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「ドラマ」が社会現象になる世界、ならない日本。FUZE 3月特集は「海外ドラマ」

DIGITAL CULTURE
エディターYohei Kogami
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なぜ今、世界で「海外ドラマ」が支持されているのだろうか?

そもそも世界的に「ドラマ」が改めて意識されるようになったのは、NetflixやAmazon Prime、Huluの影響が大きい。寝る時間を惜しむ“ビンジウォッチング”カルチャーが広がったことで、ドラマというコンテンツに注目が集まりだした。しかし、それは表面的な変化であって、2010年代のドラマに対してエンタメ業界を超えて、社会やポップカルチャーまでをここまで進化させるほどの期待を抱いた人はそんなに多くなかったはずだ。

SNSで拡張された2010年代において、海外ドラマは、映画、音楽と並ぶポップカルチャーの中で最重要なエンタメコンテンツのひとつとなった。ドラマ特有の「尺」とクリエイティビティは、熱狂的なファンダムからメディアの批評や予想、“ミーム”によるお祭り騒ぎまで、あらゆる角度から人々を殺到させている。

いっぽう日本は、2010年代そしてSNS時代の「海外ドラマ」をスルーし続けてきた。世界ではドラマのポップカルチャー化が進む間、日本における「海外ドラマ」の認識は1990-2000年代に定着したイメージを未だに超えておらず、いつの間にか「海外ドラマ」を見るということは、かつて洋楽リスナーがそうだったように、海外文化に関心があるマイノリティの行為であり、特定のコミュニティで語り合う疎外感や孤独感に苛まれれることに等しくなってきた。

また日本では、Netflix/Amazon Prime/Huluの台頭がプラットフォームビジネスとして断片的には伝わってきてはいるが、その裏で起きているHBOやAMCの飛躍や、着実に勢力図を広げるディズニー、そしてそのうえを縦横無尽に行き来するデヴィッド・フィンチャーから新世代のキーマン的存在のデヴィッド・ベニオフ/D.B.ワイスまで、クリエイターの存在を俯瞰して語る人やメディアは極めて少ない。

いってみれば、2018年の日本で「海外ドラマ」の面白さや未来像をメディアで伝えようとしても、まずは「海外ドラマは日本に必要か?」と質問するほうが順番として正しいのかもしれない。

3月15日に公開される今回の特集では「海外ドラマを見るうえで考えること」を軸に、新しい視点を授けてくれるライターや評論家、クリエイターに話を聞いたり、考えを言語化してもらう機会をいただいた。そして、これまで「音楽」や「渋谷」「90年代」を特集してきたFUZEの企画で最も複雑な内容になったことは、メディア編集として面白いプロセスだった。

2018年に海外ドラマを考えるうえでは、こうした視点もある。それは、2010年代以降の海外ドラマは、多種多様に拡張した時代性の写し鏡であるということ。そして、作品を手掛ける監督と脚本家、プロデューサーの制作チームは、激変する世界、政治、社会、人間性と向き合い続けるジャーナリストと呼んでもあながち間違いではない。クリエイティビティを研ぎ澄まさせながら、過激なメッセージ性や社会批判、体制への反抗、マイノリティの共鳴といったノンフィクションな主張を内包するストーリーライン。それは現代社会において人が抱える葛藤や不安、不透明な未来に抗い、自らの足で前進するためのコンパスとしてとらえることもできる。

これまでドラマには「好感度」や「共感」が付き物だったが、その基準も変わり始めている。『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ブレイキング・バッド』、『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』が提示する複雑なテーマと深いメッセージ、ドス黒い人間関係に、かつての共感と「好感」の物差しを図ろうとしても、どう考えても不可能だ。だが、この時代の複雑さや分断、多層化といった社会のあり方を嫌というほど投げかけてくる。たとえば「多様性とは?」を議論するなら『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』や『ハンドメイズ・テイル』を見るだけで、新たな視点を得られるかもしれない。

社会性や時代性と向き合い、新たな価値観を問う作品を作ることがドラマのクリエイターの新基準となった今、「ドラマ」という鏡から学ぶことは多い。つまり視聴者やユーザーにも、コンテンツに対して新しい基準が必要だ。メディアを運営する立場としても、メッセージ性、視聴率、再生回数、時間、メディアの在り方、あらゆる方向から問題が見えてくる。それらを受け入れるのは、とてつもなくチャレンジングなことだろう。だが、すでにカルチャーが紡ぐコンテクストに関心を持つ人の間では、そうした視座が新たなポップカルチャーのメインストリームとして定着している。

特集としてドラマ企画を考えて気づくのは、もしかしたらドラマに「憧れ」や「希望」を期待する時代は終わったのかもしれないということだ。期待するだけではハッピーエンディングはやってこない。何も手に入らないことを時代は証明している。だからこそ現代のドラマは「当たり前の現実」と向き合うことを選んだ人が集まる場所になったと云えるだろう。

そしてこの特集で考えさせられたのは、ニュースやメディアがフェイクなら、ドラマは一体何だろうか?ということだった。そんなことを考えて時間を過ごしても、何も答えは出てこない。だからこの特集を読み終わったら、すぐにでもドラマを再生していただきたい。メディアを読むだけでは惜しい。なぜならドラマこそが最大のメディアだからだ。

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Image: 岩﨑祐貴

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