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トランプ世界を痛烈に警告するロシアのフェミニスト・パンクPussy Riot

DIGITAL CULTURE
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エディター高橋ミレイ
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1990年代前半にライオット・ガール(Riot Grrrl)というムーブメントがあった。ワシントン州オリンピアで活動するパンク・バンドBikini Killらを中心にフェミニズム思想を持つミュージシャンたちが、男性至上主義的で女性を排除しがちなパンク・ロック界に「NO」を突きつけたというものだ。

彼女たちは、女性も男性と同じようにロックを愛好してライブを楽しむ権利があると主張し、そこから派生して社会の中での男女同権を訴えた。音楽やライブ活動を通して彼女たちは家父長制や家庭内暴力、人種差別やマイノリティへの差別といった問題を共有したのだ。

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だが、そのようなムーブメントの過激でエキセントリックな表現ばかりをメディアが面白おかしく書き立てたことで、彼女たちの主張は本来のそれとは異なる、ねじ曲げられた形で拡散することになる。ライオット・ガールは暴力的で過激で(同じ表現でも発信者が女性であるばかりに過激だというレッテル貼りをされがちだ)、男性蔑視の思想を持った危険な集団だとみなされてしまったのだ。やがて、メインストリームでのムーブメントは沈静化したが、その思想はインディーズのミュージシャンたちに伝搬した。

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Pussy Riot image: Игорь Мухин at Russian Wikipedia via Wikimedia Commons

Pussy Riot(プッシー・ライオット, Пусси Райот)は、ライオット・ガールの思想を受け継ぐバンドだ。Bikini Killにインスパイアされた彼女たちはモスクワを拠点に女性の権利向上とLGBTのコミュニティを守るための活動をし、特にロシアの大統領ウラジーミル・プーチンの強権的でマッチョイズムな姿勢を批判し続けている。メンバーの一部は2012年3月に政治犯として逮捕され懲役刑になったこともあるが、2013年12月に恩赦で解放されている(当の本人は政府の対外的なPRだと批判している)。

日本ではソチで行なったゲリラライブの際に、彼女たちが警官から鞭打たれ催涙ガスを浴びせられる様子がハフィントンポストなどで報じられ話題になった。

「もちろん私たちは、トランプに対してF○CKって言うよ」

そんな彼女たちが、女性蔑視と名高いドナルド・トランプに対して黙っているはずもない。TIMEの取材に対し、中心メンバーのNadya Tolokonnikova(ナジェージダ・トロコンニコワ)は「もちろん私たちは、トランプに対してF○CKって言うよ」とコメントしている。彼女たちからしてみれば、マッチョイズムに凝り固まった大国のトップはプーチンだけでたくさんなのだろう。

彼女たちがリリースしたのが『Make America Great Again』だ。

ミュージックビデオでは、女性を人間ではなく物として扱い、差別と性的・肉体的暴力を推奨するトランプを痛烈に批判している。ビデオの中の世界はトランプ政権下であり、トランプ風の女性と拘束された女性を演じるナジェージダが登場する。拘束された女性は「外人」「(男好みの体型でない)デブ」「変態」「中絶経験者」といった烙印を押され(文字通り、焼き印を入れられる)、レイプや虐待を受けた後に殺される。音楽が軽快なだけに、「あんたたちは、こういうことを鼻歌交じりにやるんでしょ?」と言わんばかりだ。

"What do you want your world to look like?"(世界がどんな風になったらいいと思う?)の問いかけで始まる歌詞は、トランプの「メキシコとの国境に壁を築く」といった発言やHuffington Postの創設者アリアナ・ハフィントンに対する「犬」発言への批判を織り交ぜながら、サビではこう歌っている(via GENIUS)。

Let other people in(自分と異なる人々を受け入れよう)

Listen to your women(女性の声を聞こう)

Stop killing black children(黒人の子どもたちを殺すのはやめて)

Make America Great Again(そしてアメリカをまた素晴らしい国にしようよ)

ナジェージダは10月にこの曲をリリースした意図について「アメリカの多くの有権者に、ドナルド・トランプが大統領になることの危険性に気がついてほしかったの。彼の言葉は言葉だけじゃ済まない。実際にそういうことをするはずよ」とコメントしている。

センセーショナルなミュージックビデオと彼女たちのメッセージは各国のメディアでも報じられ、Spotifyの「バイラルトップ50」でも大統領選投票日前の11月3日にグローバルでトップを記録。15日現在も10位にランクインしている。