ラスベガスで毎年開催される世界最大規模の家電見本市、CES(Consumer Electronics Show)。インテルやサムスンといった大手家電メーカーから、 小中規模のテック・スタートアップまで、あらゆる種類の家電メーカーがその年の最新プロダクトやプロトタイプを発表する「テック業界のお祭り」のような大イベントだ。
そんななか、今後のマーケットを象徴するかのようにスマートホーム部門で出展していたのがVapium Medicalだった。Vapium Medicalは、医療用大麻を吸引するための、俗にベイプと呼ばれる加熱式の吸引ガジェットを目下開発中のスタートアップだ。このベイプは、吸引量を測ったり、アプリで回復状況をトラッキングすることができるスマートデバイス仕様となっていることが、CESで明らかになった。
ソニーやAmazonといった大手ブランドが出展するイベントで、大麻の吸引ガジェットが売られていることに驚きを感じる人も多いかもしれない。全米各州で加速している大麻合法化の動きの中、消費者は今後さらに増加するとみられており、テック業界も大麻ビジネスに次々と参入しているのだ。米テックメディアのDigital Trendsは今年のCESを受けて「なぜ大麻市場はブームになり急成長しているのに、大麻テックはCESでの存在感がないのか」という記事で前述のVapium Medicalを紹介しながら、「大麻消費の一般化がさらに進み、大麻テックの利用や販売がタブーとして見なされなくなれば、大麻テックはCESに(さらに大規模に)出展されるほどのメインストリーム化を果たすだろう」と述べている。
産業マテリアルとして最新テクノロジーと掛け合わされている
いっぽう、PCMagは「今後注目な熱い大麻テック企業21社」という特集を組んでいる。そこには、すでに120万のユーザーを持つ大麻販売薬局向けのプラットフォームBakerや、大麻消費者のためのSNSであるMassRootsといった企業を紹介している。
こういったテックスタートアップが集めている資金額を見ても、マーケットの期待はよく分かる。販売薬局とブランド、そしてリテーラーを結びつけるBtoBプラットフォームのLeafLinkは1000万ドルの資金を調達、ベイプメーカーのPax Labsは5000万ドルを調達、といった具合だ。 扱うプロダクトは大麻だが、シリコンバレーではもはや死語とさえ言える「大麻版Amazon」や「大麻版Uber」といったタグラインもしっかりと使われている。消費者が多く存在する成長マーケットを見つければ直ぐにスタートアップが殺到するテック業界は、大麻ビジネスにおいても変わりはない。
数字を見るとこの動きも納得だ。Forbesのレポートによると、北米における合法大麻の売上は2016年の段階で67億ドル、昨年は100億ドル(Arcview Market Research調べ)にまでなっている。たった一年で30%以上の成長を見せている。今年10月にはカナダで嗜好品としての大麻消費も合法化されることもあり、今後マーケットは増々拡大するだろう。New Frontier Dataの推計によると、2019年までに大麻産業は25万5000人の職を提供し、2025年までに245億ドルにまで売上を伸ばすとの予想だ。
とは言え、Digital Trendsが指摘しているように、今後の嗜好品としての利用がどれだけの州で合法化するかに大きく影響を受けるだろう。現時点で嗜好品としては9州において合法、医療用の場合は31州において合法となっている。
アプリやガジェット、スタートアップ、投資家、さらにはハッカソンまで、他のテックビジネスと同様の拡大を着実に進めている大麻テックビジネス。今後ますますテック業界における存在感を増すことは間違いなさそうだ。
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