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打ち砕かれた優越。『DOOM』で人間に勝つ対戦"AI"

DIGITAL CULTURE
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ライターabcxyz
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戦闘機戦囲碁など、様々なジャンルでAIが人間に勝利する話が聞こえてくるようになった昨今。人類が20年以上遊び続けてきたFPSゲームでも、勝利をAIに譲る時代になってしまったようだ。

FPSゲームの名作『DOOM』をご存じだろうか?2016年にリブートされた方の作品ではなく、1993年、id Softwareがリリースした『DOOM』だ。今から見ればドットの荒いグラフィックではあるが、暴力描写から問題視されたことでも知られている。20年年以上前のゲームだが、ユーザー制作のエンジンを用いてグラフィックを美しくしたり(とはいっても2016年版『DOOM』ほどではないが)、詳しくは紹介しないがMOD/WADでゲームのテーマを別物にしてしまったりHENTAIゲームにしてしまうMODなども存在し、前世紀より人類に愛されてきた作品だ。2005年には実写映画『DOOM/ドゥーム』(出来はひどかったが)まで作られている。

しかしこの『DOOM』で、ついに人間に勝つことのできるAIが登場する時代が来た。今年9月に行われたIEEE Computational Inteligence in Games 2016(ゲームでのCI/計算知能に焦点を当てたカンファレンス)で行われたViZDoomデスマッチでは、数々のAIが時に人間プレーヤーも交え、血で血を洗う戦いを繰り広げた。

ViZDoomは、AI同士を対戦させてその出来を競う、『DOOM』をベースとしたAI研究プラットフォームだ。従来FPSゲームのボット(AIプレイヤー)はゲームデータにアクセスし、マップやアイテムの位置情報、キャラクターの位置まで把握して、プレイヤーと対戦するものだった。もちろん、画面を見てプレイするしかないプレイヤーにはそんな芸当はできないから、いってみれば従来のボットはプレイヤーに対してチートをしていたわけだ。

ViZDoomではそんなチートはできない。その名の由来「Visual」+『DOOM』の通り、AIはスクリーン内の情報から判断して、そこから行動する。ViZDoomマッチに参加するAIはリアルタイムでスクリーンバッファ(Screen buffer、ビデオ・バッファとも)にアクセスし、その情報から学びとり、行動を選択しなくてはいけない。

動画はViZDoomによるもの。

カーネギーメロン大学の二人の学生、Guillaume LampleとDevendra Singh Chaplot がデザインしたAIプログラム「Arnold」を紹介しよう。Arnoldは彼らが4か月を費やして完成させた「ViZDoom」用プログラムだ。人間にも勝つことのできるこのArnoldは、畳み込みディープニューラルネットワーク(convolutional deep neural networks)にQ学習(Q-learning)を活用し、経験から学ぶ(experience replay*)により、ゲームプレイを学んだ。LampleとChaplotのチーム(チーム名はなんと「The Terminators」、Arnoldが将来暴走しないことを願おう)のArnoldは動画左上。マッチの内容はデスマッチで、自分以外の全員が敵だ。Arnoldは時折壊れたロボットのように不可思議な左右の首振り運動を行うあたり、まだ人間らしさは足りないが、常にしゃがみ移動をしていることに注目頂きたい。

*experience replay:Google子会社によるの人工知能DQNも経験を基にトレーニングを行う同様のアルゴリズム使用している。

複数回行われたデスマッチ戦でArnoldは1位となることはなかった。行われたLimited DeathmatchではFacebookのAI研究チーム「F1」が、Full DeathmatchではIntel Labの「IntelAct」がそれぞれ1位になっている(両チームとも一方のマッチにしか出ていない)。FacebookにIntel、どちらもリソース豊富な強豪チームで人間のような動きを見せるAI。大企業チームがトップにつく中でどちらのマッチでもArnoldが2位につけたことはJaskowskiも「成果だ」としている。エセックス大学の「CLYDE」も僅差だったが、それでもArnoldが2位となれた理由は「シンプルなトリック」のおかげ、「殆どの時間をしゃがんでいた事で(敵弾に)当たりづらかった」だとJaskowskiはPost Gazetteに語っている。

さて、そんなViZDoomでの対戦には人間も参加しているが、皆さんはどれが人間のプレイヤーで、どれがAIボットなのか見抜けるだろうか?最後に「ViZDoom版チューリング・テスト」とも言える動画を紹介しよう。この動画も今回のコンペティションからのものだが、どの映像がどのAIなのかわからなくされている上に、一人だけ人間のプレイヤーが混ざっているものだ。

AIがFPSゲームでしゃがんで弾を避け、人間に勝てるようになった今、AIが倒した人間プレーヤーを嘲るためにティーバッグをするようになるのも時間の問題だろうか。