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中国で沸き起こる「VRカフェ」「VRカラオケボックス」は熱狂を生み出せるか?

NEW INDUSTRY
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FUZE編集長Yohei Kogami
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これはファンタジーではない。すでに現実で起きていることだ。

2016年は「VR元年」と言える。FacebookがOculus Riftをようやく3月に我々に向けて発売したのを皮切りに、4月にはHTC Vive、そして10月にPlayStation VRなど、世界中から雨後の筍のごとくヘッドマウントディスプレイが登場したと、VR界隈の一年を振り返ればキリがない。しかしながら、これらハードウェアの相重なる登場によって、逆にVR自体が特別なものでなくなったことも否めない。

問題は、この新しい体験の一般化だ。実現したかと言われれば、VRを体験できた人口の数は極めて低い。VRが抱える問題の1つに、その凄さが「VRヘッドマウントディスプレイの性能」なのか、「VRコンテンツ」なのかで、分かれることではないか。何度でも見たくなる圧倒的映像美のコンテンツもあるものだが、ハードウェアの数の少なさゆえに体験できる時間が限られてガッカリすることも少なくない。

しかし、そうした問題を変えようと、動き出した人たちがいる。そして、彼らの見つけた答えは斬新極まりない。それは中国の「VRアーケード」化だ。

Quartzが伝えた興味深い中国のVR事情によれば、2020年に史上規模が約88億円(85億ドル)にまで急激に成長する見通しで、その人気は一般消費者を巻き込んで主潮へと進んでいる。その兆しは、「VRカフェ」の誕生が象徴的な動きだ。

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(via Quartz

深セン市のスタートアップ「EMAX」は、VR関連商品を取り扱うVRショップを立ち上げるなどしているが、彼らが力を入れているのが「VRキオスク」の運営だ。SF映画を想起させる青のライティングと白い壁に囲まれた、30-60平方メートルの広さのキオスク内には、3-5台のVRヘッドマウントディスプレイが設置されている。EMAXはVRキオスクを中国、韓国、台湾で合計179店舗運営している。料金は「1体験当たり50元(約830円)」だ。

VRキオスクを体験した人の意見は百人百様だ。18歳の学生は"3体験"分を体験して「映像はところどころボケていたけど、全体的に技術はすばらしいですよ」とQuartzに答えている。一方で、中国を旅行中にVRキオスクを体験した、29歳のフランス人ミュージシャン、サミュエル・アヴラム(Samuel Avram)は「夕食に行く予定だったけど、そんな気分じゃなくなってしまった」と乗り気でないようだ。

VRのカラオケボックス化

中国でVRキオスク以外にVRを楽しむ場所では、「VRカフェ」と「VRラウンジ」がある。VRカフェは中国内で現在300店舗あると、カフェ創業者の1人であるChen Jiaweiは予測する。Jiaweiが運営するVRカフェは、約30平方メートルのスペースに、PCとHTC Vive2台が設置されている。

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(via Quartz

「VRラウンジ」は言わば"VRのカラオケボックス"だ。しかしカラオケといっても、VRで音楽がベースのアプリやゲームの中で、歌ったりパフォーマンスをするものではないようだ。「VRラウンジ」では、友人や家族とマイクを持って歌う代わりに、VRヘッドマウントディスプレイを装着してVRコンテンツを楽しむ。つまりは、家族や友人同士が集まり、ワイワイはしゃぎながら、ヘッドマウントディスプレイを付けてVRを楽しむプレーヤーを囲み眺める、というシュールなシチュエーションが現実の光景となる。

VRラウンジは、VRプレーヤーになる人も、それを眺める人もくつろぐことができるようにリビングを思わせる空間演出を施し、ヘッドマウントディスプレイを被りながら、好きなVRゲームや映像を選べる専用のソフトウェア・システムまで開発し、VRを"セルフサービス"している。体験するには、30分で100元(約1600円)が必要だ。

こうしたVRのカフェ化、カラオケ化で、VR体験がリビングを抜け出し、普及するかといえば、その未来はまだ分からない。しかしながら、中国のネット企業大手、特にアリババ、テンセント、バイドゥの3社は、ソニーやOculus、HTCのようにVRヘッドマウントディスプレイを製造する代わりに、VRコンテンツとハードウェア開発者向けのプラットフォーム立ち上げとスタートアップ支援に巨額の資金を投入して、世界とまた違ったVR市場を中国内で立ち上げようと躍起になっている。現在、中国ではVR関連のスタートアップは200社に上るとバイドゥ傘下のIQiyi.comはレポートしている。すでにショッピングモールにはVR機材がゲーセンのごとく並ぶ中国では、すでに世界のどの国とも違う、VRの温度を感じることができるかもしれない。