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ダフト・パンクへのトリビュート。一年以上を注ぎ完コピを越えるロボットヘルメットに辿り着いた技術屋の情熱

DIGITAL CULTURE
ライターabcxyz
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フランスのエレクトロデュオ、ダフト・パンク。その「顔」ともいえるマスクを電飾ともども完全再現したプロップメーカーが、その制作の舞台裏を事細かに公開している。今回実際に作られたのはダフト・パンクのメンバーである二人のロボットのうち、金色のヘルメットの方、ことギ=マニュエル・ド・オメン=クリストの方だけだ。

制作したクリエイティブデュオ「LoveProps」はダフト・パンクと同じくデュオ。ただLove Propsが情熱を向ける先は音楽ではなくプロップ制作だ。余暇時間は、プロップの制作に携わったり、プロップやコスプレ用の電子部品やソフトウェアを作ったりするのに費やすというこのインダストリアルエンジニアの二人組。様々なセンサーやLEDが内蔵されたこの美しいヘルメットの制作には1年以上毎日携わり続けた。

4か月を費やし一から作り上げたマスターモデルを、更に4か月かけて型取り。バイザー部分は様々な素材で試しながら3か月かけバキュームフォームで形成。バイザー内部から光を放つLEDのための作業にも3か月。LEDを光らせるためのオープンソース・カスタムファームウェア「SIGMAFW」を独自に開発するのにも3か月費やして完成したのがこちらだ。ヘルメットのLEDは、外部からのMIDI、WiFiからの情報などから事前にプログラミングしたとおりに光らせることも可能だし、内蔵する加速度計や内臓マイクを使って、動きや周囲の音/音楽に合わせてリアルタイムに光らせることも可能になっている。

制作過程は彼らのブログに「マスターモデルの制作」、「モルディングとキャスティング」、「バイザーの制作」、「ハードウェアとエレクトロニクス」、「ソフトウェア」、と五部に分けて詳細に記述してある。素材の選択から厚みまで明らかにしているし、この材質では失敗だった、などの裏話も多くの写真と共に記されている。ヘルメットのために作り上げたファームウェアもオープンソースだが、ヘルメットそのものの制作に関してもオープンなのだ。

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image: LoveProps

光らなくとも美しいこのヘルメットが、内蔵されたLEDにより美しく輝く様子はダフト・パンクのファンでなくとも心奪われる。しかし、ヘルメットの完成度の高さと同じくらい重要なのは、彼らがその制作過程をオープンにしていることかもしれない。高度な知識や技術を共有することで、情熱を持つ人々がそこから学び、さらなる素晴らしいモノが生まれる。そのことは人類の歴史が証明してきた。

どんな煌びやかでハイテクな最新技術がこの世に存在しようとも、それを可能にする方法を知ることができなければ、それは半分も意味がない...そこまで書くとただ話が横にそれているように思えるだけかもしれないが、詳細ながらも簡潔にまとまった製作過程は読むだけでも興味深いし、なによりもこれから電飾仕込みのヘルメットを自作しようという人にとっては大いに参考になるに違いない。