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Snapchatで「写真を撮ってシェアする」ことで、私たちは本当は何をしているのか?

NEW INDUSTRY
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ライター塚本 紺
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アメリカでは絶大な人気を誇るアプリSnapchat(スナップチャット)。写真や10秒以下の動画を友人やフォロワーとシェアするアプリだが、再生すると消えてしまう特徴が若者のニーズに見事応え、爆発的に普及した。ファウンダーでCEOのエヴァン・スピーゲルはまだ26歳の青年でありながら、世界で最も若い億万長者となった(via Forbes)。

そんなSnapchatは2016年、社名をSnap Inc.と変更し、先日株式公開を申請した。上場にあたり提出された文章には次のように書かれている。

Snap Inc.はカメラ会社である。カメラを再発明することが人々の生活とコミュニケーションを改善する素晴らしいきっかけになると信じている。

Snap Inc.の定義がソーシャルメディアアプリでも、メッセージアプリの会社でもない点は非常に意義深い。「カメラ会社が生活とコミュニケーションを改善する」。大げさな文言だなと思った人も多いだろう。

しかしSnapchat初期に公開されたこのビデオを見るとそれが決して大げさではないことがわかる。

「なぜ子どもたちは見きれないほどの写真を撮る?」

video: Snapchat

これは「なぜ子どもたちが大量の写真を撮りまくるのか理解できない。撮っても見きれないくらいの数の写真を撮っている」と友人たちが言っているのを聞いて「これはSnapchatの説明として最適だ」と思ったスピーゲルが公開したものだ。

歴史的には、写真は非常に重要な記録を残すために撮られてきた。今日では、スマートフォンについているアプリによる「(インターネットに)つながっているカメラ」のおかげで、写真は人と"会話"をするために撮られている

なので、子どもたちが何百枚もの写真を撮っている場面に出くわしたら、しかもあなた自身は写真になんか撮らないだろうと思うようなものを撮ってるとしたら、それは彼らが写真を使って他のユーザーと"会話"をしているからだ。

子どもたちにとっての写真は会話」なのだというスピーゲル。

なぜこのような変化が起きているのか、彼はソーシャルメディアがデスクトップからモバイルへと移行したことが重要であると指摘する。

この変化を理解するためにはソーシャルメディアの革命について理解しないといけない。ソーシャルメディアが生まれたとき、それはデスクトップ・コンピューターがベースのサービスになっていた。当時のソーシャルメディアは「(情報を)ためていく」という考えに基づいていた。パーティで1,000枚写真を撮ったら、そのうちから100枚お気に入りの写真をアップロードする。友達はそれを見て、コメントをする。

ソーシャルメディアがデスクトップで利用されていたときの写真は、まだ昔ながらの写真と同じ目的を持っていたのだ。しかしそれは、モバイルに移行することで変わった。

しかし今は、スマートフォンが「その瞬間に表現する(instant expression)」というアイデアを強化した。それは今現在アナタがどこにいて、何を感じているか、をその瞬間にシェアするというものだ。これはアイデンティティと結びつくので非常に重要だ。というのも、アイデンティティはソーシャルメディアの核となっているものの一つだからだ。

「ためていく」という考えの下ではアイデンティティとは「私がこれまでしたすべてのこと」によって形成されていたが、「その瞬間に表現する」というアイデアはその定義を「私が今この瞬間に誰であるか」へと変えてしまった。

...と、ここまで聞いてアプリの名前を思い出してほしい。そう、「Snap(スナップ)」と「Chat(チャット)」なのだ。写真を撮って、友人とシェアする。時間がたつと写真は消えてしまう。写真を使って会話をする、に見事に特化した機能になっているのだ。まさに今この瞬間の私を表現するためのアプリだ。

Snapchatで「写真を撮ってシェアする」ことで、私たちは本当は何をしているのか?

image: Yulia Mayorova/Shutterstock

「ためていく」という考えの下では、アイデンティティとは「私がこれまでしたすべてのこと」だった。しかし「その瞬間に表現する」というアイデアは、その定義を「私が今この瞬間に誰であるか」へと変えてしまった

そして「スナップ」と「チャット」に続いてスナップチャットが追加した機能が「ストーリー」だ。これは自分が作った画像や動画を時系列で貯めることで、他のユーザーが時系列で見られるようにするというものだ。この「時系列で」というのが他のソーシャルメディアとの大きな違いだ。

ほとんどのソーシャルメディアはユーザーのビデオや写真を逆の時系列で表示してしまう。最初を見る前に終わりを先に見てしまう。でもSnapchatでは、例えば誕生日パーティの写真や動画を見たければ、始まり、真ん中、終わり、という順番で見ることができるのだ。こっちのほうが人間にとってより馴染みがある順番だ。長い歴史の中で、人間は常にその順番で物語(ストーリー)を語ってきたからだ。

Snapchatを子どもの遊び、と一蹴してしまっている人も多いかもしれない。しかしそこには哲学が凝縮されているのだ。Snap Inc.は「遊び」のデバイスとしてSnapchatと連動したカメラ尽きサングラス「Spectacles(スペクタクルズ)」を発売した。自分の視点で写真や動画を撮影でき、Snapchatでシェアできるというものだ。

このプロダクトが発売された時は「Snapchatがモバイルアプリから抜け出した」と話題になったが、より自分の視点で、デバイスを手に持つ必要もなく瞬間瞬間を切り取ることができるSpectaclesは、Snap Inc.の哲学をさらに推し進めたものであることがわかる。

そこで株式公開の文書に戻るのだ。

Snap Inc.はカメラ会社である。カメラを再発明することが人々の生活とコミュニケーションを改善する素晴らしいきっかけになると信じている。

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