「αU spring week 2023」で感じた次世代クリエイターとKDDIが目指す場所
DIGITAL CULTURE本来、地域性と無縁なはずのVRの特性を逆手にとった「バーチャル渋谷」のプロジェクト以来、KDDI〜auの動向を、ギズモードというテックメディアで追い続けている。
特にKDDI三浦伊知郎氏との対談、Psychic VR Labの山口征浩CEOを交えた同じくKDDIの中馬和彦氏との鼎談を通して、KDDIがここ数年のメタバースの流れの中で中心的な役割を果たしていることを知った。
自分自身の周囲にいるVRアーティストたちの話を聞いても、KDDIという大企業からのサポートへの期待感は並々ならぬものがあると感じている。
しかもここにきて、chatGPTの爆発的な進化と普及を中心としたAIが引き起こすパラダイムシフトにより、かつては限られたプレイヤーしかいなかったテック業界にも、大きな地殻変動が起こりつつある。
そんな中、KDDIの施策がメタバースとWeb3サービスで最終フェーズに入ったことを告げる「αU(アルファユー)」をローンチした。このサービスとイベントには、「αU Wallet(アルファユーウォレット)」という暗号資産ウォレットが大きな役割を果たしている。
このウォレットが画期的なのは、法定通貨である日本円でNFTを購入できることだ。そして購入したNFTは自動的にpolygon(ポリゴン)ブロックチェーンに対応し管理され、MATIC(マティック※polygonブロックチェーンで流通する暗号資産の呼称)の送金・入金も可能となる。さらに今年上半期中にはイーサリアムなど、複数のブロックチェーンへ対応予定とのことだ。
ここ数年間、多くの国内事業者が「Web3」に参入してきた。一方、新興業界ゆえのボラティリティーの高さから多くの事業者はプライベートチェーンと呼ばれる、いわゆるクローズドな(≒自社内で管理可能な)チェーンでの参画や一部の技術提供にとどまっていた。今回、同社がPolygonをはじめ、オープンチェーンとの接続を前提にローンチする意義は大きいと言えるだろう。
そんな、KDDI「αU(アルファユー)」ローンチイベントからの流れを総括する。
αU spring week 2023(3月8日〜12日)
次世代クリエイターたちとコラボレーションした特別展示「αU apartment」を渋谷で開催。
また、メタバースでは「αU metaverse」や「αU live」といったバーチャル空間で、展示だけでなくコラボレーションしたクリエイターによるイベントも開催された。
【Hz-Shibuya開催(リアルイベント)】
◆3月8日 とうあ「とうあの"何者"ガタリ」
初のフォトブック「何者」で話題のとうあが、初公開のオフショット動画を観ながら、撮影の裏話や20歳のリアルな気持ちを語り尽くすトークショーと来場者を対象とした「何者」フォトコンテストを開催。「違和感」をテーマにしたフォトブックは、3日間で20パターンを撮影するというハードスケジュールで行われたそうで、バスの車内でのファッションショーやごみ処理場での撮影だけでなく、水中でメイクをしたり、泥をかぶったりなど、とうあ自身も「自分史上、一番過酷だった」と振り返った。
今回はリアル会場とメタバースの両方でフォトブックの世界観を体感できる「マイルーム」を展示。トーク中には実際に「αU metaverse」内に入ってルームツアーを敢行。ルームの中を散策しながら、作品ひとつひとつを解説した。
◆3月9日 吉田凜音「RINNEEE presents BOOOOO!!! x World」
ラップで登場した吉田凜音は「アーティスト名を変えてRINNEEE(リンネ)でやっていくことになりました」と報告。続けて、新曲「Shut up」と「文句BOO」を含む6曲を披露したライブパフォーマンス。
Momo Koyamaや、新曲「文句BOO」をプロデュースしたいつかが飛び入りゲスト出演。若き才能同士のコラボレーションに、喝采を浴びた。
◆3月10日 ロイ「ロイPresents 春のロイ祭り」
スマホ片手に登場したロイは、TikTokでのライブ同時中継。実は、初のリアルライブ開催となるロイを目当てに、会場には50人近くのファンが集結。新曲「わらびもち」をリリースした“プレイバック”期間中であるロイは、「わらびもち」以外に「KNOCK KNOCK」「チキンマサラにナンつけたい」など、独自の世界観を持つ楽曲を披露。
ミーグリタイムでは、ロイ自身が考案したプレゼント「りんご飴」や「ドリンク」のお渡しと、フォトブースでのツーショット撮影タイムを開催した。
◆3月11日 Miyu「Miyu Presents Step into the Metaverse」
水曜日のカンパネラの人気楽曲「エジソン」のミュージックビデオで“足ダンス”を披露した世界的トップダンサーのMiyuが登場。今回は座るだけでミュージックビデオのような撮影ができる「エジソンの部屋」が特別展示された。
“足ダンス”のワークショップでは、足の動きをレクチャー。さらにステージ上でMiyuと一緒に踊れる“足ダンス”タイムは、多くのファンが立候補して会場全体をヒートアップさせていた。
◆3月12日 bala「bala Presents balallel-party」
「αU spring week 2023」のラストを飾ったのは、3月8日に1stシングル「barla」をリリースしたbalaの4人。今回、balaはHz-Shibuyaでのマイルーム展示、リアルとバーチャルでもイベントを開催。マイルームについて「もともとKANOちゃんが3Dで作って、そこから着想を得て完成しました」と解説。
これからの活躍が期待されるbalaは、「これからも、コンセプトがあるイベントをどんどんやっていきたい!」と意気込んでラストを締め括った。
【αU metaverse開催(バーチャルイベント)】
◆3月10日 獅子神レオナ virtual reality mini live & ミーグリ
「αU metaverse」内に新設されたライブ会場に獅子神レオナが登場。「Brand New Days!」「ナンセンス・ワード」の2曲をバーチャルで披露した。会場内は曲に合わせてレーザーなどの照明演出がされ、参加しているファンもサイリウム片手に盛り上げた。ラストは「頑張れ頑張れ超頑張れ」でライブは終了。
ミーグリでは、ファンが待機しているルームに獅子神レオナが登場すると「かわいい~!」とリアルのミーグリと変わらない反響がおきた。本人との記念撮影では、「貴重な体験!」と感激している様子だった。
◆3月11日 bala「balallel-meta-Party」
balaのクルーメンバーでもあるKANOがデザインしたキャラクター「BI」がアバターとなってステージに登場。balaメンバーの動きにリンクしたパフォーマンスを披露した。
「はじめまして。balaです。balaは、それぞれ違った感性や個性を持った4人が集まって、個性大爆発! 化学反応を起こしていこうっていうクルーです」と自己紹介。デビュー曲「barla」を披露すると参加したファンは一緒にダンスしたり、サイリウムを振ったりなどで盛り上がった。
◆3月12日 水曜日のカンパネラ virtual reality mini live & ミーグリ
ライブパフォーマンスでは、「ティンカーベル」や「エジソン」「バッキンガム」などの人気楽曲をバーチャルで披露した。
今回、初めてアバターになったボーカルの詩羽は「とても可愛く作ってもらいました」とかなりの満足度。楽曲に合わせて、歌詞が空間に浮かび上がったり、ステージに絵本風のセットが突然登場したりと、バンドの世界観を反映させたバーチャルならではの演出にも唸らされた。
ミーグリでは、詩羽ファンがルームに大集合。「リアルではできない演出ができて良かった」とバーチャルライブの感想を語りあった。このようなミーグリは初めてという詩羽とファンは、リアクションを送りあったり、ダンスモーションを使って一緒にダンスしたりと、特別な時間を楽しんでいた。
【その他のイベントとauのサービスについて】
αU apartment
「もう、ひとつの世界。」をテーマに作られた一軒のアパート「αU apartment」が渋谷に登場。住人には、新時代を作るクリエイターたちが集結し、個性溢れるルームの展示や、5日間連続でガーデンパーティを開催した。
MY ROOM@Hz Shibuya
◆BE:FIRST 「Boom Boom Back Touch & Try 」
新曲「Boom Boom Back」のαU liveコンテンツを体験できるルーム。BE:FIRSTメンバーが渋谷の交差点をジャックした、世界でここでしか見られないパフォーマンスに注目。
タッチパネル操作で縦横無尽な視点でライブが楽しめる体験を提供した。
◆花譜 「花譜観測所」
バーチャルシンガー花譜の軌跡をたどる花譜観測所。
花譜2ndワンマンライブ「不可解弐Q1」から「糸」がαU LIVEで自分の好きな角度で鑑賞できるように。渋谷ZERO GATEで3月31日まで開催中のαU research × KAMITUBAKI STUDIOによる展覧会「prompt αU」では、さらにスペシャルなαU LIVE体験を提供。
◆水曜日のカンパネラ 「エジソンの部屋」
自身の大ヒット曲「エジソン」のミュージックビデオの“足ダンス”シーンを再現。ルームにある机に座るだけで、足ダンスを踊っているような動画が撮影可能。
◆とうあ 「何者」
唯一無二の個性で、10代を中心に絶大な人気を誇るとうあ。そんなとうあの1stフォトブック「何者」の表紙を完全再現。ルームの中央には、一緒に写真が撮れる等身大とうあが登場。
◆bala 「balallel-world」
個性溢れる4人のガールズ・アーティスト、クリエイターが集結したコレクティブbala。メンバーそれぞれが持つ多様な世界線をつないだ“balallel-world" をルーム内に表現。リメイクやDIYなどを盛り込んだ、新世代のギャルを体現する世界にご注目。彼女たちの楽曲を体験できる特別展示。
Exhibition@Hz Shibuya
◆αU atelier
Z世代が注目するイラストレーター、雪下まゆ・ヨシフクホノカ・バウエルジゼル愛華の3人による描き下ろし作品展示。αUのコンセプトである「もう、ひとつの世界。」をテーマに、リアルとバーチャルがひとつになった日常を、個性豊かなイラストで表現します。
すべての作品はNFTとして購入できるほか、ここだけの限定グッズも販売。
Exhibition@TRUNK
◆雪下まゆ αU presents MAYU YUKISHITA EXHIBITION 「もう、ひとつの世界。」展
Z世代を牽引するアーティストの雪下まゆが、αUのコンセプトビジュアルとして描き下ろした3作品を展示。αUのコンセプト「もう、ひとつの世界。」を、リアルとバーチャルがひとつになった日常を生きる若者の姿を通して表現した。
αU place
αU placeでは、アパレル店舗をバーチャル空間に再現。顧客はアバターになって来店することができ、実際のアパレルショップ店員とビデオ通話などで双方向にコミュニケーションすることができる。
今回のイベントでは、渋谷パルコ5Fのアパレル店舗「Lui‘s/EX/store(ルイスイーエックスストア)」をバーチャル空間に再現。
αU live
αU liveは、360度自由視点で音楽ライブが楽しめるサービス。今夏でのサービス提供が予定されており、今回のイベントでは正式提供に先駆けて、「BE:FIRST」「花譜」「bala」とコラボレーションした。
au Design project発のNFTストア「αU dotadp」オープン
ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品にもなっているINFOBAR(深澤直人によるデザイン)や前衛芸術家・草間彌生氏とコラボした携帯電話など、数々の名作を生み出してきたau Design project。2023年10月に初代INFOBAR発売から20周年を迎えるメモリアルイヤーに、au Design project発のNFTストア「αU dotadp(アルファユー ドットエーディピー)」をオープンした。
デザイン、アート分野に特化したNFTを取り扱い、Web3/AI/メタバース時代にふさわしい新たなデザイン・アートシーンの創造を目指す。
第1弾として、初代INFOBARのプロトタイプ「info.bar」を3DCGで蘇らせたNFTコレクションや、初代INFOBARが可愛いピクセルアートになった「インフォバーフレンズ」を発売。また、Z世代から支持されるアーティスト雪下まゆ氏、ヨシフクホノカ氏、バウエルジゼル愛華氏初となるNFTコレクションをリリースした。
αU Market
「αU Market(アルファユーマーケット)」では、リアルで使える特典を備えたNFTを購入できるマーケットプレイスを提供。「αU Wallet」に接続することで、簡単に欲しいNFTを購入できる。「αU Market」では“クリエイターファースト”を掲げ、クリエイターやアーティスト、そして彼らのファンに還元することを目的に、NFT商品を多数取り揃えている。
3月7日のサービスローンチ時には、国内最大級のファッションとデザインの祭典「東京クリエイティブサロン2023」とコラボレーションを行い、Designer's NFTを販売。対象のNFT購入者には、NFTが証明となるファッションショーへの招待権や、デザイナーのNFT作品がプリントされたTシャツが手に入る特典を用意している。
デザイナーには、「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」「ヘヴン タヌディレージャ アントワープ(HEAVEN TANUDIREDJA ANTWERP)」「ケイスケ ヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」「ミューラル(MURRAL)」「スリー トレジャーズ(THREETREASURES)」「ヨウヘイオオノ(YOHEI OHNO)」など、昨今国内外で注目を集める新進気鋭のデザイナーが名を連ね、デザイナーの坂部三樹郎氏が運営するファッションの学校「me」からも、「ヤスカワ(yasukawa)」「ウォーター ブルー(Water Blue)」「ショー ムラタ(SHO MURATA)」「カデット(KADDET)」「イズモ(IZUMO)」の若き才能あふれる5ブランドが参加しNFT作品を提供するなど、「αU Market」の掲げる”クリエイターファースト”とファンへの還元というサービス理念に対する姿勢を感じることができる。
他にも渋谷エリアの飲食店と国内有数のNFTプロジェクトsoudan NFTがコラボしたNFTを販売。このNFTを対象店舗に持っていくと、NFTの購入額分の割引を受けられる。
目的と価値消失
#カルチャーはお金システムの奴隷か?
日本人が知らないカルチャー経済革命を起こすプロフェッショナルたち