MAIL MAGAZINE

下記からメールアドレスを登録すると、FUZEが配信する最新情報が載ったメールマガジンを受け取ることができます。


11990年代、オルタナティブの始まりと終わり

「90年代」からの解放。 FUZE次回特集「90年代オルタナの生と死」公開中

ARTS & SCIENCE
エディターYohei Kogami
  • はてなブックマーク

FUZEでは、11月30日(木)より「90年代 オルタナティブの始まりと終わり」と題した特集を公開中だ

国内で「90年代ブーム」が叫ばれて久しい。音楽や映像、ファッション、ストリートカルチャーの世界では、「90年代」的要素をサンプリングリミックスする感覚はこれまでも行なわれてきたわけだが、レトロ回帰やアナログ主義といった流れとともに「90年代」がいかに斬新か、そしてそれが未来であるかのようにメインストリームメディアによっていち早く一般化されつつある。

振り返ると90年代は日本にカルチャーの輸入と融合が最も進んだ最後の世代であった。語弊のないように云えば、海外のカルチャーに触れる機会の多様性と情報量は以前に比べて圧倒的に増えている。もっとも、昨今のグローバルカルチャー化する音楽やファッションに対して、保守的な姿勢を構え始めたことも顕著になったといえる。そうした日本人の感受性は90年代以降にグローバルカルチャーのプラットフォームが日本ではなかなか受け入れない現状が物語っている。SNSやインターネットが開かれた場所となることで、あらゆる文化的情報や動向や価値観との距離が縮まろうとする時代において、システマチックに進化してきた日本では、明確に説明がしづらく、狂気と異端性が目立つカルチャーの本質に対してはむしろ距離を置く考え方にシフトしていったように思える。だから、時代性の面白さも含めて「90年代」はこの上なく面倒でややこしい言葉だ。

この特集にあたり、「オルタナティブ」とは一体何かと考えてみた。特に音楽の世界では、1990年代に特出した「オルタナティブ」作品を数多く残してきたことが文化的功績として今でも大きく跡を残し、この大雑把だけど寛大な言葉の影響度はいまだに顕在だ。カート・コバーンの破天荒な生き様や、ニルヴァーナの『Nevermind』に紐付けるだけで、現代において「オルタナティブ」というスタイルや姿勢が解釈することが可能とも思えてくるほど、言葉には魔力がある。そうした歴史や流れは、SpotifyやApple Musicにも「オルタナティブ」というプレイリストのカテゴリーがあるほど(Spotifyでは「Indie/Alternative」とある)、テクノロジービジネスにも受け継がれてきた。そんな「オルタナティブ」の音楽カルチャーは世界各地で20年近くの歳月を経て、あらゆる分野に枝わかれし融合し、中にはグローバルスタンダードや歴史的に重要文化となって、再評価と再構築が進んでいることからも、現代の音楽カルチャーでは文化的「イノベーション」が盛んに起きている背景にも寄与しているとも考えられるはずだ。

むしろ、「オルタナティブ」だった思想や価値観が、現代の文化的メインストリーム構築の下地として機能を担っていることは説明不要だが、現代人の「感覚」や「体験」の商業化が求められる企業が「オルタナティブ」な90年代にビジネス的価値として見始めたことに、ある種のオルタナティブのメインストリーム化を感じてしまう人も少なくないはずだ。昨今の日本でもサードウェーブコーヒーやポートランドを例に出すまでもなく、こうした文化とビジネス社会やメディアとの対話のなさは常に起きていることで、同時にこうしたヒエラルキーや疎外感を議論すること自体が目的化していることも否定できない。

90年代は、こうしたガラパゴス的感覚を日本のマスマーケットが共有できた最後の時代であり、それを「オルタナティブ」の言葉で言い表すことはひとつの成功体験だったのかもしれない。その意味で、「オルタナティブ」とその文脈上にある「90年代」という言葉の意味は一体何なのかと考える。そしてその面白さは、今では普遍性あるビジネスが常に模索するバズワードでしかないのかもしれないが、あらゆるもののグローバル化とパーソナル化が同時進行するポストインターネット時代においてそのダイナミズムが果たす役割はむしろ再評価され刷新され続けていくと考えると、社会や文化のあり方や個性へのアプローチが変わるのではないかという一つの問いにたどり着いたのだった。

今回の特集は「90年代ブーム」を悲観するわけでも楽観視するわけでもなく、復活の原動力を探るものでもない。取材した人は、90年代発をノスタルジーやセンチメントで語ることや、未来に期待することでもなく、ただ2010年代の文脈を読むうえでの新しい選択肢を作りたかったという編集部の想いに賛同してくれ、本来はジャンルレスであるはずの90年代オルタナティブの独自解釈をリアルに見せてくれた。こうした批判や再評価は、文化がアーカイブされるものではなく、むしろ刷新していくものだということを教えてくれた。90年代オルタナティブという言葉が音楽やファッション、文化の新しさを語る時代はすでに終わった。

皆さんにとっての「90年代を象徴するもの」を教えてください。TwitterもしくはInstagramで「#90年代オルタナの生と死」でハッシュタグ付きで投稿してください。特集期間中、FUZEがピックアップして定期的に再投稿していきます。

1990年代、オルタナティブの始まりと終わり

      1990's→2017

      1990年代、オルタナティブの始まりと終わり

      90’sリバイバルはどこからはじまった?