MAIL MAGAZINE

下記からメールアドレスを登録すると、FUZEが配信する最新情報が載ったメールマガジンを受け取ることができます。


Avenged Sevenfold『The Stage』:人工知能に魅せられたヘヴィメタルバンドの現代への問いかけ

ARTS & SCIENCE
/uploads/IMG_0631.PNG
エディターMakoto Saito
  • はてなブックマーク

俺たちはキャリアの中でもっとも難解なアルバムをリリースした。おそらく何度も聴き直さなければしっくり来ないだろう。

今の世の中は非常に速く進んでいく。そんな時代にこのアルバムは合わないだろうな。もっと手軽でわかりやすいものを求める人がいたとしても、その気持ちはよくわかる。だが、いいものっていうのは慣れるまでに時間が必要なことがあると俺たちは知ってしまったんだ。

ヘヴィメタルバンドAvenged Sevenfold(A7X)が3年ぶりにリリースしたアルバム『The Stage』について、ボーカリストのM.シャドウズはFacebookポストで上のように述べた。

彼らが突如、360°映像でのパフォーマンスのライブストリーミング、いわゆる「VRライブ」を行なうことを発表したのは10月26日。

28日にキャピトル・レコードの屋上から新曲を含むライブを披露し、その直後にアルバム『The Stage』のリリースが発表された。

Avenged Sevenfoldが2年の間アルバム制作を行わなかった理由を、シャドウズは「本当にインスパイアされるものに出会うまで待っていた」からだとThe Rolling Stonesのインタビューで語っている。

つまりリリースされたアルバム『The Stage』は彼が得た「真のインスピレーション」を体現したものであり、それは意外にもテクノロジーとサイエンスの探求だった。

ヘヴィメタルと人工知能

The Rolling Stonesで、このアルバムは人工知能をテーマにした作品だとシャドウズは語っている。彼はWait but Whyに掲載されたティム・アーバン(Tim Urban)の記事をきっかけに、人工知能にハマり、サム・ハリス(Sam Harris)の著書からマーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクスティーブン・ホーキングらの意見まで読み漁り、"勉強"したそうだ。

たとえばアルバム2曲目の『Paradigm』は医療分野での活躍が期待されているナノボットについての曲だ(ナノボットとは血管を通って人体のケアをしたり、手術の代わりとなる医療行為を行なうとても小さなロボットのこと)。

Creating God』の歌詞には、人工知能開発を表現したイーロン・マスクの有名な言葉「Summoning the demon(悪魔を召喚しようとしている)」を引用し、コンピューターを賢くする研究を進めることで人類が自分たちを支配する神を作り出してしまうことを描いている。

またフェルミのパラドックスを曲名にした『Fermi Paradox』や、"ヘヴィメタル流に"宇宙の誕生ビッグバンを表現したという『Exist』にはアメリカの天体物理学者ニール・ドグラース・タイソンが出演した。

「アート」を超えていく

Avenged Sevenfoldといえば『City of Evil』などのアルバムで知られる、カリフォルニアの王道的ハードロック/ヘヴィメタルバンドだ。

彼らの代表曲のひとつ、車の豪快なエンジン音とシャウトで始まる『Bat Country』のミュージックビデオには下着姿の女性も出てくるし、彼らもオープンカーでめちゃくちゃな運転をする。ライブでは開演からアンコールまで、タトゥーにボディピアス必須の屈強なファンたちのモッシュが止むことがない。

『Bat Country』

彼らのサウンドやビジュアルのインパクトからくる従来のイメージのせいで、Avenged Sevenfoldのヘヴィなクリエイションと最先端難解複雑なサイエンス世界の結びつきに意表を突かれた人は多いだろう。反発を感じるファンもいるかもしれない。

シャドウズは、「アルバムを出すたびに、それが新しい試みの作品だろうが前作を受け継いだものだろうが、ファンは必ず批判するんだ」とFRONTのインタビューでこぼしたことがある。それでも彼は今回『The Stage』を制作するとき、人工知能について彼が読み考えたことについて「できることなら山の上から叫んで、ファンを啓蒙したい」と感じたのだという(via The Rolling Stones)。

アーティストを突き動かし、そして3年ぶりのアルバムをバンドにリリースさせたインスピレーションがテクノロジーであったことは興味深い。現代を代表するアートテクノロジストである落合陽一が「アートはテクノロジーでしかなくなる」と予見したことがまさに起こっているのではないか。だとすれば、この貴重な過渡期2016年にあって、アートとテクノロジーの臨界点で作品を生み出そうともがく彼らのファンとして、そのひとつの結実を聴き、彼らのビジョンを垣間見ることができるのは幸福なことだ。

人工知能とそれが構築する新しい世界に魅せられたアーティスト、M.シャドウズはファンに語りかける。

このアルバム『The Stage』の中で議論されている話はリアルで、俺たちにとって大切なことだ。

この音楽は俺たちに響いた。これを聴く人たちにも同じように響いてくれることを祈る