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【FUZE特集】ブルーノ・マーズから考える、日本人と洋楽の距離

ARTS & SCIENCE
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かつて「洋楽」といえば、海外の音楽を憧れの対象として、どこか距離を保ちながら受け取るものだった。90年代のロックやR&B、2000年代のMTVカルチャー。日本の若者にとってそれらは、歌詞の意味がわからなくても、邦楽にはないフィーリングや「異国の空気」をまとった特別な存在だった。

しかし2010年代に入ると、その距離感は少しずつ変化していく。EDMがクラブやフェスを席巻し、海外の有名プロデューサーの楽曲が日常的に流れるようになった。さらに、Lady GagaやTaylor Swift、Ed Sheeranといったアーティストが日本のテレビ番組に出演するなど、海外アーティストが日本のメディア空間に自然に入り込むようになったことで、「洋楽」は少しずつ距離の近い存在として認識されていった。

一方で近年、日本ではいわゆる“洋楽離れ”が進んでいるとも言われる。チャート上位に洋楽が並ぶことは少なくなり、海外の音楽という文脈ではK-POPの存在感が際立つようになった。グローバルに洗練されたサウンドと強いビジュアル、そしてカルチャーとしての分かりやすさ。日本において少なくとも可視化されやすい“海外音楽の入口”として、K-POPが大きな存在感を持っている。

SpotifyやYouTubeを通じて、世界中の音楽や情報が同時に届くいま、「洋楽」という言葉そのものは揺らぎつつある。海外のミームや文脈が、そのまま日本に輸入され、アーティストへの興味や理解につながるケースも増えた。音楽はもはや“探しに行くもの”ではなく、自然に流れ込んでくるものになっている。

それでも日本の市場を見渡せば、邦楽と洋楽はいまだに明確に分けて語られる。チャートやメディアの分類、そしてリスナーの意識の中にも、「これは洋楽だ」という感覚は根強く残っている。

そんな状況の中で、10年ぶりにアルバムを発表したブルーノ・マーズは、きわめて象徴的な存在だ。R&B、ファンク、ディスコ、ポップを自在に横断しながら、アメリカのポップミュージックの歴史を凝縮したサウンドを、誰もが口ずさめる「歌」として届ける。そして東京ドームを埋め尽くすほど、日本ではいまなお明確に「洋楽アーティスト」として高い人気を誇っている。

たとえば、ドン・キホーテのCMに出演する姿は、その象徴と言えるだろう。ここで問いたいのは、彼の人気の理由が“曲の良さ”だけで完結していないことだ。ブルーノ・マーズは単なる海外の人気ミュージシャンではなく、日本の文脈の中で“キャラクター”として受け入れられている。振り返れば、日本で支持されてきた洋楽アーティストは、音楽性の評価だけで成立してきたわけではない。アーティスト個人の個性や振る舞いが日本人に受け止められ、「誰なのか」が共有されたときに、初めて強い支持へとつながってきた。

今回の特集は、ブルーノ・マーズを入口にしながら、焦点は「洋楽」そのものにある。彼がいまなお日本で強く受け入れられる理由を手がかりに、日本人が洋楽とどう向き合い、どんな距離感で受け取ってきたのかを問い直す。あわせて、日本における洋楽という存在をさまざまな切り口から掘り下げ、時代とともに変化してきた日本人の音楽観や価値観を読み解きながら、洋楽との“距離”の正体を言語化していく。

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