MAIL MAGAZINE

下記からメールアドレスを登録すると、FUZEが配信する最新情報が載ったメールマガジンを受け取ることができます。


1レポート:ブロックチェーンとは何か?

ブロックチェーンは、ありふれた制度の中の「不確実性」を無くせるのだろうか?

NEW INDUSTRY
/uploads/profile_fukudamiho.jpg
ライター福田ミホ
  • はてなブックマーク

仮想通貨ビットコインの中核をなす技術「ブロックチェーン」で知っておくべき特性とは、一体何だろうか?

今、テクノロジー界だけでなく、さまざまな産業から注目を集めているブロックチェーンは、なぜ世に認められ始めたのか? スタートアップへのコンサルティングを行うAnimal Ventures共同創業者ベティナ・ウァーバーグ(Bettina Warburg)が、TEDで明快な解説を行っている。

平たく言えば、ビットコインにおけるブロックチェーンとは、コインのあらゆる取引内容を記録し、その記録をP2Pネットワークで分散的に共有、検証する仕組みだ。中央の管理者がデータを一元管理するのではなく、フラットにつながったすべてのコンピューターに同じデータが保持される。管理者不在であっても、データ内容は各コンピューターの衆人環視に置かれ、改ざんはきわめて困難だ。従来の一元管理の仕組みでは、管理者は不正や改ざんを行わないものと信頼する必要があったが、ブロックチェーンではその必要もない。

動画の発言から分かるように、ブロックチェーンは、あくまでデータを記録して、その正しさを担保する枠組みであり、用途は必ずしもビットコインに限定される必要はない。うまく利用すれば、従来の産業が抱えていた取引の効率や公正さといった課題を解決できる可能性がある。だが、ウァーバーグはブロックチェーンをただの課題解決のための仕組みとして見なすより、旧式の「制度」を変えるであろう底知れぬ可能性に注目する。

昨今、技術的さらには社会的側面から種種雑多に語られるブロックチェーンだが、その特性を突き詰めると何なのだろうか。ウァーバーグは不確実性の低減だとして、次のように語る(via TED

このトークから他に何も持ち帰らないとしたら、これだけは覚えていってほしいのです。それは、ブロックチェーンは比較的新しい技術である半面、これは人間的な物語の延長でもあるということです。その物語とは、「我々人間は、価値の交換を行うべく、相互の不確実性を低減する方法を探している」ということです。

ウァーバーグはノーベル経済学者のダグラス・ノース(Douglass North)の理論を引用し、旧来の人間社会は、物や金銭といった価値の交換を行うために、取引相手の不確実性を低減させる方法を利用してきたと分析し、その象徴が従来の銀行や政府、企業といった「制度」であると指摘する。ウァーバーグは、ブロックチェーンがこれら制度に代わる機能を果たすと言うのだ。

ブロックチェーンと制度の関係で最も重要な議論として、取引にあたっての不確実性には3つの形態があると、ウァーバーグは諭す。1つ目は「取引相手が何者かわからない」ことだ。そのためアマゾンやeBayのようなマーケットプレイスでは、レビューや評価コメントの機能を入れることによって、取引主体の信頼性を高めようとしているが、問題はそれらのプロフィールはサービスごとに断片化していることだ。だがブロックチェーンを使えば、サービスに依存しないグローバルなプラットフォームが構築可能になり、ユーザーは場面に応じて必要な相手に必要なプロフィールの属性を開示することで、取引成立に必要な信頼を得ることができる。

2つめの不確実性は「取引の透明性がない」ことだ。何かを購入するとき、現状ではそれが謳い文句通りの商品なのか、どういった過程を経て作られたのかを確認するすべは(現実的には)ほとんどない。だがブロックチェーンはサプライチェーン全体で共有できる。たとえば購入したブランド商品が本当にそのブランドの工房で作られたものなのかどうか、データで確認できるようになる。

3つめは「取引がうまく行かなかった場合に、対応するための資源がない(対応しきれない)」ということだ。たとえばオンラインで何かを購入した時、「代金を支払ったのに商品が届かない」という事態がある。アマゾンのような大手が仲介者として存在する場合には、クレームすることが考えられるが、多大な時間と手間がかかり、まして売り手との直接取引の場合にはさらに面倒なことになる。だが、ブロックチェーンは買い手と売り手がシステム間で連携できるため、「契約内容が遂行された場合にのみ代金を支払う」ことが可能になる。

つまりは、ブロックチェーンを使うことで、銀行や企業や政府といった、人類が有史以来築いてきた不確実性を減らすためのさまざまな道具の役割が縮小していくのだ。これによって生まれる変化として、たとえば商品の中間コストが下がって物を安く手に入れられたり、従来信頼が得られにくかった個人や小規模組織によるビジネスが活性化したり、偽造品などの不正な取引が抑止されたりといった効果が期待される。

しかしながら、ウァーバーグが指摘するのは、ブロックチェーンはまだ黎明期の技術であり、どのように利用すればよいかを、各所で検討している点だ。さらには、応用法によっては、必ずしも管理者不在の分散型ではなく、企業や政府が主体となって運用されるケースも考えられ、その場合は上に述べたようなメリットすべてが享受されるわけではなくなる。

とは言うものの、ウァーバーグが注目する消費社会での活用以外でも、現在ブロックチェーンは、金融界はもちろん、不動産音楽美術作品取引など、さまざまな場面での応用が模索されている。これからどのような形で普及し、旧式の生活を変えていくのか、引き続き注目される。