電子音楽とクラシックの狭間に宇宙を見る。ジェフ・ミルズ×東京フィル×バッティストーニ『クラシック体感系Ⅱ -宇宙と時間編-』
ARTS & SCIENCE2017年、惑星をめぐる旅。
デトロイト・テクノの第一人者ジェフ・ミルズと、指揮者アンドレア・バッティストーニ率いる東京フィルハーモ二ー交響楽団のコラボレーション・コンサート『爆クラ!presents ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモ二ー交響楽団×バッティストーニ クラシック体感系Ⅱ -宇宙と時間編-』が、大阪(22日)と東京(25日)で行なわれる。
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海や水、英雄に展覧会の絵など地球上に存在するあらゆる事物をテーマにしてきたクラシック音楽も、それが「宇宙」だとちょっと心許ない。何せ私たちは数人の宇宙飛行士を除いては、宇宙を体験していないのですから、致し方ないことなのかも。
ナビゲーターをつとめる著述家 湯山玲子は、このクラシックと電子音楽のコラボレーションで「宇宙」を表現する試みについて、上のように述べている。
多くの人にとって、宇宙は未知だ。たとえJAXAやNASAの優秀な研究者たちが日夜、次々とその謎を解明しているのだとしても、私たちはまだそれを自分自身の肌で感じることはできない。私たちはその魅力的で巨大な存在の有り様を、科学的データから想像するしかないのだ。
それはテクノの巨匠、ジェフ・ミルズにとっても同じことだったのだろう。
彼は今回の公演と同時に『Planets』(惑星)と題したアルバムのリリースを控えている。『Planets』はその名のとおり「宇宙」をテーマに制作されたアルバムで、楽曲はオーケストラのために書き下ろされた。
アルバムはディスク2枚組で、実際に楽曲をオーケストラと演奏したオーケストラ・バージョンと、そこに至るまでの制作過程で楽曲のアイディアスケッチとして生まれたエレクトロニック・バージョンがそれぞれ収録されている。
作曲にあたって、ジェフ・ミルズはそれぞれの惑星の構造や構成物、サイズ、質量、密度などのデータを参照した。2016年9月にReal Soundが行なったインタビューによれば、彼は土星について、回転周期を曲のテンポに反映したり、5.1chサラウンドを使ってその「環」の回転を表したり(Blu-rayフォーマット盤のみ)と、さまざまな表現方法を駆使している。
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22日から行なわれる日本公演では、オーケストラに東京フィルハーモ二ー交響楽団、指揮にアンドレア・バッティストーニを迎え、ドビュッシー『月の光』や黛敏郎『BUGAKU(舞楽)』などの楽曲とともに、ジェフ・ミルズの作り上げた『Planets』の世界が披露される。

『Planets』に寄せて、ジェフ・ミルズはこんなメッセージを公開している。
人間は常に宇宙を見上げて答えを探し続けている ―― 惑星を分析するのは自分たち自身の過去、現在、そして未来を学ぶ方法なのであろう。人類の将来は、自分たちが見つけたことを、進化の過程でターニングポイントとなったようないくつかの機会でいかにうまく利用するかにかかっている。我々の到来を宇宙の隣人たちは待ち望んでいるのではないだろうか。本作「Planets(惑星)」は我々の世界に宇宙の地平線を少しでも近づけたい、かつては到達不可能と思われていた距離をより縮めていく感覚を身につけてもらうことを想定して制作された。
太陽系を観察、理解し、旅することは科学的である以上にアーティスティックなものである。生まれ、息をして、夢をみる生物として我々が持ち合わせているもの、自然を確認していく作業。存在として成熟した折にのみ学ぶことができる未知の世界を表現している。
クラシカルとエレクトロニック・ミュージックの融合は必然的だった。ともにメンタル、フィジカル両面である程度の感情を表現し、この二つのジャンルはともに、誰もがもっている数々の絡み合った謎を問う現代社会の産物だ。
この作品はPLANETSと題されているが、実は我々人間がテーマなのだ。同じ見解、同じ質問、同じ結論を共有しているという事実を大きなスケールで表現しようとしたのだ。
――ジェフ・ミルズ
彼の言う「太陽系のアーティスティックな観察」とはつまり、成熟した科学が示してくれるさまざまな宇宙の断片的事実と、彼のような芸術家たちのイメージを拾い上げ、つなぎ合わせて大きなひとつの自然の物語を紡いでいく、アートとサイエンスの共同作業のことだろう。空を見上げ、いまだ答えを探している私たちに、ジェフ・ミルズはどのような惑星たち、そして宇宙の姿を提示してくれるだろうか。答えはオーケストラの音世界の中で見えてくるかもしれない。

ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモニー交響楽団×バッティストーニ
~クラシック体感系Ⅱ -宇宙と時間編
公演オフィシャルサイト
大阪公演(会場:フェスティバルホール)
日時:2017年2月22日(水)18:00開場/19:00開演
東京公演(会場:Bunkamura オーチャードホール)
日時:2017年2月25日(土) 17:30開場/18:00開演
チケット価格(税込/大阪・東京共通):SS席8,800円/S席 7,800円 /A席 6,800円
イープラス / ローソンチケット / チケットぴあ
出演(大阪・東京共通):
DJ:ジェフ・ミルズ / 指揮:アンドレア・バッティストーニ / オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団 / ナビゲーター:湯山玲子
演奏予定曲目(順不同):
第1部:東京フィルハーモニー交響楽団
Short Ride in a Fast Machine(ジョン・アダムス)、月の光(ドビュッシー)、ポエム・サンフォニック/100台のメトロノームのための(リゲティ)、BUGAKU 舞楽 より第二部(黛敏郎)、The Bells(ジェフ・ミルズ)with ジェフ・ミルズ、U-zhaan(東京公演のみ)
第2部:ジェフ・ミルズ with 東京フィルハーモニー交響楽団
Planets(ジェフ・ミルズ)

『Planets』
2017年2月22日リリース
初回生産限定盤[Blu-ray CD] ¥3,800(税抜)/ 通常盤[CD2枚組] ¥2,800(税抜)
[Blu-ray] <ファイナル・オーケストラ・ヴァージョン>
5.1ch、ステレオ音源を切替可能 / 特典インタビュー映像:Jeff Mills 、Sylvain Griotto (アレンジャー)、Christophe Mangou (指揮者)
Track listing:
01. Introduction
02. Mercury
03. Loop Transit 1
04. Venus
05. Loop Transit 2
06. Earth
07. Loop Transit 3
08. Mars
09. Loop Transit 4
10. Jupiter
11. Loop Transit 5
12. Saturn
13. Loop Transit 6
14. Uranus
15. Loop Transit 7
16. Neptune
17. Loop Transit 8
18. Pluto
[CD] <オリジナル・エレクトロニック・ヴァージョン>
ステレオ
Track listing:
01. Mercury
02. Venus
03. Earth
04. Mars
05. Jupiter
06. Saturn
07. Uranus
08. Neptune
09. Pluto
PLANETS credits:
Performed by:
Jeff Mills
Orchestra: Orquestra Sinfónica do Porto Casa da Música
Conductor: Christophe Mangou
Production:
Concept: Jeff Mills
Original Composition: Jeff Mills
Classical Arrangement: Sylvain Griotto
Recorded at Casa da Musica, Porto, Portugal
Recording engineer: Carlos Lopes (Casa da Musica)
Pre-editing: Anne Laurin
Mix down engineer: Jonathan Allen (Abbey Road Studio)
Additional Keyboard arrangements: David Walter
Mastering engineer: Darcy Proper (Wisseloord Studios)
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