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4 #海外ドラマは嘘をつかない

『スター・トレック』50年の歴史、それは公民権運動からベトナム戦争の時代に芽生えた「理想と夢」の轍 対談:☆Taku Takahashi(m-flo/block.fm)×田中宗一郎

DIGITAL CULTURE
コントリビューター小林 祥晴
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もはや50年近い歴史を持つ『スター・トレック』を語る言葉は多岐に渡っている。「差別と貧困のなくなった未来」を舞台にした60年代のポップ・カルチャーを代表する作品。公民権運動時代に白人と黒人による「異人種間のキス・シーン」をはじめて公共の電波に乗せた作品。そのシリーズごとにアメリカ政府による外交政策と世界の関係をアナロジーとして描いてきた時代の写し鏡。コスプレや萌え、腐女子的視点、コンベンション大会といった現在の世界的ナード・カルチャーの起点となった作品。つまり、一般的な「SF宇宙活劇ドラマ」というイメージだけには留まらない、どこまでも多面的なシリーズ作品なのだ。

『スター・トレック』最初のTVシリーズが製作されたのは1966年のこと。当初はたったの3年で製作が打ち切られたものの、その後アメリカ各地で開催されたファンのためのコンベンション大会の存在もあって、次第に全米中で人気が白熱。作者であるジーン・ロッデンベリーの理想を託した物語世界は「トレッキー」と呼ばれる熱心なファンを数多く生むこととなった。1977年に映画『スター・ウォーズ』が世界中で大ヒットしたことを追い風に1979年に復活。その後も映画シリーズ、TVドラマ・シリーズの続編が幾度ともなく製作され、50年以上が経った今もなお熱狂的な支持を集め続けている。

つい最近も、昨年から今年2018年にかけてCBSが製作した新シリーズ『ディスカバリー』のエピソード1が公開されたばかりだが(日本も含めアメリカ国外ではNetflixが世界配信中)、これまでに製作されてきた作品は、TVドラマ・シリーズが6本、映画が13本、アニメ・シリーズが1本と膨大。すべてを網羅しようとすると、丸一ヶ月あっても時間が足りない。一度は『スター・トレック』を観てみたいと思っていても、どこから入っていいかわからない、どう楽しめばいいかわからない、と感じている人も多いのではないだろうか。

『スター・トレック』ドラマシリーズ一覧

『TOS』宇宙大作戦/Star Trek
(1966年9月8日 - 1969年6月3日)3シーズン

『TNG』新スタートレック/Star Trek: The Next Generation
(1987年9月28日 - 1994年5月23日)7シーズン

『DS9』スタートレック:ディープ・スペース・ナイン/Star Trek: Deep Space Nine
(1993年1月2日 - 1999年5月29日)7シーズン

『VOY』スタートレック:ヴォイジャー/Star Trek: Voyager
(1995年1月16日 - 2001年5月23日)7シーズン

『ENT』スタートレック:エンタープライズ/Star Trek: Enterprise
(2001年9月26日 - 2005年5月13日)4シーズン

『DSC』スタートレック:ディスカバリー/Star Trek: Discovery
(2017年9月24日〜)1シーズン

『スター・トレック』劇場版 一覧

『TMP』スタートレック/Star Trek: The Motion Picture(1979)

『TWOK』スタートレックII カーンの逆襲/Star Trek II:The Wrath of Khan(1982年)

『TSFS』スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!/Star Trek III:The Search for Spock(1984年)

『TVH』スタートレックIV 故郷への長い道/Star Trek IV:The Voyage Home(1986年)

『TFF』スタートレックV 新たなる未知へ/Star Trek V:The Final Frontier(1989年)

『TUC』スタートレックVI 未知の世界/Star Trek VI:The Undiscovered Country(1991年)

そこで本稿では、日本のトレッキーを自認する二人——m-floの☆Taku Takahashiと〈The Sign Magazine〉の田中宗一郎(二匹の飼い猫の片方は『スター・トレック』の主要キャラクターから名付けたチェコフという名前を持つ)にその魅力を語ってもらった。

なお、☆Taku Takahashiと田中宗一郎の対話は3つのパートにわかれている。全体の入り口となる総論編、そして2010年代屈指の重要作について語った『ゲーム・オブ・スローンズ』編も公開されているので、ぜひあわせて読んでいただきたい。


初期『スター・トレック』に託されていた「真のリベラル」の理想

田中:『ゲーム・オブ・スローンズ』も膨大だといわれていますけど、現在公開されているエピソードは7つ。現在製作中の最終シーズンを入れても、せいぜい8シーズンですよね。でも、『スター・トレック』の場合はその比じゃないわけですよね?

Taku:初代の『TOS』(*ジ・オリジナル・シリーズの略。1966年から1969年にかけて放送された、最初の『スター・トレック』作品)が3シーズン、『新スター・トレック』と呼ばれる『TNG』(*ザ・ネクスト・ジェネレーションの略。1987年から1994年にかけて放送されたテレビ版第二作)が7シーズン、次の『DS9(ディープ・スペース・ナイン)』が7シーズン、その次の『ボイジャー』が7シーズン、その次の『エンタープライズ』が4シーズンかな?

田中:で、昨年2017年から『ディスカバリー』が始まって、これは2シーズンが確定してると。なおかつ、テレビ・シリーズ以外に映画が13本ありますよね。そうすると、普通はどこから入っていいかわからないとなってしまうと思うんですが、Takuさんはどこから入られたんですか? もしくは、どのシリーズを一番評価しているんでしょうか?

Taku:僕は『スター・トレック』は『TOS』じゃなくて、『TNG』なんですね。『TNG』はシーズン3から見てました。シーズン1からじゃなくて。なんでそれができるかっていうと、『TNG』は長い目で見ると一つのストーリーになってるんですけど、1話完結ベースだから、シーズン3からでも見れるんですよね。『ゲーム・オブ・スローンズ』とかは一話から見なきゃいけないですけど。

田中:なるほど。世界的な定説のひとつとして、「もし『スター・トレック』を見始めるなら、まず『TNG』のシーズン3から始めろ」という視点があるわけですけど、Takuさんもそれと同意見だってことですね。じゃあ、Takuさんは、ご自身が一番尊敬する人物として、『スター・トレック』の生みの親であり、『TOS』や『TNG』を手掛けたジーン・ロッデンベリーを挙げてらっしゃいますよね?

Taku:うーん、今だったらジョージ・R・R・マーティン(『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作小説『氷と炎の歌』の作者)かな。

田中:それ、(『ゲーム・オブ・スローンズ』をTakuさんに勧めてきた)丸屋さんの思うツボじゃないですか(笑)

Taku:(笑)いや、一番尊敬する人は『Ted』のセス・マクファーレンかもしれない。彼については、また後で話したいことがあるので取って置かせてください。

田中:わかりました(笑)。

Taku:で、もちろんジーン・ロッデンベリーは尊敬しているんですよ。彼はめちゃくちゃリベラルな人じゃないですか。僕、リベラル信者なんで。右翼でも左翼でもなくリベラル。僕からすると、日本の右翼も左翼もコンサバなんですよ。

田中:わかります。リベラルらしいリベラルがどこにもいない。それって、日本だと311以降、アメリカだとオバマが任期を終えてから、世界的に強まってる傾向だと僕自身は感じています。

Taku:自分とは違う価値観が好きとはいわなくてもいいけど、それが存在することを認めるっていうリベラルの考え方が僕は好きなので。『スター・トレック』ってまさにそこじゃないですか。

田中:その通りですね。そもそもの『スター・トレック』的な価値観の出発点であり、今もずっとその視点が貫かれている。

Taku:『スター・トレック』では、それぞれに信じる正義があって、そこで価値観のぶつかり合いがガツンガツン見えるんですよね。見てる方からすると、こいつの立場もわかるし、あいつの対場もわかるっていう。

田中:実際、『スター・トレック』が提示しているテーマは、我々が社会で経験している諸問題ですからね。で、そこをクリアしていくのが、我々の人類のひとつの目標だっていうメッセージがある。

Taku:『TNG』のシーズン1と2がつまらない理由は、キャラクター同士のぶつかり合いがほとんどなかったからだと思うんです。『スター・トレック』の世界は「通貨がなくても、みんな幸せになれるよ」とか、ユートピアを描いている側面がありますけど、シーズン1と2はユートピアを描き過ぎているんですよね。

田中:ユートピア的な世界観に固執するあまり、ドラマが確立しなくなってしまった。映画『スター・トレック』第一作が商業的に失敗したことで映画の現場から外されてしまい、新ドラマ・シリーズ『TNG』の陣頭指揮を取ったジーン・ロッデンベリーが脚本家チームが書いた脚本をすべて書き直したり、ボツにしたりしていって。

Taku:そうなんです。だって、シーズン1と2では、緊急事態が起こっても走らないんですよ!

田中:(笑)。

Taku:歩くんですよ。おかしいと思うじゃないですか(笑)。

田中:さすがに無理がありますよね(笑)。

Taku:やっぱり人間の可能性を信じているっていうのが僕がジーン・ロッデンベリーを尊敬しているところですね。『TOS』が放送されていた時期って、なんか変なこと言ったら、すぐに「お前は赤だ」って共産主義者のレッテルを貼られる時代じゃないですか。でも舞台を未来にしたら、現実ではタブーな話も入れ込める。それが『TOS』のコンセプトだったと本人も言ってて。『TNG』のシーズン3以降は、特にそういったコンセプトが凝縮されていると思うですよね。僕はそこがすごく好きなんです。

田中:わかります。

Taku:田中さんは『ディスカバリー』も見られてます?

田中:見ました、今公開されているエピソード1の最後まで。

Taku:僕はあと1話で終わりです。どうですか、『ディスカバリー』は?

Video: Netflix Japan/YouTube

田中:4話くらいまで見た時点では、「これは『スター・トレック』じゃない!」と思いましたね。『TOS』、『TNG』でとても大切にされていたものが全部、反故(ほご)にされているじゃないかと。

Taku:(机を乗り出して、田中に握手を求める)。

田中:(笑)でも、5~7話辺りから、少しづつ『スター・トレック』らしい演出を見せ始めて、なるほどなと。だから、まずトレッキー以外の人々にも入りやすい導入を作るっていう苦労の跡を感じました。

Taku:そうなんですよね。ただ僕は、いまだにあれは『スター・トレック』と思えてないんですよ。「ちゃんと『TOS』のネタを使って、パラレル・ワールドを作ってるね」という風に理解することで、面白いSFだと見られるようになってきたんですけど。

田中:なるほど。

Taku:僕が『ディスカバリー』になかなかハマれなかった理由も自分のなかでははっきりしていて。ちょうど『ディスカバリー』と同じタイミングで、『オービル』っていう作品がやっていて。これは日本未上陸なんですけど。

田中:是非どんな作品なのか、教えてください。

Taku:こういうものなんですけど(スマホで見せる)。

田中: あっ! これはまんま『スター・トレック』ですね(笑)。

Video: moviemaniacsDE/YouTube

Taku:そうなんですよ。で、これを作っているのが、さっき尊敬する人物として名前を挙げたセス・マクファーレンで。

田中:なるほど、そういうことだったんですね。

Taku:セス・マクファーレンって、超トレッキーなんですよ。彼は有名な作品が日本ではやってないんですけど、日本で一番知られているのが『Ted』。『Ted 2』にはコミコンのシーンがあって、そこにエンタープライズがボコーンって落っこちてくるんですけど、それは完全に『スター・トレック』へのリスペクトで。そんな彼が「俺の『スター・トレック』を作る!」と言ってやってるのが『オービル』。これが超TNGなんです。

田中:なるほど。

Taku:もうパクりにパクりまくっていて、本当にパロディなんですね。『ディープ・スペース・ナイン』でベンジャミン・シスコの恋人、キャシディ役で出ていたペニー・ジョンソンをわざわざキャスティングしていたり、さらにプロデューサーとして数々の『スター・トレック』シリーズの脚本を手がけたブラノン・ブラガもまだ招集してて。しかも、オープニング前でアバンが流れます、さらに「フィーン…ッ」で音止まります、テーマ・ソング流れます——その流れも完全に『TNG』で。ほかのシーンの作り方も、『TNG』をすっごいオマージュしまくっているんですよ。

田中:なるほど、なるほど。

Taku:で、コメディ番組なんですね。でも、本当にコメディにして笑わすっていうよりも、どちらかと言うと、「今、トレッキーが求めてるの『TNG』なんじゃない?」っていうのを作っていて。『スター・トレック』よりも『スター・トレック』っぽいもの作っちゃったんすよ。「これこれ! この『スター・トレック』が見たかったんだよ!」っていうのが『オービル』にはあるので。

田中:そうなっちゃうと、『ディスカバリー』は楽しめないですね(笑)。そこを具体的に教えていただけますか?

Taku:たとえば、2話目は男同士の種族の話なんですね。男同士で妊娠するんですけど、何年かに一回、女の子が生まれちゃうんですよ。もし女の子が生まれた場合、赤ちゃんのタイミングで性転換する社会が描かれている。でもそれって、この惑星連邦の社会通念からすると、「認めるけど、ありなの?」っていうことで議論されるエピソードがあったりとか。

田中:つまり、アメリカだけでなく全世界における現代的イシューであるジェンダーの問題や、カソリックが禁止してる妊娠中絶のアナロジーになってる。それこそまさに『スター・トレック』がやってきたことですね。

Taku:そうなんですよ。これって『スター・トレック』じゃん! っていう(笑)。いっぽうの『ディスカバリー』は、『DS9』寄りと言えば『DS9』寄りなんですけど、「社会的にこれはありなの?なしなの?」っていう問題提起をするというより、「戦争SF映画」じゃないですか。

田中:新規のファンを獲得するためのフックが必要という判断だったんですかね。ただ、そもそも60年代半ばに『スター・トレック』が始めたといっても過言ではない多様性っていうテーマを筆頭に、LGBTやジェンダーの問題、環境問題、動物愛護、特に民族同士の文化の違いと衝突、同じ民族/国家内での分断や内戦状態といった現代的なイシューはしっかりと盛り込んでいて。でも、結果的に戦争活劇的な部分にフォーカスしちゃいましたよね。

田中:たしかに(笑)。今、『アトランタ』とかもそうなんですけど、〈FOX〉が製作してるドラマは日本だと配信先が不安定で、なかなか観る機会に恵まれないんですよね。

Taku:でも、あの右翼メディア〈FOX〉が超リベラルな番組をやってるんですよ。すごいですよね。

険しい時代にもオプティミズムを忘れない「コメディ性」

田中:そうそう。で、Takuさんもおっしゃったように、基本的に『スター・トレック』は時代の写し鏡として機能してきたと思うんですよ。でも、『DS9』の場合は、作られた時期がレーガン大統領以降、ブッシュの時期ということもあって、社会と政治を反映しすぎているところがある。だから、すべてのシーズンのなかで一番シリアスなんですよね。

Taku:うん、『DS9』はそうですね。

田中:だから、『DS9』になると、最初にジーン・ロッデンベリーが提示した理想的ビジョンや、キャプテン・カークに代表される荒唐無稽なオプティミズムが目減りしてしまって、かなり息苦しいシリーズ作品になってしまった。今回の『ディスカバリー』についてもそれに近いことが起こってる気がします。悪い意味で、今の内戦状態にあるアメリカの社会状況を反映しすぎちゃったというか。シリアスすぎるし、リアリズムを意識しすぎてる。

Taku:ええ。とはいえ、『ディスカバリー』もストーリーとしては面白いと思うんですよ。最初にJ・J・エイブラムスがやった手法ですけど、「パラレル・ユニバース」を作っちゃったじゃないですか。『スター・トレック』ファンを一番黙らせる方法はそれですよね。もう何やってもOKになるから。

田中:つまり、「この作品は別物なんだ」とあらかじめ提示するという。

Taku:で、僕が初めて『ディスカバリー』で面白いと思ったのが、タイムリープの話なんです。何度も同じことが繰り返されるあのエピソードで何がよかったかと言うと、そこに恋愛が組み込まれた点で。

田中:いやー、あれはロマンティックでしたね。最高でした。

Taku:「僕らは違う時空のタイミングで一回キスしてるんだよね」みたいな。僕、リピートするやつが大好きなんですよ。うる星やつらの『ビューティフルドリーマー』も大好きですし。僕は押井作品で唯一好きなのが、『ビューティフルドリーマー』ですから。

田中:僕も同じです。ほかの押井作品は、やっぱり社会の写し鏡になり過ぎているきらいがありますからね。軍事とか、国家レベルの安全保障の問題とか。

Taku:とにかく、あのリピートするエピソードですよね。しかも、そのなかに『TOS』のキャラクターも出てくるし、面白いなって。あれは割と一話完結感が強かったから、『スター・トレック』っぽいとも思いましたし。

田中:そうそう。『TNG』辺りまではほぼ1話完結のプロットだったんですよね。その面白さは、今、ドラマ全体から失われてるもののひとつだと思います。今も英国製作の『ブラック・ミラー』みたいに1話完結で頑張ってる作品もありますけど、大半は8話なり、12話なりの1エピソードで一つのドラマが完結する形式になっていますから。

Taku:それだと刺激を出しづらいんですよね。『オービル』もそういう刺激はあんまりないんですよ。『ディスカバリー』はシリアス路線が中心ですけど、科学者(ポール・スタメッツ)を演じたアンソニー・ラップがいいコメディ・エッセンスを注入していますよね。

田中:そうなんですよ。だから、ちょうどシーズンの真ん中くらいはコメディ・エッセンスが強かったりとか、割と『スター・トレック』らしさを出していた。

Taku:僕は強いていうんだったら、本当は『ボイジャー』以降の『スター・トレック』が見たかったです。『TOS』以前を描いたものじゃなくて。「えっ、これって『TOS』前でしょ? この技術は『TNG』以降じゃないの?」って思うところもありますから。SFとして考えれば面白いんですけど、ちょっと設定が破綻しちゃってるんですよね。

田中: そうですね(笑)。『TOS』の10年前の時代設定で、この戦時下のギスギスした世界観から10年後の理想社会に持っていけるのか?っていう。

Taku:ええ。ただ、そこはパラレル・ワールドでいっちゃうのかな、っていう感じはしますけどね(笑)。

異なる価値観同士が「信頼の絆」を結んだ時の「奇跡」

田中:じゃあ、Takuさん的にはJ・J・エイブラムスが手がけたリブート映画3作――『スター・トレック』(2009年)、『イントゥ・ダークネス』(2013年)、『BEYOND』(2016年)は、どういう風にご覧になられました?

Video: シネマトゥデイ/YouTube
Video: シネマトゥデイ/YouTube

Taku:1作目、2作目はよかったです。3作目は最悪でしたね。

田中:特に3作目は監督をジャスティン・リンにした時点で「投げた」感がありましたね。

Taku:J・J・エイブラムスも一応絡んでるっぽいですけど、とにかくストーリーとして何の面白みも感じないんですよ。だって、中年の危機を感じている艦長が、なぜかドンパチしたら「OK!」みたいに悩みが解消されてて。何の成長もないじゃないですか。

田中:(笑)。

Taku:「ショック療法で中年の危機は乗り越えられるんだ」みたいなメッセージしか感じられないんですよ。戦っているところで、中年の危機なり、いろんな葛藤が見えてきて、それで終わるんだったら面白いんですけど。でも、それを見せられなかった。唯一救いだったのは、ボーンズとスポックが2人になったところですけど、そこも短かったですし。あと、映画3作すべてに共通するのが、まずは艦隊戦をして、最後は素手の殴り合いして終わる、っていう流れ。またそのパターンか、っていう。僕は特に3作目は残念でしたね。

田中:僕は本当に『TOS』が大好きなので、やっぱりJ・J・エイブラムスは1作目から受け入れられなかったですね。スポックやコバヤシマル・テストの描写に関しては、怒りすら感じました。

Taku:僕はそこまで『TOS』が好きなタイプではないんで、熱心なファンを黙らすために、時間に異変を起こしてパラレル・ワールドを作ってしまうのは脚本的にうまいな、よく頑張ったな、と思っています。あと、要所要所に、『スター・トレック』を見てる人たちは喜ぶけど、わかんない人はわからないフレーズが散りばめられているところが、「あ、J・J・エイブラムスっぽいな」と。

田中:そうなんですよ。『スター・ウォーズ』のリブートもそうなんですけど、僕はそれがムカついてムカついてたまらなかったんです。「ほら、トリッキー用の餌を用意してあげたよ」っていってるような演出満載で。でも、それに思わず喜んでる自分にまた腹が立つっていう(笑)。

Taku:僕、餌パクパク食べちゃうほうだから(笑)。まあ「映画は大抵ダメだよね」っていうのが、昔からの安定した『スター・トレック』あるあるですよね(笑)。たまに面白いのもあるんですけど。

田中:僕は映画だと『スタートレックII カーンの逆襲』、『スタートレックIV 故郷への長い道』、『スタートレックVI 未知の世界』の3作は好きなんです。また別の世界的な定説のひとつとして、「『スター・トレック』映画を観るなら、2と4と6の偶数作品を観ろ。間違っても1と5だけは絶対に観るな」というのがあって、僕はその説を支持してるんですよ。

Taku:『I』とか——。

田中:マジきついですよ(笑)。

Taku:いまだに最後まで寝ずに見ることができないんですよ。『Ⅴ』はウィリアム・シャトナー監督…かな?

田中:そうです。最強の駄作です。ただ、『IV』と『VI』の2本は本当に大好きで。どちらも年に数回はDVDを見直して、その度に感動してます(笑)。

Taku:僕、「クジラ(『スタートレックIV 故郷への長い道』)」は大好きなんですよ。

田中:最高ですよね。公開が1986年なので、同時期の宮崎駿の『風の谷のナウシカ』とかもそうなんですけど、当時のエコロジーに対する意識の高まりを反映した作品で。ただ、そもそもの設定にしても、連発されるギャグにしても、すべてがあまりに下らなくて(笑)。

Taku:『スター・トレック』映画で初めてコメディ要素を強調した作品ですよね。あれ、海賊の話じゃないですか。惑星連邦にいた奴らが海賊になっちゃったみたいな話で。

田中:読者向けに説明すると、地球が壊滅的な状態になったので、80年代のアメリカにタイムワープして、いろんな資材を強奪して、クジラをつかまえて、未来に持って帰ってきて、すべて解決っていう(笑)。

Taku:しかも滑稽なんですよね。未来だったら普通のことでも、80年代の人たちから見たら滑稽に映るようなことを、うまく逆説的なギャグにしていたのがよかったですね。

田中:うっすらとした社会批評、文化批評もあるんだけど、完全にコメディ映画で。あの映画の下らなさ、度を超したオプティミズムも『スター・トレック』らしさのひとつだと思います。

Taku: 『スタートレックVI 未知の世界』はクリンゴンと条約結ぶやつでしたっけ?

田中: そうですそうです。公開が1991年で、1989年の暮れにベルリンの壁が崩壊した後の世界情勢を未来の設定に当てはめてるんですよね。あの映画でのクリンゴン帝国は、まんまソビエト連邦が崩壊して、急激に力を失っていく当時のロシアのアナロジーになっていて。

Taku:なるほど。

田中:基本的に、失笑もののご都合主義プロットが続いて大団円って映画なんですけど(笑)、やっぱり『スター・トレック』のオリジナル・シリーズの集大成なんですね。『TOS』の醍醐味って、メイン・キャラクターの三人——キャプテン・カーク、スポック、ボーンズが考え方もキャラクターもまったく違っていて、このトライアングルが常にぶつかり合うところじゃないですか?

Taku:そうなんですよ。

田中:頑固な熱血ヒューマニストのボーンズと、感情よりも論理性を優先させるスポックというふたつの価値観が常に衝突する。そこに究極の楽天家で破天荒なキャプテン・カークが加わることで、予想もつかなかった解決策を見つけるっていう。

Taku:……なんかね、それって僕からするとm-floのことみたいに聞こえてくるんですよ(笑)。

田中:なるほど(笑)。実際、3が一番難しい数字ですよね。2は夫婦だったり、分かり合える関係だと思うんですが、3は必ずぶつかる。3という数字こそが社会の始まりだと思うんですね。だから、『TOS』はメイン・キャラクターの三人の関係を使って、社会そのものを描いているとも言える。

Taku:なるほどね。

田中:旧約聖書のアナロジーを使うと、アダムとイブという安定した2に加えて、3つ目の立場としての蛇が出てきちゃう。だからこそ、3人というのは一番難しい関係だと思うんですけど、逆にそのトライアングルがハーモニーを奏でたときの素晴らしさは可能性に満ちている。Takuさんはそれをm-floで実感することがあるんですね?

Taku:そうなんですよ。3人で綺麗にハマったときは奇跡が生まれるんすよね。全員の価値観が違うし。

田中:僕自身は『TOS』の楽しみ方って、「異なる価値観同士が信頼の絆を結ぶことさえすれば、絵空事のような奇跡を可能にしてしまう」——その瞬間を目撃することだと思っていて。そういう意味からすると、スター・トレック映画の『VI』って、その集大成なんですよ。

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Image: 七咲友梨
Source: YouTube(1, 2, 3, 4

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