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クラウドファンディングで起こっている闇の戦い。資金調達前のアイデアを製品化、販売する中国の製造会社たち

DIGITAL CULTURE
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ライターabcxyz
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あなたには何か素敵な製品のアイデアがある。製品化するために資金を集めようとクラウドファンディングサイトにプロジェクトを作った。

順調に資金が集まってきていると思いきや、ある日ひとりの出資者が「これと同じ商品がウェブショップにあるんだけど...」とメッセージを送ってきた。そのサイトを見てみると、これから量産しようとしているあなたのアイデアが、そっくりそのまま製品化したものがすでに売られているではないか。そして製品価格は自分が考えていた価格よりもずっと低い。クラウドファンディングのページには「もうすでにこんなに安価に販売されているものを高値で私たちに売りつけようとするのか!」という怒りの声。せめてもの救いは、このウェブショップがあなたが有り金をはたいて制作したプロモーション動画を流用しており、これであなたが発案者だということがわかることくらい...。

そんなクラウドファンディングの悪夢は、残念ながら現実に起きているかもしれない。QUARTZはイスラエルのYekutiel Shermanが考案し、Kickstarterで資金を集めたセルフィースティック内蔵iPhoneケース「STIKBOX」の悲劇を例に挙げている。

まったく同じデザイン、そして中には同じ画像、同じ名称まで

Shermanが自ら考えだし、プロトタイプを作り、プロモ動画も作ったSTIKBOXが、まったく同じデザイン、そして中には同じ画像、同じ名称まで使われ、中国アリババグループの中国国外向けショッピングサイトAliExpressで販売されていたのだ。さらに悪いことに、安いものでは11ドル(約1,100円)と、STIKBOXの予想小売価格39ポンド(約5,000円)を大きく下回る。

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AliExpressで販売される「STIKBOX」の類似品 screenshot: AliExpress

STIKBOXは2015年12月にKickstarterに登場し、当初の予定では2016年5月には製品を出資者に届ける予定だったが、プロジェクトのコメント欄を見る限りはいまだに製品が届いていないというコメントも見られる。

つまり消費者は、AliExpressから購入すれば、早く、安く目当ての製品を手に入れられるできるわけだ。これらのコピー品のために「何十万」ドルも収入を失ったと主張するShermanは、今も中国のコピー品製造会社を見つけだし、それをやめさせることに生活の20%の時間を費やしているとQUARTZに語っている。それでもまだAliExpressに類似品が複数存在することからは、すべてを取り締まるのは非常に難しいことがうかがえる。

公平性のために記しておけば、前述のコメント欄を読む限り、出資者とのコミュニケーションを欠いていること、約束された製品がまだ届いていないことなどから、STIKBOXプロジェクトへの信頼を失っている出資者も少なくないようで、返金を要求している人や、詐欺だとしてKickstarter運営側に通達したという出資者も見られる。

アイデアの発案者が製品化に向けて右往左往しているうちに、目にもとまらぬ速さで同じアイデアを製品化してしまうのは中国だ

多くのクラウドファンディングプロジェクトでは、アイデアと試作品ができた段階で資金をクラウドファンディングサイト上で募りはじめ、資金が集まってから製造会社を探す。そのため、クラウドファンディングサイトにアイデアが掲載されてから、実際に製品が完成し出資者の元に届くまでに半年から1年ほどかかるものは少なくない。

また、製品の完成がプロジェクトページに記載されている製品配達予定日を大幅に超え、数カ月や半年以上予定から遅れるのもしょっちゅうあることだ。材料の調達、製造会社の選定、大量生産に向けたプロトタイプの作成、微調整...。特に、これまで自ら製品を作ったことのない者が実行するプロジェクトの場合、それらの各工程で予期せぬ遅延が生じる可能性が待ち受けている。

アイデアの発案者が製品化に向けて右往左往しているうちに、目にもとまらぬ速さで同じアイデアを製品化してしまうのは、中国だ

これは電子部品やガジェットのハブとしての中国深セン市の発展、そしてそこから生まれた「山寨(さんさい)」文化に関係があるという。

小さな企業が協力し合い、オンライン掲示板で電子機器の仕様などを共有し、2000年代後半には「山寨」とも呼ばれる数々の「パチモン」ができていった

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電子機器を扱う中国深セン市のショッピングモール、華強電子世界(HQ Mart) photo: outcast85 / Shutterstock.com

ミシガン大学で中国の起業文化(entrepreneurship culture)を研究するSilvia Lindtnerの話としてQUARTZが伝えるところによれば、90年代から2000年代初頭にかけて、国際企業のアウトソーシングブームが起きた。

大企業は製品をアウトソーシングする際に、製品が作られる工程を監視するのではなく、深セン市の製造会社と契約を結び、製品の部品を製造してもらうようにした。こうして契約を結んだ製造会社は、その一部をより小さな下請け会社に頼んだ。これらの下請け会社の多くは小さい家族経営の会社で、政府の承認も受けずにやっているようなところだったという。

彼らの作る部品は最終的には国際的な有名企業の製品に使われる。それら大企業に太刀打ちできるとは言わないまでも、高価なブランド製品には手が届かない人々に使われる製品を彼ら自身の手で作ることはできるのではないか?こうして小さな企業が協力し合い、オンライン掲示板で電子機器の仕様などを共有し、2000年代後半には「山寨」とも呼ばれる数々の「パチモン」ができていった。

「クラウドファンディングサイトにいいアイデアが共有されてる?じゃあさっそくそれを作らないと...」

その後ブランド電気製品が安価になるに従い、山寨製品の人気も下火になっていったが、山寨文化の遺産は今も息づく。それが、先にも取り上げたクラウドファンディングプロジェクトを勝手に製品化してしまうことにも見られる、知識の共有である。

製造会社達は知的財産権などお構いなしに知識を共有し合う。アイデア出したものが儲けるのではなく、それをいち早く製品化したものが儲けるのだ。「クラウドファンディングサイトにいいアイデアが共有されてる?じゃあさっそくそれを作らないと...」

アイデアを生み出した側にとっては、勝手にアイデアを使われて、先に製品化され、それにより本来得られたであろう利益が減ってしまうことにいい気はしないだろう。しかし、常にこれが悪い方向に行くとは限らない。「Shooz」というプロジェクトがそのいい例になるかもしれない。

2015年11月にKickstarterにプロジェクトが立ち上げられたShoozは、シューズの上部とソール部分がジッパーにより分割できるという製品。元々は2016年3月に製品を発送予定としていた。

無事に資金を集め、さて製造に取り掛かろう、という時にShoozプロジェクトは困難に直面した。当初考えていたイタリアの製造会社は技術が低く、次に製造を任せた韓国の製造会社にも降りられることに。2016年3月になってもまだシューズの製造がままならないでいたShoozは、中国の会社がコンセプトもプロモ動画もコピーして(ただし、動画のShooz製作者が登場するシーンは代わりに中国人が登場していたそうだが)、本家よりも先にすでに製品としてコピー品を売り出していたのを発見した。

しかし彼らは、中国の会社を訴え製造を辞めさせようとはしなかった。すでに複数の製造会社とのプロトタイピングから製造の難しさを理解していたShooz製作者たちは、この会社と交渉し、訴えない代わりに彼らにShoozの公式の製造会社にならないかと提案したのだ。

無事にこの中国の製造会社とパートナーシップを結んだShoozは、その工場を訪れ「高精度な仕上がり、細部までとても正確で注意が払われている」、「多くの工場がこれまでに失敗しているので、こうして理想的な製造パートナーを見つけることができとてもうれしい」などと報告している(その後も何度か発送予定が延期され、現在も製品自体はまだ発送前の段階なので、この例が最終的に成功するかはわからないが)。

コピーされるのを恐れるのであればクラウドファンディングサイトにプロジェクトを載せること自体、もとい、世に出すこと自体がリスクだ

発案者がそれを具現化するためのアイデアや技術を持ち得なくても、それを先にやってしてしまう会社が存在するということは興味深い。

まるでいとも簡単に製品が形になっているように見えるが、アイデアこそ勝手に使用してはいるものの、製品化に至るまでには細部の設計、材料の調達から、制作にあたり専用の道具を組み上げたり、度重なるプロトタイピングなどの工程、そしてそれらへの投資も必要だ。それをすべてやってくれているのだから、もし製品化に成功した工場とアイデア元が提携できればWin-Winな関係になれる。現実的ではないだろうが、中国で勝手に製品化されるの狙ってクラウドファンディングサイトに絵に描いた餅のようなアイデアを掲載するようなプロジェクトも今後出てくるかも(あるいはすでに存在するのかも)しれない。

これまでの常識を覆すような革新的なデザインが出れば、コピー品や類似品が出てくるのはある程度仕方がないことなのかもしれない。そして、コピーされるのを恐れるのであればクラウドファンディングサイトにプロジェクトを載せること自体、もとい、世に出すこと自体がリスクだ。

真似されるのがどうしても嫌だというなら、ほかの会社がどうあがいても作れないような高い技術を必要とされるものを作るしかない...と言いたいところだが、Shoozの例はその逆であったので一概にそうとはいかない。ただ、「製品」が物理的なものに完結しない場合はこれもそう難しくないかもしれない。例えば製品がなんらかのソフトウェアと共に使うようなものである場合など。もしくは、よりソフトな面での差別化、例えばアフターサービスが優秀だとか、そういうことでコピー品が出てしまっても他を寄せ付けない名声を得ることができれば。さらに、「この会社の製品だから」と思わせるようなブランド力をつけることができれば完璧だろうが、それらはコピー品にも可能なことかもしれない。

これから何か新しい製品を作りたいが、コピーされないかと心配だという方は、「NNN agreements」(「non-use」、「non-disclosure」、「non-circumvention」。知的財産をあなたと競合する会社のために使用せず、開示せず、余分な製品を勝手に売らない)を製造業者と結ぶという手段もQUARTZには取り上げられている。

だが、契約を結んだからと言って「絶対」はありえない。これからのクラウドファンディングは、コピーされるリスクにどう対処するのかが重要なのかもしれない。

note: この記事の筆者は「Shooz」に出資しています。