渋谷という街がその姿を常に変化させていくなかで、この街とミニシアター文化の関係も少しずつ形を変えてきた。あらためて口にすることはなくても、考えてみると渋谷はミニシアターの街だ。上映中の映画を探せば、無意識のうちに渋谷の片隅にある小さな映画館たちにたどり着くことは少なくない。久しぶりに足を運んでみると、そこにはもう別の建物があったりして、もの寂しい気持ちにもなる。だが、今も数々のミニシアターがひっそりとしかし確かに存在し、カルチャーの源泉となって息づいている。
もしもあなたがその作品を観たことがあっても、渋谷という不思議な街に人工的な郷愁を馳せながら再生ボタンを押せば、いつもと一味違ったテクストを感じられるかもしれない。
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日本春歌考大島渚(1967・日本)
真っ白な雪の中、黒い日の丸を持った紀元節復活反対のデモ隊が、主人公の青年たちと渋谷ですれ違う。その静かで不穏な空気と、鬱屈した学生たちがやけになって歌う、猥歌の行き場のないエネルギー。今その対立の緊張感を感じてみるのはどうだろう。
快楽殿の創造ケネス・アンガー(1954・アメリカ)
アメリカのアンダーグラウンド映像作家ケネス・アンガーによるサイケデリック・ムービーの傑作。最近レストアされたという3面マルチスクリーン版を、10月31日にハチ公前の交差点において大スクリーンで上映し、神々と魔術師たちを降臨させ、あのハロウィンの狂宴に夢見る力を付与したい。
デモンズランベルト・バーヴァ(1985・イタリア)
スクリーンの向こうの悪鬼たちがこちら(現実)側に侵蝕・感染してくるホラー・ムービーの傑作は、やはり映画館で観てこその臨場感だろう。世界で有数の人間が集まる渋谷。その群衆がデモンズに変身したら…きっと自分も仲間になるしかないですね。今はなき渋谷パンテオンくらいの大劇場で観たいものです。
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世界の映画祭を席巻しているフィリピン勢の筆頭監督、鬼才ラヴ・ディアスのヴェネチア金獅子受賞作品『立ち去った女』が10月に上映されます。本作品は、長尺作品で有名な監督の作品群で最も短いほうの、3時間48分! そのリズムには不思議な吸引力があり、まだまだ観ていたい!と病みつきになってしまいます。是非ラヴ・ディアスの映画の闇に身を浸してみてください。
山下宏洋シアター・イメージフォーラムの番組編成担当。イメージフォーラム・フェスティバルのディレクター。
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