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5 1990年代、オルタナティブの始まりと終わり

瀬戸あゆみとファッションカルチャー:Zipper世代の「卒業」を語る

ARTS & SCIENCE
ライター宮本 徹
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原宿のファッションカルチャーを伝えてきた雑誌「Zipper(ジッパー)」が、2017年の12月22日発売号をもって休刊することを発表した。そんなZipperの専属モデル、パチパチズとして8年半務めてきた瀬戸あゆみは、偶然にもZipperと同じ93年生まれだ。彼女はモデルとしての活躍はもちろん、アパレルブランド「Aymmy in the batty girls(エイミーインザバッティーガール) 」のデザイナーとしても才能を発揮している。このブランドは過去に『E.T.』や『Back To The Future(バック・トゥ・ザ・フューチャー)』など80年代のアメリカ映画とコラボしている。

今回は、瀬戸あゆみが思う90年代のカルチャーと、誕生とともに歩んできたZipperについての話を聞いた。そもそも90年代と聞いて、なにが思い浮かぶだろうか?

「90年代でわたしが思い浮かぶのは、映画の『Clueless(クルーレス)』と『KIDS(キッズ)』。映画が大好きで、ファッションのインスピレーションはほとんど映画からきてます。映画って、1冊の本よりも情報が入ってくるんですよ。音楽、映像、ファッション、時代背景がわかるし。出てくる洋服はかなり意識して見ちゃいます。たとえば『Clueless』はアメリカのギャルを題材にしています。その当時、日本でもギャルカルチャーが流行ってましたよね。小学生でもみんなルーズソックス履いてて。80年代や90年代のファッションはデザインがわかりやすくて、流行するスタイルが明確。カルチャーがはっきりしてました。けど、それは90年代で終わりな気がしてる。2000年以降は細分化されているというか、こんな服を着る子もいれば、あんな服を着る子もいるって感じでジャンルがわかれていますよね」

Video: YouTubeムービー/YouTube

瀬戸あゆみにとって、90年代カルチャーのルーツは映画のようだ。彼女や自分も含め『KIDS』のスケーターやファッションから、90年代リバイバルとして受けた影響はかなり大きいのではないだろうか。ここで、リアルな90年代をどう過ごし、なにが好きだったか聞いてみた。

「わたしは93年生まれで、7歳のときには2000年に変わってて。90年代当時は『セーラームーン』とアイドルのSPEEDが好きでしたね。テレビだと、「笑う犬」や「学校へ行こう!」とか、すごい観てました。テレビ番組は表現が自由だったなって思います。志村けんのバカ殿とかに女の人の裸が出てきたり。アニメの『GTO』は内容が過激だから、お母さんに見ちゃダメって言われてましたね(笑)」

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「90年代ってインターネットは今ほどないけど、大人たちのカルチャーが深かったんだなって思います。いまのサブカルチャーといわれるようなものより、もっとハードコアなイメージ。わたし、80年代に生まれたかった。80年代も90年代も追っかけでしかないから、映画を観たり、当時の雑誌を読んだりすることに、すごく憧れがあるんです。いっぽうで、「90年代リバイバル」って言葉が出てきたのはびっくりしました。自分が生まれた年代が流行りだすなんて。いま、90年代っぽいファッションや音楽がブームですよね。それを知らないで着てる若者とか多そうだけど。いつかイチゼロ(2010)年代リバイバルもくるんじゃないかな」

90年代には『Batman(バットマン)』や『X-Men(Xメン)』、Aymmy in the batty girlsが先日コラボしたばかりの『Teenage Mutant Ninja Turtles(ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ)』などのアメコミアニメがリアルタイムで日本で放送されていた時代だ。

「わたしは古着から入ったので、『Teenage Mutant Ninja Turtles』のアニメは観たことなかったんです。Aymmy in the batty girlsとのコラボの話をすると、スーパーファミコンのゲームをやってたって教えてくれる人が多いですね。そのゲームも知らないんですけど(笑)。90年代って海外アニメが日本にたくさん来てた時代でもあったみたいですね」

Zipperの休刊。最後の12月22日(金)発売号にはモデルとして出るようだ。瀬戸あゆみにとってこの雑誌はどのような存在なのだろう。

「Zipperを読み始めたのは中学生のときです。そして16歳からZipperモデル、パチパチズを始めました。高校時代の放課後はほとんど毎日、Zipperの編集部で過ごしてました。仕事って感じではなく、モデルさん同士もすごい仲良くて。いまのモデルさんは事務所に入ってるから、撮影終わったら帰宅って感じだけど、当時はショップ店員とかやりながら、読者モデルっていうのが流行っている時代だった。対等な立場でみんな仲良くて。東京の場所を教えてもらったり、家に集まってご飯作って食べたり。わたしは当時、埼玉の田舎の高校生だったから、ぜんぶが刺激的でした。いまの交友関係もそこからできてるから、自分にとってはかけがえのない時間でした」

最後に、休刊するZipperに向けてのメッセージを聞いた。

「今年のZipperの秋号でパチパチズを卒業したんです。わたしは16歳から8年半、パチパチズだった。最後には1番の古株でした。新しい子がくるとZipperみてましたって言われたり、街中でも声かけてくれる人は多くて、自分にそのイメージが強くついてるんだなって気づきました。それはすごく嬉しいし、Zipperのおかげで今のわたしがあるんですが、Zipperに頼らずにステップアップしないとダメだなって思いました。そして、次のステップにいくために卒業を決めたんです。今後はデザイナー活動はもちろん、ラジオや文章を書くことにもやってみたい。Aymmy in the batty girlsの展望としてはロサンゼルスにお店を出したいです。自分の人格が形成される大事な期間をZipperで過ごして、大人になっていくまでの交友関係も作ることができた。Zipperはわたしにとって青春の場所。自分の原点というか、いまがあるのもZipperのおかげ。ありがとうございましたって言いたいです」

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