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VRが無関心の壁を越えた。6人に1人が寄付した難民少女のドキュメンタリー『Clouds Over Sidra』

IDEAS LAB
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ライター塚本 紺
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世界には援助を必要とする地域や人々が多く存在している。彼らの状況を少しでも良くするため、国連を始めとする非営利団体は国や企業、個人から寄付金を募ってはいるものの、資金は簡単には集まらないのが現実だ。

そこで昨年から国連が本格的に導入しつつあるのがVR映像だ。写真や文章で説明してもなかなか伝わらない遠い国の惨状が、VRを通じてユーザーが"体験"することでよりリアルに感情に訴えかけてくるのである。

国連の仮想現実プログラムを率いるクリエイティブ・ディレクターGabo Aroraが制作した『Clouds Over Sidra』は、人々の感情に訴えかけるVRの強力なパワーを証明した。この作品はヨルダンの難民キャンプに滞在する12歳の少女Sidraによってキャンプの様子が紹介されるミニ・ドキュメンタリーとなっている。Sidraはシリアの内戦を逃れてここにやって来た。

ビデオに登場するザータリ・キャンプにはなんと13万人の難民が滞在している。ビデオ撮影時、Sidraはここで18カ月も生活していた。この13万人の生活者のうち半数以上がSidraのような子どもたちである。

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WIREDのレポートによると、この『Clouds Over Sidra』をクウェートのファンドレイジング・イベントで人々に見せたところ、なんと予想を70%も越える38億ドル(約3900億円)もの寄付金が集まったという。

国連によると、VRドキュメンタリーを見た人のうち6人に1人が寄付をしたという報告も出ている。

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しかし納得の成果だと考える人も多いのではないだろうか。The Vergeのインタビューに対してAroraは(VRが持つ)自分自身がある空間に存在しているように感じる、という特性が、通常の映像と比べて根本的に違っていることを指摘する。VRがただ新しい技術だから人々の関心を集めているわけではないというわけだ。

国連によるVRアプリUNVRを使って『Clouds Over Sidra』を視聴すると、ただビデオを見るだけでなく「行動を起こす(Take Action)」というボタンを押してプロジェクトの詳細を知り、寄付を行うことができるようになっている。今は4つのドキュメンタリーが公開されているが、今後どんどんと増えることが期待されている。

難民支援に限らず、遠い地域の惨状について人々に深刻に考えてもらうのは難しい。人間の想像力や共感には限界があるからだ。VRが国境を越えて、遠く離れた苦境のど真ん中に人々を連れて行けることは大きな意義を持っている。