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1デジタル時代のゲームチェンジャー

「ストリーミング世代」の音楽論。トロピカルハウス・プロデューサー「KYGO」長文インタビュー

DIGITAL CULTURE
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FUZE編集長Yohei Kogami
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年間71億ドルという途方もない規模に膨れ上がる世界のエレクトロニック・ダンスミュージック。このシーンに突如現れてリリースした「Firestone」でいきなりブレイク、ピアノとハウスの個性的なサウンドで世界中を席巻しているノルウェー出身のアーティスト、それがKygoだ1991年生まれ、25歳のパフォーマンスを今夏行われたリオ五輪閉会式で見た人、いるのではないか?

「トロピカル・ハウス」界の中心人物Kygoは、ネットから世界に羽ばたいていった現代アーティストの代表例だ。その人気はというと、先日、日本でサービスが始まった音楽ストリーミングサービス「Spotify」で、史上最速で総合再生回数10億回を突破するほどなのだ。

9月に開催された都市型ダンスミュージックフェスティバル「ULTRA JAPAN 2016」のヘッドライナーで来日したKygoを訪ねた。指定された時間丁度に、トレードマークの黒Tシャツとキャップの逆さ被りで現れた(彼は自身のファッションブランド「Kygo Life」も運営する)。

SNS時代に音楽を作ること、音楽ストリーミングのこと、VRのことなど、デジタル全盛期の今に新風を吹き込む21世紀のミュージシャンは、どんな価値観を抱き、どこを目指しているのか? クリエイターの源泉について興味深い話を聞かせてくれた。

KYGO来日インタビュー

―― 今日はお時間を頂き、ありがとうございます。最近はどんな生活ですか?

Kygo: 日本にくる前はシンガポールでライブしたんだ。この2年間は、移動続きの生活なんだ。行った国の数は、もうカウントを忘れたよ。

―― あなたが作品を公開し始めてから、国際的なアーティストとして世界中から注目されるようになるまで、短期間でしたね。

Kygo:信じられない気分だね。自分の寝室で曲を作っていた頃から、大勢のオーディエンスの前でプレイすることが僕の夢だったからね。今はインターネットとソーシャルメディアがあるから、ノルウェーのような小国から世界に飛び出してワールドワイドなアーティストになることも、夢物語じゃなくなった。これがネットとSNSのパワーなんだ。

Kygoさん(@kygomusic)が投稿した動画 -

もし僕が2000年代半ばに音楽を作っていたとしたら

―― あなたとこれまでのアーティストとの「違い」という点では、今まで常識的に使われてきた音楽界のプロモーション手法ではなく、ソーシャルメディアをごく普通に使い、世界中のファンを獲得してきたことかと思います。

Kygo:僕にはSNSが一番自然なツールなんだ。気が付いたらFacebookやInstagramユーザーになっていたからね。そして音楽を作り始めた時、「どうやって音楽をプロモーションしていこう?」と考えた時、SNSが当然の答えだった。初めにFacebookページを作って、次にSoundCloudでプロファイルを作って曲をアップロードし始めた。それが全てのキッカケだった。

もし僕が2000年代半ばに音楽を作っていたとしたら、僕のやり方では成功しなかったんじゃないかな...。だけど、それは過去の話だね。今はSNSが成功へのアプローチだよ。

―― SNSの投稿に関して戦略的な方法があったりするでしょうか?

Kygo:SNSへの投稿は僕自身だけど、マネージャーやレーベルと一緒にアイデアを出し合うんだ。重要なことは、自分がアクティブでいること。そして、ファンが知りたい近況を伝えていくことだよ。音楽の情報だけじゃ駄目なんだ。今どこにいるか、今何をしているのか。こういった身近に感じてもらう話題はファンが喜ぶ情報だ。

音楽ストリーミングを自然に受け入れるアーティスト

―― Kygoの音楽を語る上で、音楽ストリーミングサービスが大きな影響だったと聞いています。

Kygo:僕のキャリアは、音楽ストリーミングサービスで形成されたと言えるよ。音楽ストリーミングが世界に存在しなかったら、きっと今の僕は存在しなかったよ。僕にとってとても当たり前の選択だったんだ。

僕のキャリアを作る上で、SoundCloudにはリミックスやエディットを投稿して公開し始めたことから、注目を集められファンを作ることができた。そして僕がオリジナル曲をリリースした時、当時スウェーデンのSpotifyはすでに北欧で人気のサービスで、僕も友達もユーザーだった。だからSpotifyでオリジナル曲を配信することは、自然の成り行きだったと感じるよ

僕の曲を世界に広められたのは、SpotifyやApple Musicといった音楽ストリーミングサービスがあったからこそ実現したんだ。これから音楽を始めるアーティストも活用するといいかもしれないね。

―― あなたの音楽キャリアを振り返ると、SNSや音楽ストリーミングと、現代のデジタルテクノロジーを受け入れる世代を象徴していますが、次に来るテクノロジーにはどんな期待をしていますか?

Kygo:次に何が来るかを予想するのは、いつも難しいね。これだけは言えるよ。音楽の聴き方は変わっていくと思うよ。音楽ストリーミングサービスは昔よりも随分改良されて、音楽を聴くことが便利になったと同時に、毎週アップデートされるプレイリストをフォローしたりするだけで知らないアーティストや曲に出会うこともできる。音楽を見つけられる素晴らしいツールに進化してるね。

―― 今の音楽シーンで好きなところは何ですか?

Kygo:EDMが現代のポップミュージックになっているところだね。だけど、今EDMはさまざまな音楽ジャンルと融合して、シーンから新しい音楽が生まれている真っ最中なんだ。

―― 具体的には昔と今とでどんな違いが見られますか?

Kygo:3〜4年前なら、128BPMの早いテンポの"フロアバンガー"ばかりだったけれど、最近はテンポがもっと遅くなったり、EDMはこうあるべきというフレームワークが取り除かれてきた。僕は、新しい実験的なプロデューサーたちが現れてる今のシーンが好きだよ。

―― 今年、デビューアルバム『クラウド・ナイン』をリリースしました。その一方で、ULTRAのように巨大フェスやライブ活動への出演も精力的に行っています。制作活動とライブのクリエイティブを両立させる時に大事にしている哲学は何ですか?

Kygo:僕は作品を作る時も、ライブをする時も、音楽シーンの誰とも違うことを実現したいと常に考えている。それが例えばEDMファンが集まる場所でも、出来る限りキーボードやピアノを使ったライブをする。僕のDJ歴は3年ほどだけど、ピアノは20年以上も弾いてきたから、僕が得意な楽器をステージでは演奏したいと常に感じるんだ。

僕のクリエイティブなプロセスは実験の繰り返しで成り立っている。音楽を作れることは幸せだけど、自分に課題を課して常に新しいことへと毎曲チャレンジしていくことが、僕の楽しみの原動力になっている。音楽を作る時、それがオリジナルでもリミックスでも、過去に使ったことのない要素を試す作業が重要で、僕をワクワクさせるんだ。実験しなければ、僕自身が楽しめないからね。

―― リスナーの立場としての質問ですが、今はあらゆる便利なテクノロジーの恩恵で、満足いく音楽体験ができているように感じていますが、ある意味で裏切られることもなくなっています。これからも音楽を制作するアーティストとしてどんなサプライズをリスナーに届けたいですか?

Kygo:チャンスがあればハイレゾでも配信したいね。可能な限り、最高の音質で聴いてもらうことは重要だよ。音楽ストリーミングの「TIDAL」は、高音質で配信を実現できているよね。他の音楽ストリーミングサービスは、高音質の配信に取り組んでいると思うよ、たぶんね(笑)。いや、聞いたわけじゃないから、分からなけいけど(笑)。それが、僕の希望だよ。

新しいテクノロジーを使うことも常に考えているんだ。例えばヴァーチャルリアリティ(VR)を使ったライブ・ショーは、実現できたら興奮するね。会場に来れない人が、ステージのパフォーマンスを間近で見ると、ライブから発せられるエネルギーの受け取り方は違うけれど、その場にいる感覚を覚えることができる。画期的な体験を伝えるツールとして、これからのVRの進化は気になるよ。

―― 気になる質問を最後に。どんなスタジオセットアップで音楽を作っていますか?

Kygo:僕はスタジオをシンプルにしておきたい。だからセットアップは、グランドピアノとMIDIキーボード、モニター用スピーカー、それにMacBookそれだけだよ。今の時代、大勢の人が高価で機能がたくさん付いている機材が、音楽を作るために必要だと考えるよね。でも本当はその反対だ。僕は駆け出しの頃、最初の2年間はMIDIキーボードとMacBook、ヘッドフォンしか使っていなかったんだ。スタジオスピーカーさえ持ってなかったんだ(笑)。

Kygo最新アルバム『クラウド・ナイン』

Kygo来日インタビュー

今年5月13日にリリースしたデビュー・アルバム。

タイトル:クラウド・ナイン
レーベル:ソニーミュージック・ジャパン
詳細:Link


トラックリスト
1. イントロ
2. ストール・ザ・ショウ feat. パーソン・ジェームズ
3. フィクション feat. トム・オデール
4. レイジング feat. コーダライン
5. ファイアーストーン feat. コンラッド・スーウェル
6. ハッピー・バースデイ feat. ジョン・レジェンド
7. アイム・イン・ラヴ feat. ジェイムズ・ヴィンセント・マクモロー
8. オアシス feat. フォクシーズ
9. ノット・アローン feat. ローズ
10. シリアス feat. マット・コービー
11. ステイ feat. マティー・ノイエス
12. ナッシング・レフト feat. ウィル・ハード
13. フラジャイル
14. キャリー・ミー feat. ジュリア・マイケルズ
15. フォー・ホワット・イッツ・ワース feat. アンガス & ジュリア・ストーン
16. ヒア・フォー・ユー feat. エラ・ヘンダーソン
17. カット・ユア・ティース(カイゴ・リミックス)