渋谷という街がその姿を常に変化させていくなかで、この街とミニシアター文化の関係も少しずつ形を変えてきた。あらためて口にすることはなくても、考えてみると渋谷はミニシアターの街だ。上映中の映画を探せば、無意識のうちに渋谷の片隅にある小さな映画館たちにたどり着くことは少なくない。久しぶりに足を運んでみると、そこにはもう別の建物があったりして、もの寂しい気持ちにもなる。だが、今も数々のミニシアターがひっそりとしかし確かに存在し、カルチャーの源泉となって息づいている。
もしもあなたがその作品を観たことがあっても、渋谷という不思議な街に人工的な郷愁を馳せながら再生ボタンを押せば、いつもと一味違ったテクストを感じられるかもしれない。
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トレインスポッティングダニー・ボイル(1996・イギリス)
90年代ミニシアターを象徴するような作品。公開は96年、渋谷のど真ん中、今はなきシネマライズ。見終わって街に出たら、スコティッシュ訛りの「choose life (人生を選べ)」というセリフとともにunderworldの「born slippy」が鳴り響き、時空が歪んで映画と現実が地続きに−−。そんな妄想も渋谷ならありえる。と思えるくらい映画と街の相性が良すぎます。僕のなかでの正しい渋谷系映画。
ワイルド・スタイルチャーリー・エーハーン(1983・アメリカ)
83年公開当時、30名超のアーティストがNYから来日、渋谷のデパート屋上でブレイクダンスなどのパフォーマンスを披露。その一連の出来事含め、本作の日本公開で大きく人生が変わったと公言するアーティストは多いし、その後渋谷がHIPHOPの街へと成長していくのも興味深い。一昨年のリヴァイバル上映ではお客さんから「この作品のおかげで、何も夢中になれなかった自分が、生きる意味をもらった」と、熱いコメントも飛出し、映画の力って素晴らしいなって思いました。
ゆきゆきて、神軍原一男(1987年・日本)
87年、渋谷ユーロスペースで封切られた本作。衝撃的な内容が話題を呼び、のべ26週、5万3000人の動員記録を樹立、いまだこの記録は破られてないそうです。公開から30年後の今年8月、当館で再上映した際には、チケットは全日完売。当日券を求めて朝早くから行列ができるなど、新たな熱狂ぶりをみせました。8割以上が作品初見、年齢も30前後の若いお客さんが中心。時代が1周したと監督が驚嘆していたのが印象的。
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石井雅之アップリンク渋谷9月16日(土)からは『サーミの血』が当館にてロードショー公開中。
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