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6 #ユースカルチャーの育て方

yahyelが語る、ブレグジットへの危機意識と日本への警鐘「ユートピア的な音楽表現はすごく病的」

DIGITAL CULTUREIDEAS LAB
エディターJay Kogami
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2019年、イギリスのカルチャーが変わろうとしている。若く先進的なアーティストやクリエイターや、オールドスクールなアーティストたちが、ブレグジットをサヴァイブするための音楽を作りはじめているのだ。混沌とした時代を生きる人は、「音楽を消費」し「音楽でマネタイズ」する以外に何を感じて生きているのだろうか。

デビュー当時からイギリスの最先端な音楽シーンと常に並走してきた日本人バンド、yahyel(ヤイエル)の池貝 峻と篠田 ミルに、分裂するイギリスやロンドンの現在や、日本とイギリスとの音楽的多様性の違いについて話を聞いた。

yahyel
2015 年3月に池貝 峻、篠田 ミル、杉本 亘の3名によって結成。ライヴ活動の本格化に伴い、VJ の山田 健人、ドラマーの大井 一彌をメンバーに加え、現在の5人体制へ。2016年、ロンドンの老舗・ROUGH TRADE を含む全5箇所での欧州ツアー、FUJI ROCK FESTIVAL〈Rookie A Go Go〉ステージへの出演を経て、9月に初CD作品『Once/The Flare』をリリース。11 月にはデビュー・アルバム『Flesh and Blood』を発表し、コアな音楽愛好家たちを超えて同世代のリスナーへと鮮烈なインパクトを与え、一気に注目を集める。2017年にはFUJI ROCK FESTIVAL、VIVA LA ROCK、TAICOCLUBなどの音楽フェスへの出演も果たしたほか、WARPAINT、Mount Kimbie、alt-Jら海外アーティストの来日ツアーをサポート。そして2018年3月、さらに進化した彼らが自身のアイデンティティを突き詰め、より強固なものとして具現化したセカンド・アルバム『Human』をリリース。直後のSXSW出演を経て、韓国公演を含む初のリリースツアーを敢行。夏には、初のRising Sun Rock Festival、Summer Sonicにも出演、9月には東京公演を含むアジアツアーを行った。
http://yahyelmusic.com/

ポスト・ダブステップ時代に向けられるステレオタイプ

compo001

ーー今回FUZEでは「ロンドンのユースカルチャー」特集記事として、ブレグジットと現地のカルチャーに注目しています。ブレグジットが3月に始まる予定で、日本でもイギリスの政治やビジネスの話題が取りあげられはじめましたが、FUZEでは、ロンドンのクリエイターや音楽シーンにブレグジットがどんな影響があるのかを、yahyelのおふたりに語って頂ければと思いました。今のロンドンやイギリスの音楽シーンとはどのようなコミュニケーションをされていますか?

池貝峻: 去年6月に2週間ほど行ってました。コミュニケーションとしては、そうですね、普通に向こうで遊んでた(笑)。具体的にいうと、Mount Kimbie(マウント・キンビー)と一緒に過ごしていた。日本で彼らがツアーをやったときに、yahyelがサポートをやったつながりがあって、彼らに話を聞いたりとかしていたというのがひとつ。もうひとつは、僕らは単純に音楽が好きなので聴き続けたり。

ーーMount Kimbieとは、どういうお話をされていたんですか?

池貝: 彼らはいわゆるポスト・ダブステップという脈略で語られることが多くて、ひとつの時代を築きあげたふたりだから、彼ら自身に向けられるステレオタイプに対してすごく敏感になってるなという印象がありました。イギリスに住んでいるのはカイ(・カンポス)だけで、もうひとりのドム・メーカーはLAに住んでるんですけど。今も彼らが心地よい人たちと時間を過ごしてるし、信用できる人たちと同じコミュニティで過ごしてる感じでした。

Mount Kimbie - Blue Train Lines (Official Video) ft. King Krule

ーーロンドンで盛りあがっている音楽の話もしました?

池貝: ロンドンで今熱いシーンって言われるのは、Tom Misch(トム・ミッシュ)とかチルっぽい音楽や、ジャズ畑の人たちが新しいことをやりはじめたような、ポップだけどバカテク的なオシャレ感あるローファイな音。Mount Kimbieは、そういうものや、今まで通ってきた音楽とは表現が全然違うから、自分たちのやることをやるだけ、みたいな客観的な状態にいて、ある種の達観状態。その上で、サード・アルバム『Love What Survives』(2017年)を出してツアーが終わり、次何しようか的なフェーズに入ってるという感じ。問題意識を押し出すわけでもなく、何かに合わせようとかそういう方向性がない感じで安心しました。生活感あるし、すごく人間的ですよ。

ーー毎日スタジオでレコーディングして、という生活パターン?

池貝: 僕が行ったときは、『DJ Kicks』のコンピレーションをレコーディングしてましたね。毎日スタジオに行って、楽しそうに作業してました。DJミックスですけど、ギターのペダル使ってミックスしてみようとか。リバーブかましてたんだと思うんですけど。

Mount Kimbie & King Krule - Live in Paris

現地でライブを見た感じ、破壊衝動を発散させたいシーンなのかなと

ーー逆にロンドンで盛りあがってるシーンというのは、現地ではどれ位の熱量なのでしょう?

篠田ミル: サウス・ロンドンだとガイ(池貝)が言ってたような、ペッカム的なシーン、King Krule(キング・クルール)界隈、ブリット・スクール周りの人たちのコミュニティもあるし。サウス・ロンドンでもウィンドミル周りのShame(シェイム)、Goat Girl(ゴート・ガール)みたいなバンドもいる。UKアフロビートが盛りあがってるようないろいろなコンテクストもあるし。まぁ盛りあがってるんでしょうね。

池貝: 現地でライブを見た感じだと、僕はパンクを感じました。そういう感じの空気感だった気がします。

篠田: どこ行ったの? ウィンドミルとか行った?

池貝: そっちじゃない。全然。僕はずっと東の方。

篠田: 東なんだ。

Warmduscher - Standing On the Corner

池貝: Warmduscher(ヴァルムドゥーシャー)ってバンド、観に行ったんだよね。前座は全然知らないバンドだったけど、結構激しくて。パンク・ロック、インディー・ロックみたいな空気感が帰ってきてるなって印象。それに対する現地の人の熱量がすごかった。破壊衝動を発散させたいシーンなのかなと思った。だから僕にとっては、そういう対比がすごく新鮮です。僕らが好きだったロンドンの雰囲気、イメージは“濡れたリバービーな音”って感じですけど、現地の熱量はすごい生で、オーバードライブなギターをガンガンかき鳴らす音楽に、割とみんな早めのビートで首を振っているみたいな状況だったんです。そこと、Mount Kimbieのある種の客観的な姿勢と、現地の盛りあがりの対比がすごく面白かったです。

ロンドンのパンクに、今はアティチュードを感じる

ーーサウンド的にもパンク、80・90年代のロック調な音になっているって感じですか?

池貝: イギリスはそうなのかもしれないですね。

篠田: それこそMount Kimbieのサード・アルバムでも、ドラムのプロダクションとかは本当にパンクとかポスト・パンクっぽいことやってたし、そのトレンドはあると思う。

ーーブリット・スクールみたいなジャズだったりR&Bだったり、アーバン系もご覧になりました?

池貝: 好きだし全然聴いてますよ。けど、あくまで僕個人の見解で、向こうがどうとかはわからないですけど、僕は正直あんまり響かないですよね。おしゃれだとは思いますけど。それこそロンドンのパンクの方が今はアティチュードを感じる。

篠田: ブリット・スクール的なものはすごく階級色を感じるんですよね。多分アッパーミドルの、親とかもクリエイター系の子供たち、多分いいところの子供なんですよね。

池貝: まぁわかんないけどね(笑)。

篠田: いや、イギリスは結構そういう階級差あると思うよ。そこデカイよ。

池貝: でも皮肉ですよね。多分日本ならGoat Girlより、Tom Mischが来日した方が全然盛りあがる。イギリスだと「そうなんだ……」くらいの音楽が、日本だと「すごいチルいんだけど〜」みたいな脈略で消化されてくのを見てると、「日本人、大丈夫か?」って思うんですけど(笑)。

(編集部注:このインタビュー数日後、Tom Misch単独公演が発表された)

Goat Girl - The Man

イギリスのごちゃ混ぜ感が、表現の良し悪しを作る

ーー確かに一括りにロンドンの音として捉えられるのもすごく皮肉ですね。

池貝: ホント。そういうの日本だけだと思うんですよ。特にイギリスやロンドンは、多様性が多い方がシーンと呼ばれるだけであって、「日本人はこれが好きだよね」みたいな捉え方とはまったく違うと思うんですよね。

ーー特出したジャンルよりは、ごちゃ混ぜになっている方がシーンである。

池貝: ごちゃ混ぜ感があるからこそ表現の良し悪しが生まれるし、双方への影響もちゃんと届くと思いますよ。

ーーライブを観に来てるのは普通に現地の方なんですか? ただライブを楽しみに来てるって感じなんですかね?

池貝: いやもうホントそうです。まぁそれ以外の理由なんて絶対ないと思うんですよね(笑)。ライブは楽しいし、そんなに不自然なことじゃないという感じで。仕事帰りにお気に入りのハコに行って、出てる人を観に行くというのが、そんなに不自然なことじゃない。

篠田: 僕らがツアーで行ったときですらそうだったよね。だいたいバーに寄るついでに併設されてるライブスペースに観に来るみたいな感覚ですよ。別に誰が出てるとかも多分そんなに興味ない。

池貝: でもホント、それでいいんだと思う。単純に音楽の差が広いからこそ、個人が感じていることや、瞬間の空気感が、ちゃんと音楽の表現に吸い込まれているんだと思います。ベタベタに付き合う必要もなく、個人の表現が完結してるかたちが、僕は清く正しいなと思うんですけど。

ーーライブに行くってこと自体が、向こうのカルチャーとして定着している、馴染んでいる、そういうハコが多いと。

池貝: そうですね。

ーー平日も結構ライブやってるんですか?

池貝: 全然やってます。僕が行ったのもド平日ですね。

多様性あるシーンをユートピア的な美談にしないこと

ーーイギリスの人は今、どういう風に音楽を消化してるんですかね?

池貝: どうなんだろう? アイデンティティの一部のような感じはある。自分が何を好きかってことにちゃんと向き合い、音を聴いて、好きかどうかを探るようにして、その延長上で好きなものにまつわる情報を探っていく感覚。例えば「なんでこの人たち、こんなに怒ってるんだ?」に情報を広げていくツールのような気がします。

篠田: “シーンに多様性がある”というのが、ユートピア的な美談じゃないんですよね。人種や階級の分断がラディカルにあることが前提で、どういう音楽と付きあっていくかでそれぞれ個人のアイデンティティに結びついていく。その辺は密接な問題だと思うんですよね。

池貝: ホントそう。アイデンティティの問題だと思います。

ーーパンク自体が反政府主義、反産業主義な背景から来たじゃないですか。今のパンク的なアティチュードも人のアイデンティティにも紐づいているとも思われますか?

篠田: 脈々とあるんじゃないですかね。

池貝: イギリスのすごいところは、日本人が言う「パンクな姿勢だよね」みたいなことじゃなくて、パンクはみんな思ってることを代弁してくれてるものというイメージが身についている。疎外感がない。日本のシーンだと、ヒップホップやってる人はこんな感じだよね、パンクのアティチュードってこうだよね、みたいな「俺は他と違う」に行きがちなんですよね。イギリスは全然その感じがないです。もっと、「パンクな気持ちはみんな持っているよね」みたいな感じかも(笑)。

ーーパンクであることが、個人の主張でもある部分が強いという印象ですか?

池貝: 個人の表現に寛容だからだと思います。寛容だから「それいいよね」「でも俺はこれが好きかな」とお互いちゃんと会話ができる。すでに文化としてそうあるから。そこがいいですよね。

イギリスの若者のなかには、見えないレイヤーが多くある

ーー一方で、「若者」をセグメントしようという風潮もイギリスにあったりするのでしょうか? 例えば「若者の音楽」みたいな。

篠田: いや、括れないと思いますね。若者のなかにも、もっと見えないレイヤーがある。多分、アフリカ系イギリス人なのか、それともアッパーミドル系の白人なのか、ジャマイカ系なのか、チャヴなのかで、みんな生きてるレイヤーが違うはず。単純に若者で括れないと思うんですよね。そこは複雑だと思う。

池貝: ロンドンは若者の数も多いし。

Gabber: The Evil EDM - Big Night Out Episode 1

篠田: この前VICEで、“GABA(ガバ)”っていうBPM190ぐらいのジャンルの、バカ頭悪いミュージックで踊る、白人のワーキングクラスの若者たちのドキュメンタリーを見つけたんですよ(笑)。グライムだってイギリスの公営団地に住まざるを得ない、黒人たちの暗い生き様と密接に結びついてたり、いろいろなレイヤーがあると思う。「若者」でまとめられないはず。それに、若者じゃなくてもみんな音楽好きですよね。

池貝: それはあると思う。

ーー若者を強調しがちな部分って、音楽だけじゃなくて社会のなかでも多々あると思います。そのなかで、イギリスで音楽が果たしている役割や、音楽を作る人の責任はどうお考えですか?

池貝: それはどこの国でもかかわらずそうだと思いますけどね。僕らだってそうだと思いますし。だからその責任感なく音楽やってるって言われても、あんまり説得力ないなって思いますけどね。

yahyelで、日本人としてのアイデンティティとどう向き合うか

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ーーMount Kimbieが、ステレオタイプに敏感だったという姿勢にもつながる話ですね。

篠田: 日本でいう「政治的・社会的」って言い方とはちょっと重ならないかもしれないですけど、僕らは最初から一貫してアイデンティティ・ポリティクスの問題としてyahyelをやろうとしてきたから、日本人としてのアイデンティティやステレオタイプみたいなものとどう向き合うか、最初から表現していこうとやってきたつもりです。

池貝: だからこそ、僕らの会話でそういう対比が出てくるんだと思います。日本の人が捉えている音楽や表現自体に疑問も抱いていますし。東京で生まれた日本人として、自分の国へのヘイトもありますし、海外からのステレオタイプへのヘイトもありますし。僕らは直接的に物言うタイプのバンドなので。なんならちょっと挑発したいくらいですよ。他のバンドはそれがあるのかって(笑)。

篠田: イギリスとかアメリカのミュージシャンのなかには、階級とか人種とかの問題が国内で可視化された環境で育ってきた人たちがいるから、アイデンティティ・ポリティクスの問題を主題として取り入れやすかったと思うんです。けど、僕らの国にも本当はあるはずなのに、一億総中流/一億総日本人の夢のなかで、問題を見なかったこと、存在しないことにしてここまで生きてきたから。そろそろ可視化してあげなくちゃいけないよね、それができるのは僕らの世代だよねって話だと思います。

池貝: まさにそうだと思います。

ーー日本の音楽や映像の領域では、表現者がアイデンティティの問題を可視化したり提起したり発信すること自体にあまり関心が向かないということはありますか?

池貝: それが僕らの一番難しいところでもあります。そもそも日本の音楽に向けられている期待値自体が低いっていうのもありますけど。それ以上に、日本人が可視化したくないって壁を表現でどうぶち破るかっていうことだと思うのですが。イギリスもアメリカも、全然主題が違いますよね。

直接Mount Kimbieにぶちまけたことあるんですよ。「君たちはイギリスから来て、日本という白人至上主義の国のなかでツアーをしてるだけで、そもそもそれに気付いてる?」って。そしてら彼らは、全然気付いてるって。「知ってるけど、僕らにはどうしようもできない。僕らはそこにアイデンティティがないし、自分たちのことしか言うことができないから。それは君たちも同じじゃない?」確かに、そうだなと思った。じゃあ僕らがやらなきゃなって、火がついた。今は、責任を果たすのは当然のことなんじゃないかなって思います。一番くだらないのはビジネス化している音楽ですね。それが一番くだらない。そういう姿勢が大事な気がしますけどね。

誰がかっこいいとか、何がオシャレとか、そんな話どうでもいい

ーー海外のアーティストとの交流するなかで、アイデンティティ・ポリティクス、アイデンティティ・クライシス的な議論になったりすることはありますか?

池貝: 全然ありますよ。WARPAINT(ウォーペイント)のツアーを周ったとき、僕が彼女たちと話してたのは「僕らは、日本人というアイデンティティが嫌いだ」とか「日本人というアイデンティティが強すぎて、何をしても同じにされちゃうから、海外に出て行くのが辛いんだよね。だから外に行くのが難しい」とか言うと、「でも、私たちも同じだから」ってすごい言ってました。「私たちは全員女性のバンド。その厳しさって全然わかんないでしょ」って喧嘩腰で言われて「そりゃそうだわ」って返しました(笑)。

CHAI『フューチャー』Official Music Video

でも日本人だってみんな持っているはずですよ。それこそこないだCHAI(チャイ)のメンバーも言っていましたね。彼女たちは、そもそもコンプレックスに立ち向かうために音楽をやってて、それでPitchforkにまで取り上げられてて。潔い姿勢はすごくかっこいい。そういう芯があるバンドの方が、前に進めている気がします。CHAIはすごいわかりやすいですよね。

篠田: 音楽に限らず、あらゆるアートフォームにおいて、自分のことを主題にして作品を作ると、アイデンティティと向き合わざるを得ないと思います。それって、気持ちいいR&Bやっている人でも同じで。例えばMarvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)の曲だって、公民権運動につながってるじゃないですか。でも日本では、みんなそれは見なかったこと、聞かなかったことにしてて。そんななかで自己表現をやろうとすると、なんか抽象的でよく分からない「夢をかなえる!」みたいな題材になりがちなんですよね。

池貝: そういうユートピア的な音楽表現が今、前に出ているっていう日本の状態自体がすごく病的だと思いますね。それをもっと語った方がいいですよね。音楽を語る人、音楽が好きな人がもっとそこに気付いたらいいのになって思います。誰がかっこいいとか、何がオシャレとか、そんな話どうでもいいんで。日本人全員でドラッギーな音楽聴いてんだぞ、って(笑)。

篠田: そうそう、そんなの幻覚剤ですよ(笑)。シティ・ポップってどこのシティだよ(笑)。幻覚しか見えてないんじゃねぇのかって。そんなもんねぇよ(笑)!

日本の場合は、思考停止してないと誰かに潰されちゃうってみんな思ってる

yahyel - TAO (MV)

ーー思考停止している方が楽という感覚が日本で増えている。

池貝: 日本の場合は、思考停止してないと誰かに潰されちゃうってみんな思ってる気がしますね。

篠田: 麻痺してレールに乗ってかないといけない社会。

池貝: イギリスとかアメリカは、今でもそうじゃない。どれだけ自己表現できるかという社会をサバイブしていかなきゃいけないから。日本で生まれた身としては、サバイバルって激しい表現ですけど、向こうだと逆にそれでOKな世界。

ーートランプ政権移行時の白人至上主義のように、ブレグジットによる英国至上主義的な思想が進めば、悪い意味で日本のような単一民族国家的な思想が強くなり、多様性がなくなっていく心配はあると思いますか?

池貝: 全然あると思いますけど、賛成にしろ反対にしろ、すでに反応が早いですよね。アメリカはトランプが就任したことに対するアーティスト界隈のリアクションが全然早かった。さらにその上いっちゃって、Kanye West(カニエ・ウェスト)なんか、むしろトランプをサポートするっていう(笑)。スピード感が全然違う。日本は何年かかってるんですか。

篠田: “ファック・ドナルド・トランプ”はあっても、“ファック・シンゾーアベ”は無いんですよ(笑)。

Kanye West's rant leaves Trump speechless

ーーイギリスの場合も、3月にブレグジットが実現しても、カルチャーやアートフォームで反対する人がいることが救いになっているのでしょうか?

篠田: 本当にそう思います。イギリスは1970年代末から1990年代までサッチャー政権が続いた暗い時代のなかから、パンクや“セカンド・サマー・オブ・ラブ”が生まれてきましたしね。

池貝: むしろ逆に羨ましいですよ。環境や社会問題に対する反応が、表現としてすぐに生まれる。それが日本にまで伝わって、僕ら日本人にまで理解されてるこの状況。嫉妬しますよ。日本の状況の方が酷いと思う。

篠田: やばいよね。終わってるよ(笑)。

アーティストは、自分と向き合うことで誰よりも早く社会に反応できるはず

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ーー現代を例にすると、ブレグジットのような大きな社会の波が起きたことで、先程おっしゃってたような破壊衝動のある音楽が、表現方法として戻ってきた可能性もあると言えそうですね。

池貝: それよりも、体制への怒りをOKとしている風土があるかどうかに注目すべきだと思いますよ。音楽はもっと自由というか、ミュージシャンやオーディエンスがやるべきことは個人の感情と向き合うことだと、本当に思う。

篠田: 文明批評家のMarshall McLuhan(マーシャル・マクルーハン)が、「芸術は早期警報システム」と示していたことが象徴的ですよね。アーティストは自分と向き合うことで、誰よりも早く社会に反応できるはずなのに、警報システムが麻痺しちゃってる。

池貝: なんか日本の批判になってきちゃいましたけど(笑)。

ーーでは将来的に、ブレグジットのような社会問題がイギリス以外の国でも起こるとしたら、例えば日本はどうなると思いますか?

池貝: 今の日本人、こういう仮定の話が一番苦手ですよね(笑)。電通あたりがまた「自分ゴト化」とか言い出して、またふわっとさせるんですよ(笑)。

篠田: でもブレグジットの場合、国民投票で決まり、賛成する人がかなりの数出てきたわけで。必ずしもトランプとか安倍、メイみたいに、共通の敵を作って国民が叩けない事情もありますよね。

池貝: 今までずっとサボってきた階級や人種の集積のような、イギリスの内部の社会構造を理解した方がいいよ、って気がしますね。

篠田: どんどん格差が広がっちゃいましたからね。

池貝: お金持ってるやつと、お金ないままのやつが一緒にスタートしたら、そりゃ差つくわってね。シンプルですよね。僕らの次のアルバムはそういう色が出てますって書いておいてください(笑)。

ーー普段から5人のなかで政治的な話はされますか?

篠田: しないかもね?

池貝: 基本的な物事への見方が、無意識に共有されてるから、今は改まって話したりすることは少ないかもね。

ーーそれぞれの考えが多種多様でも、バンドとして一致させることは必要ですか?

池貝: 根底はそろってないとな、って最近は思うようになりました。今はそういうモードになっています。曲もそういう感じになっている気がします。もともと、僕らは“yahyel”っていうプロジェクトのなかで、個人主義のなかで、それぞれの強みが出ればいいと思っていました。でも、言いたいことを表現するには、それぞれが人生のなかでいろいろ経験したことを消化したうえで一貫した部分を作らないと、バンドでいる意味がないなと感じるようになった。その強さが出てるのが、いいバンドだと思うので。

ーー今は曲を作っていて楽しいですか?

池貝: めっちゃ楽しいです。僕ら、最初は逆にゆるゆるだったので、やるにつれて楽しくなってるし、良くなっていってる気がする。

ーー2019年の活動についてのお話を伺えますか?

池貝: 3月に「SXSW」に出演して、アメリカでライブをやった後、5月に中国でツアーがあります。国内では5月にGREENROOM FESTIVAL'19に出演しますし、基本ライブが多くなりますね。6月にはヨーロッパにも行きます

ーーアルバムが出るのはその後?

篠田: そうですねー、夏頃に出したいですね。

ーーアジアは中国だけですか? また台湾でライブは?

篠田: 中国で長いツアーやりたいね、半年ぐらい。

池貝: なんなら僕は、日本に帰ってきたくない(笑)。ずっと海外行ってたいです(笑)。

ーー6月のヨーロッパでは、イギリスもまわるんですか?

池貝: そういうふうに今動いてもらってるんですけど。どうなるかな(笑)。

篠田: 行きたいね〜。

***

Image: Victor Nomoto - METACRAFT
Support: beatink

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