隔でも開発チームを結成できるようになったことで、インディーズゲームの品質が飛躍的に向上したことが大きいだろう。

まだ市場が確立されていないVRゲームやコンテンツがゲームデザインの多様性を広げていることもインディーズシーンの活性化に一役買っている。さまざまなテクノロジーの進歩が、草の根からの(デジタル)ゲーム文化の盛り上がりに火をつけたのだ。

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愛らしくも難しい、ID@Xbox発の国内ゲーム『Kyub』

ID@Xboxに参加したディベロッパーNinjaEggによって開発されたゲームに『Kyub』がある。同タイトルは、今年7月13日に日本をふくむ37カ国でローンチした。筆者が初めてプレイしたのは7月9〜10日に京都で開催されたインディーズゲームの祭典「Bitsummit」に出展されたブースでだった。デザインの可愛らしさとは裏腹に、ゲームの難易度は高め。ステージの各所に仕掛けられたトラップを避ける方法を考えながら、キューブを操作して先に進んでいく。

カラフルで親しみやすいビジュアルデザインと和風のBGMは心地よく、たとえ途中で失敗したとしても何度でもプレイしてみたくなる。やがて試行錯誤の末にパズルを解いて先に進むことができたときの爽快感は、派手なアクションゲームとは、ひと味違った爽快感をもたらす。さらに80段階のレベルと1,000以上のステージの組み合わせとくれば、やり込み要素としても十分すぎるほどだ。

『Kyub』のクオリティの高さは、それまでのインディーズゲームに垣間見れた手作り感を凌駕する。インディーズならではの独自性やチャレンジ精神、さらに日本から海外市場へ打って出ようという野心があるのは明らかだ。それは、鳥居や灯籠、建物(さらに関取まで!)といったデフォルメされた和風のデザインやBGMからも感じ取れる。

「日本人開発者がID@Xboxを選ぶ最大のメリットは何でしょうか?」という筆者の質問に対し、マイクロソフトの担当者は次のように答えた。「多くの日本人インディーズ開発者にとって未開拓の海外市場へ進出するお手伝いができることです。特に英語圏の市場は大きく、チャンスもたくさんあります。どの企業の支援サービスを選ぶかは開発者次第ですが、私たちは開発者にとって最も満足のいく結果になることをサポートできればと思います」

残念ながら、まだID@Xbox日本人の参加率は低く、すでにリリースされた250タイトルの中でも日本発のものは10タイトルに満たないという。レーティング審査もふくめたサーティフィケーションといった、リリース前の煩雑な作業もサポートするので、今後はさらに多くの日本人開発者に参加してほしいとのことだ。