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産業革命の地に響くライブ・コーディング・ミュージック。世界初のアルゴリズム・フェス「ALGOMECH」

DIGITAL CULTURE
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エディター高橋ミレイ
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11月12日〜19日にかけて、世界初のアルゴリズム・フェスティバル「ALGOMECH 2016が英国のシェフィールドで開催される。このイベントでは、アルゴリズムをテーマにした新たなメカニカルムーブメントに関する講演やシンポジウム、パフォーマンス、ワークショップが開催される。

開催地であるシェフィールドは、産業革命以来、英国の工業地帯として発展した。現在も金属加工業が盛んである一方で、多くの文化人を輩出してきた土地でもある。作家ブルース・チャトウィンや、ヒューマン・リーグ、Bring Me The Horizon、キャバレー・ヴォルテール、Arctic Monkeysといったミュージシャンも同地出身で、特に音楽分野ではエレクトロニック・ダンス・ミュージックを推進してきた歴史を持ち、あのWarp Recordsが生まれた街として有名だ。

「ALGOMECH 2016」で特筆するべきは、2012年から続くダンスミュージックイベント「Algorave(アルゴレイヴ)」が会場内で開催されることだ。同イベントに出演するアーティストの多くはライブコーディングにより演奏をする。パフォーマンス中のステージに投影されるコード入力画面が、このイベントをビジュアル的に特徴づけている。

「アルゴレイヴ」は、アルゴリズムとレイヴを組み合わせた造語で、シェフィールドを起爆地点にした新たなダンスミュージックのジャンルのひとつ。1990年代初頭から始まり、90年代後半のクラブカルチャーの盛り上がりに合わせ、英国を中心とするクラブで演奏されるようになった。

参加アーティストの一人、Sick Lincolnは、すでにあるアルゴリズムを組み直して作った音源を使用して作曲をする。PCM音源のシンセサイザーをベースにした音源とコーンウェイの『ライフゲーム』のようなビジュアル演出が、80年代中期のテクノポップやアンダーグラウンドなギークカルチャーを想起させる。

学生時代の彼はロボット工学を専攻し、週末には知人から借りたRoland D50で打ち込みをしていた。Roland D50はDX7以来のFM音源搭載シンセサイザーの利点を受け継ぎながら、アナログシンセサイザーのような音の合成を可能にしたPCM音源搭載の機種である。

Ritualsことダン・ハットは、これまでも実験的なビジュアルアートでさまざまな音楽イベントに参加してきた。即興「演奏」によってもたらされる幾何学的なビジュアルは、その現場でどうなるか彼自身にも予測ができないことがあるという。

Canuteは、いわゆる8Bit的なピコピコサウンドが好きな向きにお勧めしたいアーティストである。打ち込みサウンドとドラムの生演奏の組み合わせがもたらす独特な浮遊感が心地よい。

日本からライブ・コーディング・アーティストRenick Bellが参戦。えぐるようなシンセベース音の下から聴こえるどことなくオリエンタルな変則ビートによる、複雑で切れ間のない調和がさらなる即興性を誘発する。

「Algorave」は音楽イベントだが本体である「ALGOMECH 2016」では、センサー付きの電子テキスタイルについての発表や、さまざまな物を振動させて楽器にするワークショップなど、さまざまなイベントが開催される。アルゴリズムを軸に多様な分野の実験的な試みに触れられるイベントが、産業革命から約200年経った今、その中心地のひとつで開催されることの意味は大きいのではなかろうか。