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守られるべきは何か。3Dプリント銃をめぐる「国益」と「表現」そして「現実」のジレンマ

DIGITAL CULTURE
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ライター福田ミホ
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2013年5月、オープンソースで銃器のデータを配布するグループDefense Distributedは、3Dプリントで"印刷"できる単発銃「Liberator」の設計ファイルをネットで公開した。しかし、数日後にはアメリカ国務省の要請で削除された。

それから3年以上経った2016年9月、3Dプリント銃の設計図公開が「言論の自由」として守られるべきかどうかについて、司法の判断が下った。第5巡回控訴裁判所が出した結論は「ノー」、つまり少なくともアメリカでは、3Dプリント銃設計図を公開する行為は違法となった(via ArsTechnica)。

この裁判は2015年、Defense Distributedが国務省を相手取って起こしたものだった。彼らは言論の自由を謳うアメリカ合衆国憲法修正第1条、銃所持の権利を謳う同第2条、そして財産権の保障を謳う同第5条を根拠に、「Liberator」の設計ファイル削除を国家による権利侵害だと訴えた。

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「Liberator」image: FOLLBED on Thingiverse via 3DPRINT.com

だがアメリカにおいてさえ銃の購入には一定の手続きが必要となるのに対し、3Dプリントすれば誰にも知られずに自宅で銃が作成できてしまう。またネットで公開されるということは、アメリカだけでなく世界中で入手できるということであり、実際日本でも「Liberator」を含む3Dプリント銃を作成した人物が逮捕される事件があった。

アメリカ国務省は敵国を含む外国人が3Dプリント銃の設計図を利用することは国家にとっての脅威であり、それは言論の自由より重大だと主張した。今回の裁判では、それが認められた形だ。

銃を自作できる技術や道具は3Dプリント以前から存在している

だが3Dプリント技術をよく知る立場からは、現在の3Dプリント銃は問題視するほどの脅威ではないという声も上がっている。3DPRINT.comによれば、現状では銃の3Dプリントにはコストや時間がかかりすぎ、犯罪者にとっては既製の銃を買うほうがはるかに合理的なのだという。

また銃を自作できる技術や道具は3Dプリント以前から存在し、アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局は、個人的な火器製造を許可している。実際、「DIY gun」などのワードで検索すれば、市販の道具と部品で手作りした銃やその作り方を無数に見ることができる。

そのため3Dプリント銃製造も禁止されておらず、ただ空港などで使われる金属探知機で検知できる素材・形状であることが求められているのみである。アメリカでは原則としてすべての銃が登録されているが、こうした自作銃については、作成者も所持者も届け出る必要がない。かろうじて2016年にカリフォルニア州で自作銃の登録を義務付ける法案が通過したが、それが有効になるのは2018年とされている。

アメリカでは人口よりも多い3億5700万丁の銃が一般市民に所有されている

"shuty-MP1 test fire" by derwoodvw

またそもそも自作であるか否かにかかわらず、アメリカでは武器保有の権利が憲法で保障されているため、銃規制全体が進んでいない。Washington Postの推計によれば、今や人口よりも多い3億5700万丁の銃が一般市民に所有されている。近年の銃乱射事件の頻発によって銃規制に関する議論が高まってはいるものの、そのような盛り上がりがあるたびに銃の売上も増えているのが実態だ。

まして3Dプリント銃に関しては、設計図が元のサイトから削除されたものの、現実にはTorrentなどを通じて誰でも入手可能な状態にある。また銃の自作技術は急速に成長しており、2016年にはセミオートマチック銃を作成した例も登場した。技術の進化により、銃の自作コストはさらに下がり、精度は高まっていくと予想される。

そのような中で、アメリカも日本を含めた他国も、社会の安全をいかに維持していけるのか、より現実的な策が求められている。