日本から世界に広まった「絵文字(emoji)」は、どのように生まれたのか?
DIGITAL CULTURE絵文字(emoji)は、もともと日本のケータイ文化から生まれたものだ。今では、iOSやAndroid、Mac OS、Windowsにも標準搭載されている。2015年4月の日本の総理大臣との会談でオバマ大統領が、「日本発祥で世界的に普及した代表的な文化のひとつ」として「emoji」を挙げて感謝の意を示すほど、日本から生まれた絵文字文化は、世界中の人々のコミュニケーションに欠かせないものとなった。
では、デジタルコミュニケーションにおけるemojiは、どこから生まれたのだろうか? それは1995年頃、ポケベルに採用されていた「ハートマーク」である。ポケベルでは電話のダイヤルで「88(または89)」と入力することでハートマーク(♥)が使えた。当時の若者は(筆者もこのポケベル世代だ)、ポケベルの限られた文字数の中で、親密なコミュニケーションをする手段として、とにかくハートマークを多用したものだった。
そして、ポケベルの流行も終わろうとしていた1999年、世界で初めてケータイからインターネット通信が可能なiモードが登場。ポケベルのハートマークの事例から、iモードの開発陣は絵文字的なコミュニケーションの重要性を実感していた。

2006年、日本の携帯メールとGmailでやりとりする際に絵文字を送受信したいというニーズから、グーグル日本法人のGmailチームが、絵文字プロジェクトをスタート。そして2008年11月には、グーグルは日本の携帯電話の絵文字をUnicode(ユニコード)に加える計画を公表し、世界中に絵文字が普及するきっかけとなった。

iPhoneに絵文字が搭載されたのは、2009年の11月、iOS 2.2から。当初は日本のユーザー向けに、日本語に設定したときのみ絵文字が使えるようになった。iPhoneで絵文字を使えるようにした立役者はソフトバンクの孫正義社長だ。彼は日本のマーケットでiPhoneを販売するため、アップルに直接掛け合って絵文字を使えるように説得した。最初は日本向けのiPhoneだけの特別機能だった絵文字機能は、iOS 9では1393種もの絵文字がサポートされるまでになった。

2013年、グーグルはGoogle Hangouts向けに絵文字を発表した。当時、グーグルの絵文字デザインに協力したしたのは、広島にある総勢6名の小さなデザイン会社「IC4デザイン」だった。

デジタルコミュニケーションの歴史には、日本の絵文字文化の魂がいたるところに宿っている。そして今では、LINEに始まったスタンプコミュニケーションが、Facebookメッセンジャーなどにも採用され世界中に広まっている。
訂正(2016年9月13日9:45): HangoutやAndroidの絵文字デザインを担当したのは、グーグルの社内デザイナーです。「IC4デザイン」はGoogle Hangouts発表時に絵文字デザインに協力したデザイン会社となります。お詫びの上、訂正いたします。
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