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6#未来世紀シブヤ2017

義井翔大/s**tkingz shojiインタビュー:ストリートダンサーは歩行者天国の夢を見るか?

ARTS & SCIENCE
事業統括プロデューサー尾田和実
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今回、FUZEでは世界的に活躍するs**tkingz(シットキングス)のリーダーshojiと、三浦大知やDream Amiなどのダンスパフォーマンスに携わる義井翔大にインタビューを敢行した。

ストリートダンスの世界に生きる二人にとって、海外や日本のダンスのリアルはどう見えているのか。そして、渋谷はストリートダンスにとってどんな場所なのか。話を聞いていくなかで、ダンスに対する切実な思いと、渋谷とダンスパフォーマンスの大きな可能性が浮き彫りになってきた。

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──まず、現在日本のダンスは世界的に見てもレベルが高いそうですね。

義井翔大(以下、義):そうですね。世界的に見ても日本のダンサーは本当にレベルが高いです。アメリカのダンスを日本人が見て真似ていたところを、今となっては日本人が海外に教えることにもなってきています。

shoji(以下、s):渋谷のダンススタジオはアジア系の人たちが多いんですけど、ヨーロッパやアメリカからも結構な数のダンサーたちがレッスンを受けにきます。レッスンによっては50〜60人のダンサーのうち、半分以上が海外からきていることもありますね。世界中のダンサーたちが集まって日本でレッスンを受けたりしているので、レベルが高いなと思います。

──レベルが高くなった背景にはダンスカルチャーがあると思うんですけど、これは日本の場合はどこから発生したのでしょう?

:ブレイクダンスが原宿のホコ天から発生したといわれているんですが、当時海外の有名なダンサーが福岡と大阪と東京によく来ていたというのも大きいみたいです。その影響で、各都市でいろいろなジャンルのダンサーのコミュニティができ、時代とともに混じりあって日本全体に広がっていったのかなと思うんですよね。海外のオリジネーターたちが日本に来ていたこともあり、交流があった国内の第一人者たちがよりリアルなものを積み重ねていくことでどんどん広がって、レベルも上がっていったのかなと思います。

──ストリートダンスのジャンルはどのように認識されるのでしょう?

:昔はジャンルとしてポップ、ロック、ブレイキン、ハウス、ヒップホップ…とかあったんですけど、最近はいろいろな要素のダンスがあります。僕としては、見せるダンス自分でストイックにやっていくダンスと大きく2種類に分かれていると思います。shojiの所属しているs**tkingzは基本的に「見せるダンス」ですね。ダンスがわからない人たちにも届くパフォーマンスをやっているのが彼らだと思っています。そのようなショーアップされたダンスに対して、スキルを高めて表現し合うダンスバトルのシーンも大きくなっていますね。
僕が昔聞いたことがあるのは、六本木で遊んでる人たちが新宿のクラブにきて、ガチで喧嘩みたいなダンスバトルをする話ですね(笑)。今となってはお互い仲も良くて、面白い話として聞いています。僕らの世代だとクラブでガチでバトルしている光景はあんまり見たことない。今はどちらかというと審査員がいて、優勝したら賞金や海外に行くチケットがもらえて、といったイベントとしてのダンスバトルが増えてきた感じですかね。

──音楽だと、昔はヒップホップ好きはヒップホップの格好をしていて、ロック好きはロックと一目でわかるビジュアルでしたが、今は格好だけだとどの音楽が好きかわからないようです。ダンスもそういう感じなのでしょうか?

s:そうですね。僕も10年くらい前にダンスを始めたころ、ダボダボのTシャツとか着てカンゴールの帽子をかぶっていました(笑)。「ヒップホップといえばこれ!」みたいな感じだったんですね。今はダンスしてるときと普段の生活と全然違う格好してる人たちが多いんじゃないかって思う。時代とともに音楽やファッションが変わっていくように、ダンスも変わっていきます。本当に2〜3年経つとガラリと変わりますね。

:格好から入るダンサーもいるけど、今は見た目だけでは結構わからないですね。それと同時にダンスを柔軟に捉えられる。これまでのダンサーは職人じゃないですけど「ジャンルはこれ!」という気質の人が多かったですが、今のダンサー達はなんでも視野にあるなと思いますね。

──音楽のジャンルわけが難しいのと一緒で、ダンスも一言では言い表せないような感じになってきているということでしょうか?

s:s**tkingzは大枠ではストリートダンスなんですけど、よく「そのスタイルはなんだ?」って聞かれます(笑)。これは音楽と同じで、ヒップホップも幅が広いじゃないですか。どこからがどこまでがヒップホップなのか線引きするのが難しいのと同じです。西海岸と東海岸でも絶妙に違うけど、何が違うのかは厳密に説明できない、あの感じです。 ストリートダンスはもともとそのブレイクビーツやヒップホップといったジャンルの音楽とずっと一緒に育ってきた文化です。とはいえ、オルタナティブロックでもヘヴィメタルでもかっこいい音楽はあるわけで、ダンスもいろいろな音楽に寄り添って派生してきました。だから、どこからどこまでがこのジャンルといった線引きが難しくなっていますね。たとえば今日はJ-popの曲で振りつけるけど、明日はウータン・クランで振りつけようみたいなことも成り立ちます。

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Image: Victor Nomoto - METACRAFT

s:渋谷には「渋谷系」って呼ばれる、派手な衣装で激しいダンスをする人たちがいるんですけど、それと対比して、僕らは「西麻布系」って呼ばれたこともあります(笑)。昔よく西麻布でイベントに出ていて、ちょっときれいめなというか、スーツでハットかぶって踊るみたいなスタイルだと「西麻布だね」って一部の人に言われたこともありますね。横浜のほうに行くとレゲエやヒップホップでも東京とは違う流れがあったり、地域ごとにダンスの色が濃く表れていたんですよ。でも今はすべてが渋谷に集約されてごちゃ混ぜになっています。東京在住のダンサーだけでなく日本中のダンサーたちが集まる場所というと「渋谷」という印象ですね。東京にダンスしに行くとき、わざわざ新宿に行く人ってあまりいないっすよね。

:行かないね。とりあえず渋谷に行こうってなるかも。新宿には有名なダンサーたちが集まる練習場所があったんですが、ほとんど使えなくなってしまいました。僕が若い頃は、渋谷でイベントがあるのも知ってたんですが、六本木か横浜のイベントによく行ってたんですよ。横浜だと大きな会場にすごいダンサーたちが集まるのでそれを観たり、六本木だと定期的にやってるイベントによく行ったりしていました。ここ7〜8年くらいで各地の会場自体どんどんなくなっているというのもあるんですが、渋谷のクラブは多く残っているんですよ。でも、「渋谷系」という表現のダンサーは聞かなくなってる。今はミックスされていて、渋谷のクラブでもいろいろなジャンルのイベントがあるので、西麻布系/渋谷系とわけるような言い方をしなくなってきているのかもしれないですね。そもそも何が「渋谷系」かって聞かれると難しいんです。渋谷でよく踊っていた先輩たちのチームで「彼らは渋谷系だ」みたいなくくりはあったんですけど。

s:ダンスカルチャー自体が変わってきています。僕らがダンスを始めた頃は「クラブに行ってなんぼ」みたいな感じだったんですよね。踊る場所も遊びに行く場所もクラブで、みんなでいろんなショーを観て刺激を受けて、その前後のDJタイムで踊り狂うみたいなことで育った世代でした。多くのダンサーたちはスタジオで育った世代だなと感じます。スタジオでダンスを習って発表会に出て、発表会は市民ホールや劇場のような作り込まれたきれいな照明のもとで踊るんです。渋谷には大型のスタジオがいっぱいあるんですよ。若いダンサーたちは学ぶために渋谷に来ていますね。習いにくるのもクラブカルチャーが元気に残っているのも渋谷くらい。渋谷はファッションをはじめ、カルチャーの発信地みたいなところもあるじゃないですか。なので、若い人が集まりやすいのかなって思いますね。

:ダンサーが渋谷に集まる理由は、スタジオもだいぶ大きく占めていると思いますね。

──渋谷にスタジオができるっていうのはどうしてなんでしょう?

:交通の便もいいし、やっぱり若者文化が元気じゃないですか。新宿は、歌舞伎町だったりビジネス街だったりとか、遊びに行きづらいんですよね。行っても若い子たちがダンス以外にやることを見つけられるかっていうと、あんまりないというか。渋谷原宿エリアにレッスンに来ると、じゃあ飯食って帰ろうとか遊んで帰ろうってなるくらい遊びに行けるところがあるので、人が集まりやすいですね。

──渋谷は常に変化し続けている街ですが、ダンスカルチャーと現在の渋谷との関係は一体どんなものなのでしょう?

s:渋谷は昔からクラブが多いので、それだけダンサーたちもパフォーマンスする場所が多くてイベントはしょっちゅう多くありました。西麻布や六本木にもクラブがあったり、新宿でもよく踊っていたし、昔のほうがいろいろなところに踊りに行ってたんです。ただ、今は六本木や西麻布にあったクラブももうないし、新宿も少なくなっていて、渋谷だけにクラブカルチャーが残っている。西麻布とかは交通の便も悪いんですよ。六本木の駅から歩いて20分、渋谷駅からもバスで20分とかかけないとクラブに着かなくて、それでも毎週末のようにパーティがあって溢れんばかりの人がいました。当時ヒップホップだったり、ダンスやクラブカルチャーが元気で、どれだけ遠くても遊びに行く、みたいな流れがありましたね。

:横浜でも行ってたね。

s:今の都内の子たちは横浜まで行かないと思うんですよ。そもそもクラブカルチャーがすごい変わってきているというのもあると思うんですけど、風営法の問題だったりでクラブが激減したんですよね。そんな今、若い子たちが踊れる場所の選択肢だったクラブがあまり残っていないんです。

:それと同時に渋谷にはスタジオがあって、踊れる機会もある。スタジオが主催するイベントだったり発表会だったり。
「今の若いダンサーたちはヒップホップ色やクラブ色が薄い」という印象をもつ人は多くて、それは多分事実なんです。でも若い子たちは若い子たちで、スタジオに行くとジャズダンスもあったりバレエもあったりタップダンスもあったり、ダンスカルチャーがごちゃまぜの環境にいるので、エンターテインメントに平等な目を向けられるようになったりしています。だから、ダンスに関しては今の若い子たちのほうが視野が広かったりするんですよね。YouTubeで昔の動画も検索できるし、今までとは違うアプローチでダンスと向き合ってるような気がします。

──たしかに若い世代は、練習のためにYouTubeなどの動画をインターネットで検索することが可能ですね。昔は会場に行かないと情報源を集められなかったと思うのですが、その違いは感じますか?

s:若い子たちはYouTubeを見ることで、世界中のダンサーたちの今を知ることができます。そこに麻痺して、クラブにもレッスンにも行かずYouTubeでひたすら動画を見たり、真似すればいいっていうダンサーもいます。そういう環境を否定する人もいるけど、動画って使い方だと思うんです。僕らの世代が知ることができなかった、オリジナルダンスを作ったような人達の踊りをYouTubeで見ることができるのはすごいことです。これは音楽のストリーミングと同じだと思っていて、ストリーミングで簡単に音楽が聴けるような状態にある世代に対して、常にCDを買わないと最新の音楽が聴けなかった世代が新しい状況に不満を抱くことがあっても、ストリーミング世代にとって自分たちが知らなかった曲は全部新譜じゃないですか。ダンスも一緒で、何億曲の新しい情報と出会えるチャンスがあるように、使い方によってはいいと思います。YouTubeを使っていろいろ勉強することはとても素晴らしいことだし、チャンスがある世代はそれだけですごいことだから、いい時代に生まれたねって思いますね。それと同時にダンスを生で見る経験もしてほしい
実際にダンスを生で見て何も感じないんだったら、YouTubeでどうぞって感じですが、やっぱり現場に行くとそこのでしか味わえない空気や匂い、湿度だったり、それを含んだ色気や深さなど、ダンスの感じ方が変わってくると思うんです。
それにクラブのイベントは、ダンスで遊べますからね。パフォーマンスは真剣に作るし、真面目に踊るんですけど、企業が企画した大きなイベントとかではあんまりできないようなこともできたりもするので、そういう意味ではクラブに遊びに行く機会があるといいですよね。

:僕がクラブでイベントをやる意味が一つあって、遊びって言ってくれたのがそのままなんです。さっきもスタジオでダンスを習うのが主流と言いましたが、昔は遊びの中でダンスを覚えていた人も多いと思います。今はダンスへの入り口が変わっていて、習い事とまではいかないですが、スタジオに行って踊るのとクラブで踊る感覚はだいぶ違います。もともとは遊びだったからそんなふうにダンスを捉えてほしいなというのも含め、クラブイベントを1年に1回ほどやっています。
今までのダンサーのかっこよかったイメージが自分にもなんとなくあったり、先輩とか友達と音楽が流れる場所でお酒飲んで、ただただワーワーやる楽しさも知ってもらいたいなと思っています。若い子たちはスタジオに行って1日2レッスン受けて、しばらくしたら発表会出てみたいなサイクルでクラブから足が遠のいていくことは間違いなくあるんですよね。スタジオでの練習もそれはそれだとは思うんですけど、クラブという異空間でお酒飲んでぐちゃぐちゃになる経験もして欲しいなって。いろんな人の醜態やいろんなものを見てきて、面白いなあと思いつつ、たまに自分も外れるとそうなったりして(笑)。

──お酒が入っていい感じになると、信じられないようなダンスがうまれたり…。おふたりにとって、多様化してテクニックも向上しつつ、スタジオで学んでいる若い世代のダンサーに物足りなさを感じる部分はあるのでしょうか?

:技術レベルも高くてうまい子は本当に多いんですけど、個が目立つようなかっこいいダンサーは昔ほど多くないなとはなんとなく思いますね。もちろん若い子達でも飛び抜けてそういう人はいるんですけど、人数の割には少ないなっていう感じがします。別にどちらかが正解ではないんですが、スタジオで身につけるものとカルチャーの中で自然に身につけていく人だと、醸し出す雰囲気はちょっと違うなとは思います。それと昔はクラブしかなかったからチームで活動することが多かったんですが、スタジオとか発表会があると大勢で出られる機会があって、チームを作らなくても披露できる場所がありますよね。でもチームが少なくなっているのはもったいないです。s**tkingzはもともとクラブで踊っていて、その後大きく飛躍しているので、今でもチームで活躍するダンサーは増えて欲しいですね。


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Image: Victor Nomoto - METACRAFT
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Image: Victor Nomoto - METACRAFT

──これからの渋谷におけるダンスシーンの願いは?

s:活躍できる場所がもっと増えるといいですね。韓国だと劇場街にストリートダンス専用の劇場があるんですよ。国からお金が出て、そこで作品作りをしたりストリートダンスができるんです。韓国もブレイクダンスなどのレベルが高くて、世界中の観光客が観にきていました。日本の場合、すべてのジャンルのダンサーに補助があるわけではありません。すごく面白くて素晴らしいエンターテインメントなのに、それを見せる場がなくて、ダンサー向けのイベントで評価されて完結してしまいます。世に出していったらもっと面白いエンターテインメントになるのに。たとえば「あの人が音楽を作って、それにあわせてこの人達が踊って、演出家がこんな演出をしたらもっと面白いのに!」という化学反応が起きないんです。劇場も少なかったり、外で踊れる場所も減ってきたこともあるので、ダンサー達がお客さんに見られる場所が増えたらいいなという思いがありますね。僕達はすごい恵まれていて、この前も金閣寺で踊らせていただきました。後ろにオーケストラがいて、池にステージを立ててて踊るみたいな凄く貴重な体験でした。ストリートダンスも昔に比べて表現するチャンスは増えてきていますが、渋谷はこれからもカルチャーの発信地であってほしいので、さまざまな形でパフォーマンスができるような場所がもっと増えたら嬉しいですね。

──それでこそ、渋谷は本当にダンスカルチャーのワンストップになるかもしれないですね。

:渋谷はその可能性がある場所なので、あちこちにダンスシーンができたらいいと思います。金閣寺で踊れたならスクランブル交差点でも踊れるんじゃない?っていう。そういった場所でダンサーが表現したときに、多くの人を魅了できるくらいのレベルに日本のダンスシーンはあると思うので、機会がもっと増えたらいいですね。でもそれは僕らだけの力じゃできないことで、大きな力が必要です。だから、ダンスの魅力と可能性をどれだけ皆に感じてもらえるかですね。ダンスを知らないような人たちにも、渋谷で踊っているのを通りすがりに見ちゃったくらいな感じの場所を作りたいです。

──ホコ天の復活のようなものですね。

s:そういうのもいいですよね。アジアで音楽フェスなど何かやろうとしたとき、シンガポールや香港に大きなイベントをもっていかれちゃっている気がしていて。エンターテインメントのアジア中心地がどこかとなると、日本からどんどん離れていっているように感じます。そんななか「日本の渋谷に来ればとにかくダンスだけは間違いない」みたいな、ミュージカルだったらブロードウェイ、音楽だったらロンドンやベルリンに行って、ストリートダンスだったら「渋谷に来れば世界中のダンサー達が集まってて面白い!」みたいな街になったらいいなって思いますね。

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flux FINAL
@ SOUND MUSEUM VISION
9月28日(木)
OPEN 21:00 START 22:00
adv 3,000/NoDrink
door 3,500/NoDrink

10th anniversary show in Billboard Live
@ Billboard Live TOKYO
11月16(木)、11月17日(金)
1st stage 17:30 OPEN / 19:00 START
2st stage 20:45 OPEN / 21:30 START

@ Billboard Live OSAKA
11月21日(火)、11月22日(水)
1st stage 17:30 OPEN / 19:00 START
2st stage 20:45 OPEN / 21:30 START

自由席 ¥8,500-
Casual ¥7,500-

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One and Only.Creative
s**tkingz


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