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7 #メインストリームカルチャー化するマリファナ

マリファナを語るべきは国家か州か。過渡期に終止符を打とうとするドナルド・トランプ時代

NEW INDUSTRY
コントリビューター佐久間裕美子
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マリファナ業界が形成され、ピーター・ティールをはじめとするIT長者たちが投資をしている、大麻アプリが登場している、大麻メーカーがナスダックに市場に株式上場した・・・アメリカの「マリファナ・バブル」の様相が日本で少しずつ報道されるようになってきた。が、これまでタブー視され、あまり多くが語られなかったことから、今、「なぜ急に?」と驚いている向きも多いだろう。そこで、簡単に歴史的な経緯を振り返っておきたい。

国と州の狭間に生じた、認識と対応のズレ

そもそもアメリカでは1930年代に、連邦政府の手によって違法物質指定されて以来、マリファナは厳しく取り締まられてきたが、1973年にオレゴン州が少量のマリファナの所持や吸引を軽犯罪扱いにして、逮捕のかわりに罰金を徴収する「非犯罪化」に踏み切り、これに続く州が出てきたことで、連邦法と州のズレが生じるようになった。

特に1996年にカリフォルニア州が、州としてマリファナの医療使用を認めてからは、このズレがさらに拡大した。その背景には、1980年代から90年代にかけて猛威を奮ったHIV/AIDSの患者たちから、痛み止め、そして薬の副作用の食欲減退を抑える存在として、マリファナの医療使用の許可を求める声が上がったことがあった。

これをきっかけにマリファナにはAIDSやガンといった病気に苦しむ患者たちの苦しみを軽減する効果があることが認識されるようになったことが、マリファナに対する世論のシフトのひとつの要因になった。以来、1998年にオレゴン、アラスカ、ワシントンの3州が医療マリファナを合法化し、2012年までの間に13州がこれに続いた。

こうしてマリファナの医療効果が認識されると同時に、マリファナ=危険ドラッグという考え方は徐々に薄れていった。世論の変化の推移を理解するためには、大統領や大統領候補たちの態度を見ていくとわかりやすい。カリフォルニアでマリファナの医療使用が合法化された当時、大統領だったビル・クリントンは、近代でマリファナを使用した経験を認めて選出された初めての大統領だった。

「ドラッグをやったことはありますか?」「マリファナを吸ったことはありますか?」アメリカの大統領選に出馬すると、必ず聞かれる質問である。

「イギリスにいたとき、1度か2度、マリファナで実験した。好きじゃなかったし、インヘール(吸い込み)しなかった。それからは二度とトライしなかった」

1992年の大統領選挙のときの、ビル・クリントンの答えである。

ジョージ・W・ブッシュは、候補者だった頃には、マリファナ吸引の過去についての質問には答えることをあくまで拒否した。が、その後出てきた電話の会話の録音や本人の発言から、マリファナを含む、過去のドラッグ体験があったのだろうと広く信じられている。

2004年には、民主党の予備選挙で、こんな瞬間があった。CNNが放映した予備選前の討論会で、人気アンカーのアンダーソン・クーパーがこんな質問をしたときのことだ。

「このなかで、過去のマリファナ使用を認めるつもりがあるのは誰ですか?」

イエスと答えたのは、最終的に予備選挙の勝者となったジョン・ケリー上院議員、ジョン・エドワーズ上院議員、バーモント州のハワード・ディーン知事(肩書はいずれも当時)など。

ジョー・リーバーマン上院議員は、苦笑いしながら「僕は、党内討論会で不人気な答えをいうことで知られている。マリファナを使ったことはない。アイム・ソーリー」と答えた。

2008年に大統領選挙に勝利したバラク・オバマ元大統領にいたっては、選挙に立候補する以前の2006年に公開インタビューの映像が残っている。

「子供の頃は、吸い込んでいた。それも頻繁に

「マリファナを手にしたけれど、吸い込まなかった」というクリントンの回答を皮肉ったオバマの言葉選びに、聴衆がどっと湧いた。

娯楽用大麻の解禁と政府から発せられたコール・メモ

こうした変化は世論の推移を反映していた。とはいえ、連邦法ではマリファナは違法物質であることには変わりはない。「カリフォルニアが医療使用を合法化した後も、クリントン大統領時代、ジョージ・W・ブッシュ・ジュニア大統領時代(2000年ー2009年)には、合法州で行なわれるマリファナ栽培を取り締まるという「小競り合い」がたびたび起きていた。

これが変わったのは、2012年にワシントン州とコロラド州が、州として初めてマリファナを娯楽として使用する法案を通過させてからだ。コロラドの合法化法案には、マリファナに課税することで得られる税収を公立学校の予算にあてること、ワシントン州の法案には、医療、ドラッグ中毒者の治療と教育、ワシントン大学およびワシントン州立大学で行われるマリファナ関連の研究にあてられることが含められていた。マリファナをタバコやアルコールのように規制することで未成年をマリファナから守り、税収を生産性のある方法に使うという考え方である。

これを受けて、オバマ政権は、連邦のマリファナ政策を大きくシフトした。2013年に、司法省のジェームス・コール副長官が、各州の検事総長にメモを送り、州法に則ってマリファナを合法化し、効果的な規制の体制を整えた州については、基本的に連邦の取締りの対象としない方針であることを伝えた。この文書は「コール・メモ」として、アメリカのマリファナ史に大きな転換点として受け止められた。連邦政府が初めて、マリファナ政策は各州が決めるべきこととの姿勢を見せたからだ。

世論も合法化を支持している。世論調査を専門とするピュー・リサーチ・センターが1969年から行っている調査では、マリファナに対する世論は2000年代に入ってからどんどん好転し、2017年には、国民の61%がマリファナを合法化するべきとの意見を表明している。

コロラドとワシントンの「成功」を見て、次々と娯楽マリファナを合法化する州が登場し、「マリファナ業界」が形成さた。巨額の資金が流れ込むバブル状態になったのも、こういう流れがあったからだ。

ところが2016年に、共和党のトランプ候補が大統領に選出され、保守のタカ派として知られるアラバマ出身のジェフ・セッションズを司法長官に任命すると、再び連邦政府が州に介入するのではないかとの危惧が生まれた。

とはいえ、実際に政権が発足して以降、トランプ政権がオバマ時代の大シフトを逆行させることを示唆する動きはほとんどない。それどころかトランプ大統領は、コロラド州との政治取引で、司法省の人事をめぐる議会での賛成票を引き換えに、州のマリファナ政策に手を出さない意向を示したのである。連邦議会でも、マリファナは州ごとに対応するべき問題とのコンセンサスが形成されつつある。

この6月には、マサチューセッツのエリザベス・ウォレン上院議員(民主党)とコロラドのコリー・ガードナー上院議員(共和党)が、マリファナを違法物質と定める連邦の規制薬物法から、州から免許を受けて運営するマリファナ関連会社を免除するthe States Actという法案を提案し、これから審議が行われることになっている。トランプ大統領はこれを「おそらく(Probably)」支持する意向を示している。40年以上にわたって続いてきた連邦と州の「ズレ」がついに決着する時がくるのだろうか。



Image: stock_photo_world/Shutterstock.com
Souce: TIME, Fortune, Pew Research Center

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