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15 #海外ドラマは嘘をつかない

2018年、Netflix/Amazonビデオに起きた異変。映画祭で作品を買いつけなかった理由から映像文化の将来が見えてくる

DIGITAL CULTURE
コントリビューターSCQIC
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第68回ベルリン国際映画祭では、ある「異変」が起きた。彗星のように現れ、ここ数年、毎年のようにマーケットをにぎわせていたNetflix(ネットフリックス)とAmazon(アマゾン)が、作品の買いつけをほとんど行なっていないのだ。この異変は、1月に行なわれた世界最大のインディペンデント映画の祭典、サンダンス映画祭でも起きていた。

ここ数年、両社と映画界は蜜月関係を築いていた。

特にサンダンス映画祭では、2016年『マンチェスター・バイ・ザ・シー』をAmazonが1000万ドル、2017年『マッドバウンド』をNetflixが1250万ドルと、従来のインディペンデント・マーケットでは考えられないような額で買いつけた。さらに、こうした作品がアカデミー賞候補として大手スタジオの大作と競うという、インディペンデント映画の作り手からすると夢のような環境が整えられていた。しかしながら、今年のサンダンス映画祭で両社が買った映画はなんと「0本」だったのだ。

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巨人たちはいま、何を考えているのか

Amazonは巨大なプロジェクトに投資する考えを明確に示しており、ジェフ・ベゾスCEOみずから『ロード・オブ・ザ・リング』の新シリーズの買いつけ交渉に走っている。また、その額は2.5億ドル(約265億円)もの規模になることが想定されている。Amazonは、ローバジェットの佳作を積み重ねるよりも、巨大プロジェクトのほうが話題になり、サービス登録者数を増やせると判断したのだ。Netflixは、Amazonほどたしかなスタンスを取ってはいないが、VODサービスの勝ち筋が巨大プロジェクトを成功させることであることが明らかになりつつある。直近の例だと、2017年にHulu製作の『ハンドメイズ・テイル』が絶大な人気を博し、ユーザー数が爆発的に増加しており、日本でも配信が開始された。これらを踏まえれば、Amazonと同様の戦略をとる可能性が高いことがわかるだろう。

Video: Hulu/YouTube

この巨人たちの動きをうけ、突如として強力な後ろ盾を失ってしまったインディペンデント映画はどうなるのだろうか。

2月17日、ベルリン国際映画祭において、VODサービスと映画の関係について考えるカンファレンスが開かれた。

ニューヨークの映画批評家、ダナ・オケフェ氏は、ここ数年、NetflixとAmazonが市場を独占してきたとして、「サンダンス映画祭における両社の不在によって映画の流通チャネルが再び増えた」と述べた。パリの映画配給会社Stray Dogsのネイサン・フィッシャーも「2年前から彼らが買いつけの価格を釣りあげてきたことは、業界全体にとってよいことだったのかはわからない」と述べ、これからは、たとえばMUBIのようなニッチなVODサービスがNetflixやAmazonに代わって買いつけを行なうようになるといい、と結論づけた。

この議題は、カンファレンスの途中から議論の中心となり、アテネの映画配給会社Heretic Outreachのイオアナ・ステーツは、ニッチなVODサービスが買いつけを行なうことには同意するが、彼らにとってストリーミングの権利料が大きな障壁になるであろう、と懸念を露わにした。これを受け、フィッシャーはより大きなメディアがVODサービスをローンチすれば、マーケットの選択肢が増えるのではないかと結論づけている。

では、実際のマーケットはどうなっているのだろう? インディペンデントをとりまく環境は年々苦しくなるなかで、NetflixとAmazonのはたらきは非常に大きかった。彼らの不在は、いったいどのような結果をもたらしたのだろうか?

実際、マーケットでは今、インディペンデント映画に追い風が吹いている。まさしくダナが述べたように、インディー系のバイヤーが昨年に比べ、非常に活発に買いつけを行なっているのだ。昨年まではNetflixとAmazonが価格を引きあげたために、資金力で勝負できないインディペンデント系のバイヤーが入り込む余地がなかった。しかし、彼らの不在によってマーケットがより開かれたものになったのだ。プロタニゴスト・ピクチャーズのヴァネッサ・サールは、「今年はNetflixとAmazonがいないおかげで、インディペンデント系のバイヤーたちにはチャンスが与えられているの」と語った。

巨人たちの不在は、大きなリターンを期待する作り手たちにとっては悲しいニュースかもしれないが、寡占を防ぎ、映画の豊かさを守るという観点から見ると、いい流れを生みだしているといっていいだろう。

映画界に突如やってきた「巨人」であるVODサービスの一挙手一投足は、映画、特にインディペンデント映画をとりまく環境をめまぐるしく変えている。向こう何年かの映画界の動向を占う彼らの動きには、今後も注目する必要がありそうだ。

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Image: Denis Makarenko/Shutterstock.com
Source: YouTube, MUBI, ベルリン国際映画祭, サンダンス映画祭

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