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5 #メインストリームカルチャー化するマリファナ

歴史に残る「ドラッグ・ソング20選」ーーマリファナをはじめ、ドラッグと関係したポップ・ソングはどんな風に時代の変化を切り取ったのか?

ARTS & SCIENCE
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ドラッグとポップ・ミュージックやロック音楽との関係というと、ここ日本ではいまだセックス・ドラッグ&ロックンロールという古のスローガンが有効だった時代のミュージシャンたちのスキャンダラスなライフスタイルを連想してしまうかもしれない。

だが、こんな風に考えてみてはどうだろう。

ポップ・ミュージックこそが社会の状況や、そのドラスティックな変化をもっともカジュアルに、かつ、もっとも瞬間的にアウトプットすることが出来るアートフォームであり続けてきた、と。リーガルであれ、イリーガルであれ、ドラッグの存在は、有史以前から大方の市井の人々にとっては何かしら険しく、不条理であり続けてきた社会や現実のダークサイドを表象すると同時に、そうした現実から少しの間だけでも逃れたいという慎ましやかな希求をも表象してきた、と。

つまり、チャック・Dの「ヒップホップは黒人コミュニティのCNNなんだ」という言葉を例に挙げるまでもなく、様々な時代、様々なコミュニティにおけるドラッグと関係したポップ・ソングは、その時代に起こった急激な変化を誰よりも最初に世の中全体に知らすべく、炭鉱のカナリアの叫び声として機能してきた、と。

要するに、何かしらドラッグと関連したポップ・ソングの歴史を紐解くこととは、それぞれの時代の社会やその価値観の変化を知ることでもある。

思い出してみてほしい。現在ではイリーガル認定されているLSDにしろ、エクスタシー(MDMA)にしろ、当初は医療用に開発されたリーガル・ドラッグだった。と同時に、北米を中心とした現在のポップ・ミュージックの世界でもっとも話題に上っているドラッグの大半は、昨年若き白人ラッパー、リル・ピープを死に至らしめたザナックスを筆頭に、リーガルな形で処方された抗うつ剤であり、マイケル・ジャクソンやプリンスを死に至らしめたと噂されているオピオイドもまた医療用に処方されたリーガルなドラッグだ。

そもそもある特定の時代に個々のコミュニティの法律があるひとつのドラッグをリーガルなものとして認めるか否かは、アメリカの禁酒時代を例に挙げるまでもなく、それぞれの時代、それぞれのコミュニティや国家における政治と経済に左右される極めて恣意的なものだ。そうした法規制の判断が、どんな時代も常に変化し続ける社会や、それに翻弄される市井の人々の生活の変化のスピードに追いつくことはこれから先もないだろう。ドラッグにしろ街の治安にしろ、法による闇雲な規制は、社会の暗部がそこからの抜け道を必死に模索することを加速させ、そのことがさらなる多くの犯罪と悲劇を生み出してきたことは歴史が証明する通り。

だからこそ、そうした社会の変化を恐れて、偏見によって蓋をすることで安心するのではなく、文化やアートを通して、まずその実相について理解することが先決だろう。

ここ日本ではいまだ「麻薬」と呼ばれるマリファナが、医療面からもビジネス面からも世界的に見直しが図られている現在だからこそ、今一度、「ドラッグ=スキャンダラスなライフスタイルにおける悪行」といった偏見を超えた場所から、ポップ・ソングとドラッグの関係を通して、ここ半世紀における社会と価値観の変遷に思いを馳せて欲しい。以下の20のポップ・ソングは、社会やそこに暮らす人々の価値観が大きく舵を取った時代の変化を克明に記した、歴史を知るためのランドマークなのだ。カルチャーとは、アートとは、その時々の時代に歴史を進化させる触媒として機能すると同時に、今へと至る歴史を雄弁に語る証人でもある。

本企画の選曲と執筆を依頼したのは、言わずと知れた日本を代表するロック・フォトグラファーであり、ドラッグとポップ・ミュージックの関係とその重要性を、時にユーモアを交えながら、ドライかつ的確に論じ続けてきた久保憲司。以下の記事を、これまでの歴史を知るために役立てて欲しい。そして、これから先の時代の変化に対処するためのヒントとして活用してもらえれば幸いだ。(田中宗一郎)


1位 The Beatles / Day Tripper(1965)

She was a day tripper

One way ticket, yeah

ビートルズのドラッグ・ソングの代表と言えば“ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンド”だが、あっちはLSDというより、ジョン・レノンが感じたヘロインの心地よさと不安定な感覚が生んだ名曲。なので、ジョンとジョージ・ハリソンの初めてのLSD体験から生まれたであろう名曲を1位に選びたい。

それがどういう体験だったかというと、乱交パーティーをしたかった歯医者さんに、黙ってLSDを盛られてしまったというもの。「お前ら、どうせディ・トリッパーなんだろ、俺たちはロックンローラーだぞ、遊びじゃないんだぞ」という歌詞に込められた皮肉から、ジョンの怒りがうかがえる。でも、ここからドラッグとは切っても切り離せないビートルズの大冒険が始まったのだ。


2位 Soft Cell / Memorabilia(1981)

Everywhere I go

I take a little piece of you

LSDが大きな影響を与えたサマー・オブ・ラブは67年に始まって、69年のオルタモント(フェスで人が殺される事件が起きた)で終わるという短い運命だった(LSDはスティーブ・ジョヴズに影響を与えたりもしたので、その革命は今も続いていると言えなくないが)。でも、MDMA(通称、エクスタシー)が引き金を引いたセカンド・サマー・オブ・ラブは88年に始まり、ミレニアムまで続いた。1999年のラブ・パレードには150万人が集まっている。サマー・オブ・ラブの象徴であるウッドストックの3倍、ワイト島の2倍。とんでもないムーブメントだったけど、それに先駆け、誰よりも早くMDMAをやって録音されたのがこの曲。しかも、それがアシッド・ハウスと同時期というのがすごい。81年ですよ。


3位 The Clash / (White Man) in Hammersmith Palais(1977)

I'm the all night drug-prowling wolf

Who looks so sick in the sun

I'm the white man in the Palais

初めてロンドンに行った時、ハマースミス・パレーがコンサート会場だったということに気づいた。平日は、ギャング・オブ・フォーとかキリング・ジョークとか、当時勢いのあったポスト・パンク・バンドが観れる千人規模のライブ・ハウスだった。だが、金曜日と土曜日の深夜は、この曲で歌われているように、フォー・トップスがかかるようなチャラいディスコになる。それを見て僕は、ジョー・ストラマーはUKレゲエのトップ・アーティスト、ケン・ブースを観に行ったつもりが、間違ってそのチャラいディスコの時間に行ったんだと思った。それくらいジョーは飛んでいたんだと思う。「ウワー、ジャマイカからの最新アーティスト、デリンジャーにこんなに人が集まっている!革命が起こせるぜ!」と思ったのも束の間、酔いが覚めてくると、ダサいチャラチャラした格好でチンタラ踊る客ばかり、何も変わっていないことに気づく。「あっ、俺、間違った日に来ちゃったんだ。俺は幻覚を見たんだ」とフロアーに座り込む。「みんな、俺を笑うがいい。俺はただのぶっ飛んだ白人。今日は俺のことをほっといてくれ」と泣き叫んでこの歌は終わる。まさに小説のような歌。


4位 The Ramones / Now I Wanna Sniff Some Glue(1976)

Now I want to sniff some glue

All the kids want to sniff some glue

Glueとはシンナーのこと。ロック・アーティストもシンナー吸うのか、とびっくりした。オアシスのリアム・ギャラガーも百円ライターのガスを吸っていて、びっくりしたけど。僕はあまり人に「何々しない方がいいよ」というのを言わないタイプなんだけど、さすがにこの時は「体に悪いから、絶対やめ」と言った。ジミ・ヘンドリックスのドキュメンタリーを見たら、ジミヘンもシンナー吸ってて、この時もびっくりしたな。あの神様がシンナー吸ったら、あかんやろ。ヤンキーかと思った。みんな貧しい時はどんなものでもいいから頼って飛びたいのだろう。

この曲の意味は、「パンクは負け犬」ということだろう。マリファナ、コケイン、ヘロイン、そんな高級なものは俺たち吸えないぞ、という歌。のちにイギリスの超重要パンク・ファンジンの名前にもなった。ジョーイ・ラモーンとディ・ディーは肉体労働しながら昼休みにシンナーを吸い、48丁目の楽器街でギターを見て、スターになることを夢みていた。いい話やん。いや、もし僕がその場にいたら、「体に悪いから止めとき」と言ったと思う。


5位 Bob Dylan / Mr Tambourine Man(1965)

Take me on a trip upon your magic swirlin' ship

My senses have been stripped

I'm ready for to fade

Into my own parade

1964年のニュー・ポート・フェスティバルで、ボブ・ディランがギター一本を抱えてこの曲を歌う有名な映像がある。ボブ・ディランもそうだし、お客さんも全員真面目な学生さんみたい。でも、この時、ボブ・ディランはLSDを知っていた。なぜそんなことがわかるかというと、この歌がそういう歌だから。この歌はたぶん、ジュディ・コリンズの家でのアシッド・パーティーの模様を歌ったものだろう。ニュー・ポート・フェスティバルで、ディランはこの歌を学生みたいに歌っているけど、本音は「お前ら、LSD知らんやろ」と完全に上から目線だったと思う。ボブ・ディラン、やらしい奴め。いつもあの黒いサングラスの向こうの目は冷ややかに笑っている。これからすごいことが起こるんだぞ、とボブ・ディランはすでに予感している。そして、この歌の通り、3年後にはみんなアシッドをやって、髪を伸ばし、上半身裸でウッドストックに集まるのだ。


6位 The Stone Roses / She Bangs the Drums(1989)

Kiss me where the sun don't shine

The past was yours

But the future's mine

You're all out of time

ボブ・ディランの“ミスター・タンブリンマン”と対になった曲。歌詞を読めば、イアン・ブラウンが“ミスター・タンブリンマン”の歌詞を下敷きにしているな、と思えるところが幾つもある。ただ、“ミスター・タンブリンマン”はアシッド・パーティーだったが、こちらはレイブの光景を歌にしている。タンブリンマンもDJだったが(ディランはタンブリマンに「タンブリン叩いてよ」なんてお願いしていない、「なんか曲をかけて」とお願いしているのだ)、イアン・ブラウンはDJが新しいレコードに針を落とした時に世界が動き出すことを確信する。ディランの予言も、イアン・ブラウンの予言も偶然だと思うが、世の中は彼らの予言の通り、革命が起こった。LSDやっても、エクスタシーやっても、世の中が変わっちゃうと思い込んでしまうから、当たり前のことかもしれないけど。


7位 Primal Scream / Higher Than The Sun(1991)

I live just for today

I don't care about tomorrow

I'm higher than the sun

Higher than the sun

ピンク・フロイドの『ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン』を、『狂気』と訳したのは天才だと思う。月の裏側とは暗闇で何も見えないのだから、それが見える人は気が狂っている人。ロジャー・ウォーターズが『狂気』を作る時のテーマは、人間にとって恐怖とは何なのか、ということだった。「闇って怖いよね」という話だったと思うのだが、見事に気が狂ったシド・バレットのことともリンクしてしまった。シド・バレットは LSDの犠牲者の一人だ。

そういう暗い話は置いといて、「太陽よりも高く」というこの曲のタイトルも、どれだけ飛んでいるかを一発で表している。これと同じようなタイトルを持つのは、バレアリック・クラシックだったウォーター・ボーイズの“ザ・ホール・オブ・ザ・ムーン”。「君は月を全部見た」というフレーズに、「俺も同じくらい飛んでいるで」とイビサで僕はみんなと狂喜乱舞した――というのは嘘で、ポール・オークンフォールドが自分のパーティー、ランド・オブ・オズでかけるのを聴いて、「あっ、そういう意味か」と気づいたのだった。


8位 The Streets / Blinded by the Lights(2004)

I'm gonna do another I think, Yeah, one more, these are shit

改めて振り返ると、数々のドラッグ・ソングの名曲があってびっくりした。それらの曲の歌詞をチェックすると、皆さん確信犯ですごい。今まで挙げた中だと、ドラッグに否定的なのは“ディ・トリッパー”くらい。まあ、ジョン・レノンはLSDやっても、“レイン”と歌った人だから。普通は“グッド・ディ・サンシャイン”みたいな感覚になると思うんだけど。

この原稿を書き始める時、どのドラッグをやったらこんな曲に聴こえるのか、ということを書こうかなと思ったが、それだと4パターンくらいにしかならないのでやめた。そういうことで、ここまでは時代を変えたドラッグ・ソングを選んでいる。

でも、この曲は違って、エクスタシーをやった時の疑似体験が出来るということで選んだ。この曲は、はじめはエクスタシーが効かなくてイライラしている感じ。でも、一個追加したら、すごく効いてきて、「ヤバい、バッド・トリップだ。助けて」と気持ち悪くなる。で、そこからだんだんと「ウワッー、最高~~~~~」となってくる。その実況中継をマイク・スキナーさんがやってくれている。疑似エクスタシーをお楽しみあれ。


9位 The Velvet Underground / Heroin(1967)

When I put a spike into my vein

I feel just like Jesus' son

次は、絶対手を出してはいけないドラッグを疑似体験させてくれる曲。「文学の世界ではゲイ、ドラッグ、SMなどのことをとりあげているのに、ロックの世界はいまだに“アイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド”とか、どんだけ遅れているんだ」と嘆いてヴェルベッド・アンダーグラウンドを始めたルー・リード。僕はずっとロック界では一番インテリだと思っていたが、この“ヘロイン”のリズムが速くなったり、遅くなったりするのは、ヘロインを打った時に起こるラッシュの感じを再現してるんだと気づいて、ずっこけた。「静脈に注射を打った時、俺は神様の子どもになる」という歌の通りなんだけど、それを音にしたらどうなるか、ということ。静脈からヘロインが入って、心臓に流れ、そこから全身に回る感覚をお楽しみください。


10位 Madonna / Ray of Light(1998)

Video: Warner Bros. Records/YouTube

I feel like I just got home

Quicker than a ray of light

絶対やってはいけないドラッグ、ヘロインが出たので、ヘロイン以上に危険なドラッグ、ケタミンについての歌を。マドンナの『レイ・オブ・ライト』は、マドンナのケタミン体験から生まれた傑作。「イギリスはいつまでエクスタシーやっているの、NYはケタミンよ」とインタビューで言ってたのはダメだろうと思ったけど。十年くらい前に(もっと前だったかな)、クラブなどで突然人が倒れて亡くなったりしていたのは、ケタミンによる悲劇だった。だから、皆さんもケタミンには気をつけてください。

ザ・フーのピート・タウンゼントが飛行機に乗った時に、きついLSDをやって体が動かせなくなり、幽体離脱を体験したという話がある。それもたぶん、LSDではなく、ケタミンだったと思う。その体が動かせなくなった体験から『トミー』のアイデアが浮かんだそうなので、ケタミンもそんなに悪くない。いやいや、ダメです。『トミー』やこの曲の、神を見たような恍惚感だけで想像してください。


11位 The Weekend / The Hills(2015)

Video: The Weekend/YouTube

I only love it when you touch me, not feel me

When I'm fucked up, that's the real me, babe

裏マイケル・ジャクソンことウィークエンド。初めてウィークエンドを聴いた時は、「一体どんなことを歌っているんだろう? カナダ人だし、たいしたこと歌ってないんだろう」と思ってたら、歌がほとんどドラッグ、疎外感、恋についてで、びっくりした。あんな可愛い顔して。メロディは見事にマイケル・ジャクソンをパクっているけど、本当にダークなマイケル・ジャクソンなんですね。マイケルみたいに世界平和とか歌わなくっていいんすか。でも、これが今の感じなんだろう。ウィークエンドを好きな女子は腐女子ということなんだろうか。ロスのガラス張りの高級住宅で、一人ポツンとコークをやっている空虚さに、萌えなくもない。僕は萌えてしまってますが。


12位 The Beach Boys / Good Vibration(1966)

When I look in her eyes

She goes with me to a blossom world

今のヒップホップ、R&Bを続けて紹介しようと思ったが、全部ドープで沈んでいっちゃいそうなので、ここらで無垢な時代に戻したいと思う。マイケル、プリンスを死に追いやり、カニエ・ウェストの精神を壊したオピオイドが、今のアメリカのシーンのドヨーンとした感じを生んでいるような気がする。無垢な時代はいつまでも続かないのだろう。やがてダークになっていくのだ。

60年代の無垢な時代にLSDが生んだ傑作といえば、この曲だろう。LSDをやっていなくても、天にも昇るような気持ちにさせてくれる。この後、ブライアン・ウィルソンはLSDをやった時の感じをなんとか音に込められないかと、スタジオに砂を敷いたり、テントを張ったり、野菜をぶちまけたりしながら、悪戦苦闘を続けることとなる。やっぱり無垢な時代はいつまでも続かないのだ。


13位 Pink Floyd / Comfortably Numb(1979)

The child is grown

The dream is gone

I have become comfortably numb

ドラッグ=サイケデリックということなら、やっぱりピンク・フロイドだ。“インターステラ・オーヴァードライヴ”なんかのシド・バレッド時代のフロイドを入れないといけないと思うが(サイケデリックのルーツであり、ポスト・ロックの原点みたいだし)、最強のドラッグ・ソングということなら、これに敵うことなし。80年代ロックの頂点でもある。アシッド・ハウス前夜、ドラッグをやって最高の気分を味わいたければ、フロイドのコンサートに行くしかなかった。グレイトフル・テッド!? そんなの何十万光年も後ろにブッ飛ばしてた。まっ、デッドはヨーロッパに来なかったし。一回くらいは来たかな?そこは不確かだが、とにかく、当時はLSDをやってフロイドのコンサートに行くが最高のお楽しみだった。彼らのコンサートの演出では、飛行機は落ちるし、ピンクのブタは飛ぶし、壁は壊れるし、丸い照明はとんでもなく輝いている。そして、そんな状況でこの曲をやられると、それは完全に「死」だった。シド・バレッド時代のフロイドが無垢だとすると、これは大人になった挫折感、もう全てを知ってしまった恐怖だ。80年代のロックはそこから始まっている。今もそうだけど。たまに、「そんなの忘れて、パーティー」とか、「ぶち壊せ」とか、そういう音楽が生まれるわけだが、基本的にはそのループの中にいるわけだ。そして、それを気持ちいいと思うしかない、ということをこの曲では歌っている。


14位 The Libertines / Can't Stand Me Now(2014)

you shut me up and blamed it on the brown

ドット・バブルの喧騒のおこぼれをもらいながらも、クソッタレと中指を立てながらゼロ年代初頭のNYに登場したストロークス。彼らに対抗したイギリスのバンドがリバティーンズだった。リバティーンズは、今から考えると、アンチ・キャピタリスト・ムーブメントにも入れなかった若者たちのロックンロールだった、という気がする。1%にも99%にも入れなかった若者たち。なんとか1%に成ろうとしたんだけど、結局ドラッグに溺れてしまった。昔、ジョニー・サンダースが「キース・リチャードもジャンキーじゃん」と自分を正当化しようとして、「キースは売れてからジャンキーになったんだよ」と反論されていたのを思い出す。ドラッグ中毒になったピート・ドハーティーも同じ道を歩んだと思うが、今は再々結成のお金をちゃんとスタジオに投資したりして、大人になってよかったなと思う。


15位 Amy Winehouse / Rehab(2006)

They tried to make me go to rehab

I said, "no, no, no”

エイミー・ワインハウスが今も生きてたら、どれだけ世の中が楽しかっただろう。マーク・ロンソンがこの曲のアレンジを彼女に聴かせた時、「リバティーンズみたいにしたいわけ?」と怒ったそうだが、彼女の歌はロックもソウルも全て超えていた。「ドラッグの療養施設に行くか、行かないか」というシンプルなことを歌っただけだが、この曲はそれ以上のことを語りかけてくる。こんなことが出来るのは、彼女の前にはカート・コバーンしかいなかった。カートの歌には暗さがつきまとったが、彼女の歌にはどこか明るさがあった。その明るさは女性が生むものなのか、彼女だけのものなのか、もう今となってはわからない。本当に惜しい人を亡くしたと思う。


16位 Oasis / MORNING GLORY(1995)

All your dreams are made

When you're chained to the mirror and the razor blade

「お前の夢は、コケインのラインを作っている時に生まれた」というキラー・フレーズから始まるキラー・チューン。だが、この曲はドラッグ・ソングでなく、アンチ・ドラッグ・ソングだ。サビでは「そろそろ目を覚ませ」と歌われる。

オアシスの気持ちよさは、アシッド・ハウスの高揚感をリズムではなく、ギターのディストーションで表現したことにあった。それが90年代のロック・サウンドであり、彼らを90年代ロックの王様にした。そんな彼らもセカンド・サマー・オブ・ラブは生き抜いたが、90年代半ばにはコケインの副作用で肥大したエゴに飲み込まれてしまった。リバティーンズのピート・ドハーティーとカール・バラーの二人も、オアシスのギャラガー兄弟も、本人たちは気づいていないかもしれないが、ドラッグが生むカオスに蝕まれていった。そこから生まれる危うさが彼らの音楽を面白いものにしていたのだが、その魔力はいつまでも続かないのだ。


17位 Nirvana / All Apologies(1993)

Video: nirvana/YouTube

I wish I was like you

Everything's my fault

I take all the blame

ニルヴァーナ最後のスタジオ・アルバム『イン・ユーテロ』の最後の曲。『MTV アンプラグド』の一番のハイライト。カート・コバーンの一番悲しいけど、一番美しい曲。この曲がドラッグ・ソングかどうか難しいところだが、ロックの頂点に立った男の心を癒してくれるのはヘロインしかなかった、ということはわかる。パンクにとってドラッグはヒッピーの象徴であり、アンチでなければならなかったのに、カートもまた彼が毛嫌いしたロック・スターになってしまったのだ。この曲は、そのことに対する謝罪だったのか、それとも、ただの皮肉だったのか。これもまた、いまはわからない。たくさんのロック・スターがドラッグの犠牲になった。


18位 The Doors / The Crystal Ship(1967)

Before you slip into unconsciousness

I'd like to have another kiss

世界で一番美しいドラッグ・ソング。子供の頃はなんて美しい歌だろうと思っていたが、ロック評論の権威、グリール・マーカスが「ぶっ飛んだ彼女をおいて、もう一度スピードを打つという歌」とこの曲を解説していて、「とんでもないけど、さすがわがままなジム・モリソンだな」と思うようになった。この曲のオチは、「彼女が意識を取り戻したら、また打とう」と歌われること。永遠をテーマにしているのだろう。でも、こんなだから、ルー・リードに「カルフォニアの青いバカ」と言われるのかもしれない。

ステージでも最低だったジム・モリソンだが、それを見たイギー・ポップは「何をしてもいいんだ」という啓示と受け取った。ジム・モリソン、ルー・リード、イギー・ポップと言えばドラッグバカ三兄弟だが、一人はドラッグでなくなり、一人はドラッグを止め、太極拳をやりながら穏やかな死を迎え、一番どうしようもなさそうなイギーは今も健康に生きている。ステージからダイブして、腰が曲がったままだけど。あれは治らないもんなんでしょうか?


19位 Neil Young / Down By the River(1969)

Down by the river

I shot my baby

僕が一番最初にドラッグ体験をしたのは、映画『いちご白書』だった。学生運動に巻き込まれていく主人公がマリファナを吸って、部屋の中で飛んでいる時に、バックで流れていたのがこの曲だった。こういう曲がドラッグ・ソングなんだ、と僕は初めて気づいた。でも、大人になってからこの曲が入ったCDを買って対訳を見たら、「川下で、彼女を撃った」と訳されていて、「いや、人を殺す歌じゃないだろ」とびっくりした。

たぶん、カート・コバーンもこの歌に憧れてヘロインに興味を示したのだろう。カート・コバーンの魅力はパンク思想にかぶれながらも、古いアーティストの音源にも影響されていたことだ。ニルヴァーナには古いものと新しいものが共存していた。ニール・ヤングの拙いギターが永遠と続くような感覚に、僕はドラッグを感じる。


20位 The Beatles / We Can Work it Out(1965)

You can get it wrong and still you think that it's alright.

ドラッグ・ソング1位に選んだ“ディ・トリッパー”のB面曲。LSDに感動したジョン・レノンが、一番のパートナーであるポール・マッカートニーに、「LSDをやろう」と勧めてきたことへのポールの回答が歌われていると思う。

「君は悪いことだけど、大丈夫だという。でも、それをやることで僕らが築いてきたことが一晩で台無しになってしまうかもしれないんだよ。いつまで、こんな話をしないといけないんだい? LSD無しでもやっていけるよ。ストレートでいよう。それとも、おやすみと言うのかい?」

すごいバンドである。ドラッグ・ソングとアンチ・ドラッグ・ソングを一つのシングルに入れる彼らの民主主義、かっこよすぎる。まあ、ここまでLSDに否定的だったポールが、この後、すぐにアンダーグランド新聞に、「僕はLSDやったことあるよ」と公表したものだから、ジョンとジョージは「お前~~~」ってブチ切れるんですが。

Image: brizzle born and bred on Visual hunt / CC BY-NC
Source: YouTube(1, 2, 3

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