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野村訓市が語る、盟友ウェス・アンダーソン監督の新作『犬ヶ島』制作秘話

ARTS & SCIENCE
コントリビューターThumper Jones
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独特の世界観や審美眼でファンを魅了し続けるウェス・アンダーソンの新作『犬ヶ島』が、5月25日(金)より全国で公開される。前作『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)でアカデミー賞9部門にノミネートされた監督による待望の新作は、『ファンタスティックMr. FOX』(2009)以来となるストップモーションアニメーション(=静止した物体をコマ撮りして制作するアニメーション)。舞台は近未来の日本で、日本をこよなく愛する監督が黒澤明や宮崎駿の作品などから得たインスピレーションが随所に詰め込まれている。

公開を数週間後に控えた5月某日、FUZEは本作で原案とキャスティングディレクターを務めた、監督の長年の友人でもある野村訓市に話を聞いた。日本語がまったくわからないという監督が無謀にも挑んだ、日本語と英語が同時に飛び交うユニークな作品において、彼の果たした役割は想像以上に大きかったようだ。

日本語のセリフは僕がiPhoneで録って、日本語のセリフも全部作っています

——ウェス・アンダーソン監督とは以前から友だちだったそうですね。最初はどのように出会ったのですか?

野村訓市(以下、野村):ソフィア(・コッポラ)の紹介です。彼女はよく知り合いが日本に来るときに、「面倒を見てあげて」と言ってくるのですが、いつも誰が誰だかわからない感じで。それが学校の友だちだったり、映画関係の人だったりと脈略がなくて、その中の1人がウェスでした。14年くらい前かな。会ったときは、彼も何も言わないし、僕から何をしているかも聞かないし、そのまま飲みに行ったりしてたんです。3日くらいしてから「ところでKunは映画好き?」と聞かれて、「僕の映画観ない?」と言うので、「おー、お前映画作るの?」という感じでした。『ライフ・アクアティック』(2004)の頃です。僕は映画が好きだったのでウェスの作品も観ていましたけど、当時は顔もほとんど出ていなかったから、どんな人だか知らなくて。

——本作『犬ヶ島』では原案から携わったそうですね。長年の友人とはいえ、一緒に仕事をするには相当の信頼関係が必要だと思うのですが、監督からそこまで信頼されている理由はどこにあると思われますか?

野村:わかんない(笑)。まあでも、ウェス・アンダーソンが何をしているかを知って近寄る人は、一緒に何かをしたいとか、自分を出してくれとか、金儲けをしたいとかあると思うんです。僕は会ったときから扱いもぞんざいだったと思うんですけど、別に何をする気もなかった。もちろん、自分は編集と書くことも好きでやるので、(監督に関する記事執筆などの仕事を)やったことはありますけど、彼にとってもいいようにやってきたつもりだし…。普通に友だちづきあいをしていて、共通の知り合いも多かったし、性格は違うんですけどなぜか馬が合って、ずっと定期的に会っていました。今回は「キャスティングと原案を一緒に作らないか」と頼まれたというよりは、なし崩し的に役割が増えていったという感じです。

——監督から次々と日本についての質問が飛んできた感じですか?

野村:それもあるし、「これできる?」「あれできる?」みたいな。それに対して、「じゃあやるか」という感じだったので、結果的にこんなになってしまったというか。

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Image: Victor Nomoto - METACRAFT

——監督は日本語がまったくわからないそうですが、日本語のセリフのレコーディングでは、野村さんが監督的な立場だったわけですか?

野村:僕がiPhoneで録って、日本語のセリフも全部作っています。

——それはすごいですね。さらに、劇中では小林市長を演じられていますが、見事な声優ぶりに驚きました。声優を務めるのは初めてですか?

野村:演技も声もやったことないです。ただ、絵コンテ段階で尺を確認するときに、すべてのメインキャストの英語のセリフをウェスが録って、日本人の役は全部僕が録ったんです。そのときはまだセリフを作っている段階で、ウェスの世界観を日本語に訳すのが難しくて大変でした。ただでさえ日本語は長くなってしまうんですけど、ウェスのセリフ回しって英語でも結構長いじゃないですか? 早口で、そこにオフビートな笑いや面白さがあるので、日本語だと尺が足りない。でも短くしようとすると、ウェスが今まで映画でやってきた、あの独特のリズムがなくなっちゃうんです。それを作るのに四苦八苦して、延々と修正を重ねているうちに、「何で俺がこんなことやらなきゃいけないんだ?」と思えてきました。

——声優のアフレコはすべてiPhoneで?

野村:最初の頃にニューヨークで録ったり、スタジオに入ったものもありますけど、ほぼiPhoneです。あとは僕がJ-WAVEでラジオ番組(「TRAVELLING WITHOUT MOVING」)をやっているので、収録が終わった後にスタッフに残ってもらって録りました。(絵コンテ段階の仮収録では)僕が突然わけのわからないセリフを言い出したので、みんなは「何を言っているんだ?」とクエスチョンマークでしたけどね。その音源を聴いたウェスから、「お前の声は悪役っぽいし、市長っぽいから残す」と言われて。「別にいいけど、僕は演技したことないし、(日本語のセリフ回しの)良い悪いは誰がジャッジするんだ?」と聞いたら、「聞けばわかるから心配しなくていい」と。ほんとかよ…と思いましたけど。

——野村さんの声は小林市長役にめちゃくちゃハマっていましたよね。特に最初の演説のシーンは別人のようで驚きました。

野村:大きい声で、ちょっと独裁者のように話すべきかな、というのがあったので。あとは今思い出したけど、(キャスティングが決まる前は)全員の声をひとりでやっていたので、誰かわかりやすいように全部声の調子をちょっとずつ変えていかないとダメかなと思ったんですよ。まあそれがよかったのか、自分も声優としてキャストされて…というか、そもそもキャストされていない(笑)。気づいたら、という感じです。

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©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

日本人にとっての特権は、世界的な監督が作った摩訶不思議な日本を誰よりも理解できること

——制作過程で監督から飛んでくる質問やリクエストの中で、最もチャレンジングだったものは何でしたか?

野村:ウェスはかなりのリサーチャーだし、正確なものを欲するんです。それと同時に、この映画はドキュメンタリーでもなければ、東京を舞台にしたわけでもない。舞台は60年代に考えた20年後の未来という架空の街で、そこには彼が想像した日本とか、そもそも60年代には存在しない機械とかテクノロジーもある。だから、そこでどうバランスを取っていくのかがすごく難しかったです。ウェスはしょっちゅう聞いてくるんですけど、映画の制作のプロセス自体が長いので、「これはいいけど、これはダメだよ」とか「これは残すべきだけど、ここはそうじゃない」というのが、その日の気分で変わっちゃいけないじゃないですか? 何しろ、(ストップモーションアニメは)1日撮って5秒みたいなシーンの連続なので、頭ではわかっていても、なかなかそれが理解できないということが、ものすごくありました。

——それは難しそうですね。

野村:日本人からしたら、たとえばお相撲や歌舞伎のシーンを作ると言われると、もろ日本というか、ベタとも感じられる。うがった日本人の気分でいると、「そんなもんなしだ」という自分も時には存在するけど、そうじゃなくて、世界で見てもありじゃないといけなくて…。そこをブレないようにしながら、イエス、ノーを伝えなければならないわけです。毎日では簡単なんですよ、僕は即決型の人間なので。ただそれを1週間、1ヶ月、1年…と続けていくのは、すごく難しかったです。

——本作においては、野村さんが原案チームにおける“日本代表”というか、かなりの重責ですよね。

野村:他(の日本人)がいないので、それにも途中で気づいて、面倒くさい立場になったなと思いました。ただ、『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)で仕事をしたときに、今ほど日本に外国人が多くない時代だったんですが、脚本に渋谷のスクランブルを撮りたいとか、カラオケを撮りたいとかあって、僕らはそんなシーンはベタすぎると思ったんですよね。だって、ニュースやドラマのシーンで出てくるし、何がスペシャルなんだ、と。だけど実際にあがったときに、こんなにきれいに撮るんだと思って。ああいう女の子が日本に来て、ちょっと孤独を感じるシーンで使ったり、友だちができて連れ回されたときのカラオケだったり、それはシーンとしてはものすごく生きてくるし、灯台下暗しというか、東京の人が東京タワーに行かないような感じかもしれない。考えてみれば、こういう風に渋谷を撮る人っていなかったかも、と思いました。その後はめちゃくちゃ増えたけど。

——本作でもお寿司のシーンとか、確かにベタな日本のイメージなのかもしれないですが、あれをウェス・アンダーソンらしい、ディテールにとことんこだわった独特の世界観の中で観られたことに感動しました。

野村:ていうか、あそこだけすごい念入りに作ることからして面白いよね(笑)。もう作りたいからやっている、というのが爆発しているし。それに、完全にすべてが正確というよりも、イマジネーションが入っていて面白いなと。そこは放っておくべきだろう、みたいな。毒わさびとかウケるじゃないですか? 日本人ならなかなかできないようなことを観られたりするし、日本人にとって本作での特権は、世界的な監督が作った摩訶不思議な日本を誰よりも理解できること。そこはすごく楽しい見方なのかなと思います。

——日本語と英語が同じシーンで飛び交っていて、ものすごい情報量ですよね。

野村:他の国だと日本人の声は日本人が話していて、(各国の言葉で話す)ナレーターやニュースキャスターの話で筋を知るわけですが、日本人にとっては全部聞こえてきちゃうので、1番情報量が多いんですよ。

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Image: Victor Nomoto - METACRAFT

セリフの収録時は秘密主義なので、「お前は科学者A」とか、役名とセリフを1個しか教えられなかった

——キャストも本当に豪華ですね。ベルリン国際映画祭の記者会見で、ビル・マーレイが本作のオールスターキャストについて、「まるで『We Are The World』(1985年リリースの豪華アーティストが多数参加したチャリティシングル)のようで、たとえ1ヴァースしか歌えなかったとしても参加したいと思った」と語っていたのが印象的でした。野村さんは、この豪華な面々とあの場に登壇していかがでしたか?

野村:僕は別に俳優でもないし、緊張もしなければ、「あ、そう」って感じでした。(ベルリンでは)伝達がうまくいっていなくて、あの記者会見の夜がレッドカーペットだったんですけど、そのときは絶対にスーツを着るように言われていたんです。「それだけでいいんだね?」と確認して、朝ホテルの下で集合だというから、パジャマのTシャツに毛皮のコートを引っ掛けて下に降りたら、そのまま車に乗せられて、記者会見に連れて行かれて…。みんなスーツなのに俺だけ「jackass」のTシャツで出ちゃって、スペインかなんかのTVのヤツに「I love jackass!」とか言われました。でも、(「jackass」は)監督違うよね?みたいな。

——そうだったんですね(笑)。ベルリン国際映画祭には夏木マリさんやRADWIMPSの野田洋次郎さんも参加されていましたが、日本の映画ファンは日本人キャストも楽しみにしていると思います。

野村:本作はアメリカではオールスターキャストで話題になっていますが、日本ではこれまでニッチな扱いだったので、僕は僕なりに日本のウェス組みたいなのを作ってやろうと思ったんです。もともと設定はなかったんですけど、ウェスと話しながら、たとえセリフが一言しかない役でも(年齢が)いくつで、どういう人間で、どういう声でしゃべる人かというのを決めました。それから、自分が知っている俳優とかミュージシャンの中で、イメージが近くて、なおかつ互いが知っているヤツをパズルのように組み合わせています。

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©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

——ものすごく豪華なラインアップですよね。

野村:でも秘密主義なので、「お前は科学者A」とか、役名とセリフを1個しか教えなかったから、まったくみんなわけがわかっていなかった(笑)。

——怪しい(笑)。

野村:「すごい難しいね、このセリフ…これを本当に言うの?」とか言われて、「いや、難しくしないと面白くないんで」と。そこにいきなり俺の演技指導が入っちゃって、「いいけど、語尾上げないほうがいいね」とか言って。でも、面白いかなと思って。松田兄弟(龍平・翔太)や(山田)孝之も参加しています。

——エンドロールを見てびっくりしました。

野村:孝之は監督もほめていて、「キャラを全部変えました」って3パターン送ってきたんですけど、本当にどれも違っていて。ウェスに送ったら、「この子は上手いね!はい、採用」みたいな感じでした。

——監督の好みのトーンはあるのですか?

野村:あるし、相当長くやっていたから、だんだんイタコ状態になってきて、これはダメだとか勝手にわかるようになってきました(笑)。孝之に監督がほめていたと伝えたら、「ほんと? うれしい! どれが気に入ってた?」と言うから「1番目」と言ったら、「やっぱり?」みたいな。

——野田洋次郎さんの声も別人のようで、最初は気づかなかったです。

野村:洋次郎は、実は違う役を頼もうと思っていたんです。でも、ウェスが「この子の声はニュースキャスターがいいかもしれない」と言うから、急きょ変えることになって。洋次郎がニュースキャスター!?と思って、セリフをもう1回読んでもらったら、確かにニュースっぽいんですよ。「西の上空から、低気圧が…」みたいな。ただ、あいつもそれが何の役で、どう使われるかもわかっていなくて、「犬の話でニュースキャスター??」という感じでした。ベルリンで初めて(完成した作品を)観て、「これかー!」みたいな。夏木(マリ)さんもそうでした。

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©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

大友克洋さんも黒澤明監督のことは好きで、「この監督は本当にマニアだね」とおっしゃっていた

——監督は黒澤明監督から受けた影響を公言されていて、劇中では『七人の侍』の音楽が流れたり、ゴミの島のセットが『どですかでん』を想起させたりと、それは随所に感じられました。野村さんの編集者としての目線から、もし黒澤監督が存命でこの映画を観たら何とおっしゃったと思いますか?

野村:(黒澤監督は)ああいう形で絶対に映画を作らないと思うので、面白がったんじゃないのかなとは思います。昔ヒップホップができたときに、サンプリングされたアーティストの中には、もちろん金がなくて「金払え!」という人もいたらしいんですけど、自分の作品からまったくの別物を作っていることを面白がった人たちもいたらしいです。そういうヒップホップに近いのかな、と。「あの破片を、こう持ってきたかい」みたいな。

——なるほど。

野村:まあ、それは関係者目線で良い風に解釈しているだけかもしれないですけど(笑)。でも、ウェスは今の時代にああいう風に日本の映画からの影響を取り入れてくれて、実際にものすごい時間を費やして作っていて、愛なくやっているわけでも、適当にやっているわけでもないです。黒澤作品を観たことがない日本人って多いと思うんですけど、逆にウェスは最近人気の監督だし、「とりあえず観なきゃ」と思った若い子が、きっかけは何でもいいから観てもらえたらいいのかなと思います。

——確かにそうですよね。『犬ヶ島』を観たら、あらためて黒澤作品を観たくなりました。

野村:ウェスは黒澤監督だけでなく、僕が出会った頃から今村昌平とか溝口(健二)とかすごい好きで、観ていますね。今回は大友克洋さんにポスターを描いてもらおうということになって、でも、映画のラフを見せないと何ともわからないじゃないですか? FOXに言うと守秘義務があって絶対に厳しいので、ウェスと相談して、勝手に僕の端末からストリーミングで1回だけ観られるように設定して、大友さんのところへ見せに行ったんです。そうしたら、大友さんも結構笑っていて「僕はもともと映画監督になりたくて、漫画は自分一人で作れる映画みたいなところがあるから。でも、本当にやりたかったんです」と。黒澤明も大好きで、ウェスについて「この監督は本当にマニアだね」とおっしゃって、外国人で『七人の侍』の音まで使っているのに驚いていました。すごく喜んでくれたんですけど、「世界が完成され過ぎていて自分が何をやればいいのかわからないから、考えさせてくれ」と。そこから実際にペンを取ってもらうまでが大変でした。

——素晴らしいポスターですよね。

野村:最近はああいうガッシュで描くことはないそうです。自分の回顧展でもGペンで描くことが多いらしく、担当の編集の子が、「ガッシュでここまで描くには着色に1週間はかかるから、本当に力入れていますよ」と言っていました。

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©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

夏休みに読んだ「エルマーとりゅう」みたいな話だから、ストーリーを純粋に味わって欲しい

——5月25日には、ついに日本でも公開されます。完成までは長い旅だったと思いますが、最終的に日本のオーディエンスには何を持ち帰ってほしいですか?

野村:ウェスの作品はおしゃれだとか、コスチュームやセットがかわいいとか、色がすごいとかっていう、ヴィジュアルや音楽の素晴らしさで語られがちなのですが、いろんな見方ができる映画だと思うんです。『グランド・ブダペスト・ホテル』がすごくキャッチーだったので、今回は人形を使ったストップモーションというだけで、子ども向けだと考える人もいると思うんですけど…「おしゃれなの?」とか。

——(笑)。

野村:別にそんなヤツは観なくていいと思っちゃうんですけど(笑)。だけど、そういう先入観抜きで観てもらいたいし、音楽だけ聴いてもいいし、セットに興味がある人たちはセットだけを観てもいいし、ただ、複数回観てもらえたらいいなと思います。でも、そういういろんなものを取り除いたら、お話自体は少年と犬との友情だったり、僕らが小学生の頃に図書館で読んでいた冒険もののような作品です。だって、無人島があって、そこに犬を探しに行って、いろんな地形があって…僕が小学生だったら夢中になって読んでいたような話ですから。夏休みに読んだ「エルマーとりゅう」みたいな、そういう話だから、ストーリーを純粋に味わってほしいです。

——監督の作品では、バックグラウンドの違う登場人物たちが友情を育み、力を合わせて困難を乗り越えるというテーマが度々感じられるのですが、それは本作が完成するまでの監督と野村さんにも当てはまるのではないでしょうか?

野村:困難を乗り越えられていたらいいんですけど…作業的には越えたけど、越えた先に良いものができたかどうかジャッジするのは観る人たちなので。僕らの苦労とか…“僕ら”というより“僕”の苦労だけど(笑)。僕の苦労とか僕の苦悩とかは、自分にしかわからない。「期待してますよ!」とか「ウェスの新作すごそう」とか言われるたびに、聞きたくないです(笑)

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Image: Victor Nomoto - METACRAFT

——監督は何かおっしゃっていましたか?

野村:ウェスは公開前にも「ありがとう」と意味深く言ってくれたんだけど、それは誰にでも言うでしょう、こんなに仕事をしたんだから(笑)。途中でトンヅラもせず、金の話も何もせず、何百時間使ったんだ、俺は?と。「手伝ってくれ」の一言から、どんだけふくらましてるのかって話だけど、引き受けた以上はちゃんと返したかった。ベルリンに行ったらすごく反応が良くて、初めて観た人たちも喜んでいたけど、それでも納得しなかったです。そもそも招待作品だし、開会式で反応いいのは当たり前だろうし。それから帰って10日くらいして、別の仕事でアメリカに行ったときに、ベルリンでシルバーベア(銀熊賞)を受賞したことがわかりました。しかも、それが監督賞だったから、アニメでは金熊賞(最優秀作品賞)は取れないだろうけど、監督賞は作品賞に近いじゃないですか?話も良くて、監督がちゃんとディレクションして、作品として成立しているからこその監督賞なのであって。ヴィジュアルだけではないところでウェスが評価されたので、手伝った自分としては、そこで初めて肩の荷が下りました。責任は果たしたぞ、と思いましたね。

——ある意味、本作では野村さんも監督されていますしね。

野村:いや…もう二度とやれない。映画なんてやっていたら、あっという間に人生終わっちゃうよ(笑)。


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公開を目前に控えた5月21日、ウェス・アンダーソン監督とキャストのコーユー・ランキン(主人公アタリ役)、ジェフ・ゴールドブラム(デューク役)が緊急来日を果たし、都内でスペシャルイベントが開催された。13年ぶりの来日となった監督は、「このアイデアが浮かんだ日から、こういった舞台で日本の皆さんの前に立って、こうやってお話することをずっと楽しみにしていたんだ。この映画の日本は僕のイマジネーションでできていて、日本の文化や日本の方々、そして何より日本の映画にインスピレーションを受けている。日本人のみんなからすると、慣れ親しんでいることと異なる部分もあるかもしれないけれど、とにかくみんなには楽しんでほしいと思っているよ」とコメントした。

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野村訓市
1973年、東京都生まれ。世界86人のクリエイターをインタビューした「sputnik: whole life catalogue」を発行。以降、国内外でカルチャー、建築、音楽、ファッションに関するライター・エディターとして活躍。2004年に内装デザイン会社TRIPSTERを設立。俳優としても『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)、『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)に出演。『犬ヶ島』では原案/キャスティングディレクターを務める

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『犬ヶ島』

監督: ウェス・アンダーソン

キャスト: ブライアン・クランストン、コーユー・ランキン、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、野村訓市、グレタ・ガーウィグ、フランシス・マクドーマンド、スカーレット・ヨハンソン、ヨーコ・オノ、ティルダ・スウィントン、野田洋次郎(RADWIMPS)、村上虹郎、渡辺謙、夏木マリ

配給: 20世紀FOX映画

5月25日(金) 全国ロードショー

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

URL:映画『犬ヶ島』公式サイト

Image: Victor Nomoto - METACRAFT, ©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
Source: 映画『犬ヶ島』公式サイト

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